積極的な情報公開で信頼を回復したい――バイドゥが事業戦略を説明、「Simeji」新製品も明らかに(1/2 ページ)

» 2015年02月03日 21時26分 公開
[平賀洋一ITmedia]

 バイドゥは1月30日、事業説明会を開催して日本と中国における同社インターネットビジネスの取り組みを紹介した。

 同社は、中国語検索サイトとしてシェア世界一の「百度」(バイドゥ)を運営する中Baiduの日本法人。国内ではスマートフォン向け日本語入力アプリ「Simeji」とPC向けナビゲーションサイト「Hao123」を展開すると同時に、中国に進出する国内企業の広告やマーケティング、ライセンス事業などもサポートしている。

photo バイドゥ代表取締役駐日首席代表のチャールズ・チャン氏

 同社 代表取締役駐日首席代表のチャールズ・チャン氏は、国内向け事業に今後について「モバイル事業の強化とマルチスクリーン対応を強化したい。テーマは『人とサービスを直接つなぐサービス』の提供だ。もう1つの柱である海外進出ビジネスについては、版権や知財関連の分野で、日本と中国を結びつける事業を進めたい」と語った。

photo グローバルで業界に大きな影響力を持つBaidu
photo 中国語の検索サイトとしては世界1位のシェア

 中国国内のインターネット市場(検索サイト、SNS)で73%のシェアを持つBaiduは米NASDAQに上場しており、その時価総額は約8兆円。2014年第3四半期の総売上は2430億円、営業総利益は705.6億円に上り、年50%を超える成長率だという。また米大手ベンチャーキャピタルのKleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)による業界指標(Internet public market leaders)では、その影響力がAppleやGoogle、Amazon、eBayに続く8位に位置付けられている。

photo 日本法人の事業概要

 チャールズ氏はBaiduの強みについて、技術力のこだわりを挙げた。Baiduが処理する検索クエリーは中国国内で1日平均25億回で、これは米国内のGoogle検索が処理するクエリーの3倍以上だという。これを処理できるシステム基盤の規模に加え、米国シリコンバレーにR&Dセンターを設置するなど、研究・開発にも余念が無い。R&Dセンターではビッグデータと人工知能(AI)の研究を進めており、研究所の責任者に、GoogleでAIを研究した経験もあるアンドリュー・エン氏を招聘(しょうへい)した。

 「中国の経済成長は2000年以降に加速したが、これは米国を学び、インターネット産業を学んだから。このインターネット産業とはIT産業とは別物で、(中国では)はっきり区別されている。政府にも、IT産業省とインターネット産業省の2つがあるくらいだ。IT産業はいうなればパッケージを有料で販売するもの。きちんとつくってお金を取るのがITだが、時代にそぐわなくなってきた。インターネット産業はフリーミアム。無料で提供し、広告で利益を上げる。競争には、スピード感とイノベーショナルな技術力が求められる」(チャールズ氏)

 ネット事業の主戦場といえるのがモバイル分野で、国内向けの主力製品となるのがSimejiだ。累計ダウンロード数はAndroid向けが1089万件、2014年9月に配信を開始したiOS向けは275万件と、合わせて1300万件を突破。約5000万台といわれる日本のスマートフォン市場で、5人に1人が利用している計算になる。iOS版はAppleが選定する2014年のベストアプリにも選出された。

photo プロダクトマーケティング マネージャーの高部幹人氏

 プロダクトマーケティング マネージャーの高部幹人氏はSimejiの今後について、タブレットなどでの本格的な文字入力に対応する有料版の「Simeji Pro」を2月中にリリースする予定であることと、Windows版の本格投入を明らかにした。有料版はユーザーインタフェースに加え変換アルゴリズムなども改善し、より快適な文字入力をサポートするもので、まずはiOS版から提供される。

photo 本格的な文章作成をサポートするという、有料版の「Simeji Pro」
photo Windows向けもベータ版として提供を開始した

 Windows版はすでにベータ版としてテスト提供されており、対応OSはwindows 7/8。スマホ向けと同様に豊富な顔文字を収録しているほか、バイドゥのクラウドパワーを利用した超変換入力にも対応する。

 高部氏は、有料版やWindows版をラインアップすることについて、「Simejiを支持して頂いている若年層向けから、ターゲットを広げたい。プラットフォームを拡大してマルチスクリーンに展開し、将来的にはアカウントシステムの導入によるシームレスな体験を目指す。有償版の提供や課金モデルなどの事業化についても、トライアルしていきたい」と説明した。

 バイドゥが日本市場を重視する理由とは何か。チャールズ氏は、「日本市場は厳しい。日本で成功すれば、他の国でも成功する」と話す。バイドゥは中国以外に、日本、ブラジルやエジプト、タイ、インドネシアに進出しているが、先進国は日本だけ。米国とシンガポールは開発・研究部門だけでサービスは提供していない。「将来的に世界の50%の国と地域をカバーしたい」と話すチャールズ氏は、「そのためには、通信環境が進み、技術や品質に対して評価が厳しい日本でチャレンジする必要がある」と続けた。

 技術にこだわるという同社の企業文化から見ても、技術を重視する日本市場を魅力的だという。米Appleが横浜にR&Dセンターを設置すると発表したことも受け、「自動車や家電などのスマートデバイス化が進む」とチャールズ氏は述べ、日本発の技術がもっと重要になり、それに応じて日本市場も成長していくだろうと予測した。

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