―― LTE上の音声サービス「VoLTE」の動向を教えてください。
トルストイ氏 韓国などでスタートしており、Ericssonも開発ベンダーに選ばれている。例えば韓国では、あるオペレーターにVoLTEの土台となるIMS(IP Multimedia Subsystem)を提供した。IMSはIPベースの次世代通信システムといわれながらも離陸が遅かったが、ここにきてVoLTEがIMSのキラーアプリとなって火がついた。
MWCではChina Mobileと共同で、TD-LTEとFDD-LTE間で途切れのない音声通話を可能にする技術を展示している。中国など、TD-LTEが進んでいる市場の音声通話にメリットをもたらす技術で、EricssonがTD-LTEに注力していることを裏付けるものだ。もちろん、2Gや3GへのFallBack(CSFB)も引き続き重要だ。
われわれはMWCの会期中、KDDIにIMSプラットフォームを提供することを発表した。これはVoLTEの土台となるもので、RCS(Rich Communications Suite)など、新しいサービスにとっても重要になってくる。
音声ビジネスはオペレーターにとって重要な分野であり、これを最新技術であるLTEに移し、さらなる価値を引き出すことは戦略的に重要なことといえるだろう。
―― トラフィック対策の1つとして、携帯ネットワークのキャパシティを改善する技術「HetNet」を提案しています。HetNetは、どのぐらい現実に近づいているのですか。
トルストイ氏 2013年はHetNetの離陸の年になるとみている。商用環境でのHetNetの実装が増えるだろう。
HetNetでの戦略は3段階で、まず最初の段階が既存のマクロ基地局のカバレッジの改善、第2段階がマクロ基地局の増設による高密度化、そして3段階目でスモールセル(小型基地局)を追加する――というものだ。このような段階を踏むことを推奨する理由は、キャパシティを増やすのに最もコスト効率が良い方法が、マクロ基地局のカバレッジの最大化だからだ。
スタジアム、イベント会場、地下鉄の駅などのような混雑する場所では、大きなネットワーク容量が要求され、こうした場所では小型基地局が重要な役割を果たす。Ericssonのソリューションでは、マクロ基地局のレイヤーと小型基地局のレイヤーとを協調してセル間でのハンドオーバーを行うため、レイヤーをまたいでもネットワークに途切れがない環境を実現できる。
HetNetはW-CDMAやLTEなどの3GPP以外の技術としてWi-Fiも含むソリューションとなるが、EricssonはBelAir Networksの買収で小型基地局製品すべてにキャリアクラスのWi-Fiを統合した。現在、開発に注力してるのが、3GPPとWi-Fiの間でシームレスな体験を提供するための技術だ。その1つとして、Wi-FiとLTEネットワークのスループットを測定し、ネットワーク側が、負荷に応じて加入者に最適な回線を選んで適宜切り替える技術がある。
また、ユーザーが2GでWebブラウジング中にYouTubeにアクセスすると、ネットワークが自動的にWi-Fiに流す――といったソリューションはオペレーターからとても喜ばれている。マクロ基地局、小型基地局、それにWi-Fiをすべて連携させ、あたかも1つのネットワークとして動作するような環境を構築できれば、その上のソリューションを利用してオペレーターは顧客体験を管理できる。
―― 競合に対する優位性について教えてください。無線アクセスネットワーク(RAN)市場で、Huawei TechnologiesがNokia Siemens Networksを抑えて2位に浮上するなど、新たなベンダーが台頭しています。
トルストイ氏 業界が成長している証拠なので、競合は良いことだ。Ericssonは、LTEの技術面などでさまざまな優位性があると自負している。
2G、3Gでわれわれの機器のインストール数は最大であり、LTEの典型的な実装として知られる、複数の無線通信方式を利用するマルチ標準ネットワークの分野でも構築実績がある。またマネージドサービスを世界中で展開しており、オペレーターと良好な関係を築いている。
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