水面下で進むスマホOSの世代交代――「第3のOS」の陰で、見過ごせないGoogleの動き(1/3 ページ)

» 2013年04月25日 11時00分 公開
[小林雅一(KDDI総研),ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 今やPCを抜いて、ICT産業のけん引役となったスマートフォンやタブレット。そのベースとなるモバイルOSに異変の兆しが現れている。

 ことの起こりは、毎年2月にスペイン・バルセロナで開催される、世界最大のモバイル技術見本市「Mobile World Congress」(以下、MWC)。2月に開催された2013年のMWCで、新鋭のスマホやタブレット、車載システムなどと並んで大きな注目を浴びたのが「Firefox OS」と「Tizen」(タイゼン)だった。

 前者は米非営利団体のMozillaが、後者は韓Samsungや米Intelが中心になって開発中の基本ソフトだ。いずれもiOSやAndroidに次ぐ「第3のモバイルOS」として期待を集めている。

 MWC 2013の開幕前日に開かれたFirefox OSのお披露目記者会見では、Telefonica(スペイン)、Deutsche Telekom、Telecom Italia、KDDIを始め、世界の主要通信キャリア18社が支持を表明。もう一方の「Tizen」は、Orange(フランス)、KT(韓国)、SK Telecom(韓国)、NTTドコモなどが支持している。FirefoxとTizenの両陣営とも、今年後半から来年にかけて、これらモバイルOSを搭載したスマートフォンを世界各国で順次、発売する意向を示している。

Photo Mobile World Congressでは、Tizen陣営(画面=左)とFirefox陣営(画面=右)が記者会見を開き、今後のビジョンを語った

日本メーカーは「第3のOS」に懐疑的

 通信キャリアを中心に「第3のモバイルOS」への期待が高まる一方で、日本の端末メーカーはこれに対して冷ややかな態度を見せている。一応、ソニーはFirefox OS、NECと富士通、パナソニックはTizenへの支持を打ち出しているが、これらモバイルOSのお披露目記者会見に登壇した日本メーカーは皆無だった(韓国や中国、フランスの主要端末メーカーは出席した)。

 これに象徴されるように、日本の端末メーカーは「第3のモバイルOS」に懐疑的な眼差しを向けている。彼らは

「第3のモバイルOSは、Androidと何が違うのかさっぱり分からない。お客様にとって新たな価値を見いだせるかどうかは疑問だ。これらを通信キャリアが支持するのは、所詮アップル(iOS)とGoogle(Android)の天下に嫌気がさしたからに過ぎない」(携帯事情に詳しいジャーナリスト石川温氏のコラムより)

と見ている。

 確かに、そう言われても仕方のない面が通信キャリアにはある。今や、国内外ともにスマホOS市場の9割以上はiOSとAndroidが握り、両者を合算したシェアは年々増加している(図1、2)。圧倒的な市場占有力を背景に、アップルとGoogleの2強はモバイル産業の主導権を通信キャリアから奪取した。例えばアップルはiPhoneの高い販売ノルマを通信キャリアに押し付け、Googleは同社の言うことを素直に聞くメーカーから順に、Androidの仕様を公開しているといわれる。つまりモバイル業界のボスは、今や通信キャリアではなく、彼ら2強なのだ。

Photo 国内(図1=左)と世界(図2=右)のスマートフォンOSシェアの推移

 これに我慢できない各国の通信キャリアが、もっと自由にビジネスを展開するための新たなプラットフォームを求めてFirefox OSやTizenに触手を伸ばした――。こう端末メーカーが考えるのは自然だ。また「これら第3のモバイルOSはAndroidと大差がない」といいたくなる気持ちも分かる。筆者も実際、MWC 2013の会場でFirefox OS搭載端末(中ZTE製)を手に取ってみたが、外観も機能も使い勝手も何ら強い印象を受けなかった。一見、実に平凡なスマートフォンである。これと同じことは、Youtube上のビデオ映像で見たTizenについても感じた。

見逃してはいけないGoogleの動き

 従って、単に「第3のモバイルOS」だけを見るなら、筆者はむしろ日本の端末メーカーに同意するが、実は彼らは大事な点を1つ見落としている。それはGoogleの動きだ。

 MWC 2013が閉幕してから間もない3月中旬、Googleは奇妙な人事異動を発表した。それまでAndroid事業の責任者だったアンディ・ルービン氏を同事業の責任者から外し、これに代わってChrome OSの責任者であるスンダル・ピチャイ氏にAndroid事業の責任者を兼務させたのだ。つまりピチャイ氏は今後、AndroidとChrome OSの統括責任者となる。

Photo

 これは一見、腑に落ちない処遇だ。なぜならルービン氏がAndroidを開発し、これを世界的なプラットフォームへと育て上げた立役者であったのに対し、ピチャイ氏が手掛けてきたChrome OSの世界的シェアは微々たるものであるからだ。こうした過去の経緯を考えれば、今回の異動は誰が見ても予想外のものだった。

 なぜ、Googleはこんな決定を下したのか? それは今後、AndroidとChrome OSを統合する(実際にはAndroidというブランド名だけを残し、事実上はChrome OSへと一本化する)ための準備と筆者は見ている(現代ビジネスの筆者の記事参照)。また米国でも、これと同じ見方をする専門家は少なくない。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月11日 更新
  1. ダイソーで1100円のノイキャンイヤフォン「TWS009」を試す 騒音カットの効果は実感も電池持ちに課題か (2026年10月09日)
  2. 資産3000万円以上が対象 MUFG「エムット」最上位サービスと“年会費無料”アメックス・プラチナの魅力とは (2026年10月08日)
  3. スマホの「実質価格」高騰の恐れ、iPhone 18 Proは2倍高く? 総務省の残価設定ルール厳格化は“誰のため”か (2026年10月10日)
  4. 10月1日から楽天モバイルの「au 4G LTEエリアローミング」が縮小も意外と残っている件 (2026年10月10日)
  5. ダイソーで1100円の「GaN USB充電器」は折り畳みプラグで外出用に持ち歩きやすい 45W出力対応でPCでも使える (2026年10月10日)
  6. 「iPhone 18 Pro Max」を試して分かった進化と課題 想像以上に“使えた”可変絞り搭載カメラ (2026年10月09日)
  7. ドコモが「Google Pixel 10a(256GB)」を11万6930円に値上げ 2年7万円台に (2026年10月09日)
  8. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  9. 楽天グループ、1億件超の会員情報流出説を否定 「情報漏えいが発生したという事実は確認されておりません」 (2026年10月09日)
  10. 「iPhone Duo」は閉じても開いても迷わず使える Appleが提示するUIの設計思想 (2026年10月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー