分解して分かった「Xperia Z3」の“プレミアム端末学”バラして見ずにはいられない(2/3 ページ)

» 2015年03月11日 22時07分 公開

カメラもカスタマイズ品

 カメラはスマートフォンの中で最も厚みが大きい部品の一つである。スタイルがセールスポイントの一つであるプレミアムスマートフォンでは、筐体の寸法に合うようカメラモジュールをその都度設計する場合が多い。Xperia Z3の20.7メガピクセルCMOSイメージセンサーは1つ約3100円。さらに樹脂レンズ数枚で構成されるレンズユニットのコストが約600〜700円と推定され、カメラモジュールだけで4000円近い高額部品となる。

photo 20.7メガピクセルのCMOSイメージセンサー

ガラスで覆われたボディ

 Xperia Z3のディスプレイを覆うカバーガラスは衝撃で割れにくい強化ガラスが使用されている。メーカーは不明であるが、米Corning製の「Gorilla Glass」はモバイル用途でシェアが高いことで有名だ。またライバルとして日本の旭硝子が供給している「Dragontrail」も広く知られる。強化ガラスの価格は1枚あたり3ドル=360円と予想している。

 本機ではディスプレイ面だけでなく、背面も樹脂パネルにガラスコーティングと思われる仕上げを施し、鏡のような高級感が漂う外観となっている。しかし落下時のパネル破損はスマホ共通の悩みだ。これまでは四角い筐体に液晶パネルなどをはめ込むものが多かったが、本機の筐体は、角の部分にバンパー状の構造物があり、落下による衝撃をある程度吸収可能な設計となっている。

 背面パネルには近距離無線通信(RFID)である「FeliCa」と「NFC」が共用するアンテナが組み込まれている。NFCはグローバルで普及が進む近距離無線規格であるが、日本の交通機関や電子マネーで広く使用されているFeliCaには対応していない。本機を含む国内メーカー製の端末は、NFCに加えFeliCaチップを別途搭載し、アンテナを共用している。

photo 「FeliCa」と「NFC」はチップが別々だが、アンテナは共用だ

 なおNFCは電子決済用として期待されていたが、最近はスマートウォッチなどとのペアリング設定を行うためなど、別の用途での使用も広まっている。

そのほかの部品も高額

 電子部品の多くは固い樹脂でできたリジッド基板に搭載されるが、部品のサイズや場所の関係でリジッド基板に収まらない部品も多い。高密度フレキシブルプリント基板(FPC)はそのような電子部品を基板に接続する延長コードのような役割を持つ。日本メクトロン、住友電工、フジクラなど、日本メーカー製のFPCも広く知られる。

 FPCは屈曲性に優れており、空間を有効に使えることから、面積あたりの価格がリジッド基板の1.5倍以上高い。Xperia Z3では、上部の基板と下部構造物を接続するため、大面積の大きなFPCが2枚使用されている。それはマイクやサイドキーなどが搭載され、さらにカメラやヘッドフォン端子などもFPCでメインのリジッド基板に接続されている。

photo メイン基板とサイドキーなどをつなぐFPC。ノイズから守るシールドテープでおおわれている

 FPCは端末のデザインに合わせて設計される完全なオーダーメイドの部品で、価格も高止まりする傾向にある。配線材料の銅箔には、廉価な電解銅箔が多く使用されているが、屈曲性に優れた圧延銅箔を重要部品に採用するケースも増えている。FPC内部は電気信号が走るため、ノイズの影響を受けない様、シールドテープで表面を覆っている。本機での採用メーカーは不明であるが、日本のタツタ電線はシールドフィルムで大きなシェアを持っている。

新手法の防水/防じん機構

 防水/防じん性能は国際電気標準会議(IEC)で標準化されており、「IP」(International Protectionの略)で始まる4〜6文字で記載される。Xperia Z3は「IPX5」「IPX8」「IP6X」に対応した。IPX5はあらゆる方向からの飛沫に耐え、IPX8は水中でも浸水しないことを意味している。飛沫を受ける時間や水深は、さらに細かな規定が設けられている。またIP6Xは防じん性を意味しており、直径75ミクロンの粒子が本体に入り込まないことを示している。

 日本メーカーのフィーチャーフォン(ガラケー)及びスマートフォンはこれらのグレードに対応する製品が多く、特に防水対応は標準装備になりつつある。海外に目を向けてみると、防じんはおろか防水対応の製品もごくわずかで、大半は工事現場など過酷な環境で使用される事を前提とした「ラグドフォン(ごっつい電話)」である。ラグドフォンは防水・防塵に加え、耐衝撃性も備えており、端末の機能と比較し非常に高額だ。

 さてXperia Z3はカバーガラスや背面パネルを接着剤で密閉し、防水・防じん性を確保した。従来は筐体外縁を周回する樹脂製パッキンが見られたが、今後は接着剤が主流になりそうだ。SIMカードスロットやMicro SDスロット、Micro USB端子は樹脂パッキンを備えたキャップで密閉されている。しかしヘッドフォン端子やマイクの穴にはドアがなく、他の方法で開口部の防水・防塵を実現していると思われる。1000個を超える電子部品の塊が水没しても壊れないというのは驚異的だ。

高コストでも「PoP」を採用

 PCと同様、スマホのプロセッサも動作するためにメインメモリが必要になる。Xperia Z3はメモリとして、3GバイトのDDR3 SDRAMを搭載した。DDR3 SDRAMは現在最も進化している低消費電力タイプのDRAMだ。また記事執筆時点では、世界で最もメモリ容量の多いスマホの1台である。そのコストは約24ドル=約2880円と予想される。

 メモリはプロセッサと連動する性質上、お互い搭載位置が距離が近いほど良いと言われており、本機ではプロセッサの上にメモリを載せた“2階建て構造”を採用した。これは上から見ると1つの部品のように見えるが実際はICが2つある「Package on Package」(PoPと略される)という実装方法だ。しかしPoPには泣き所もあり、それはコストに直接響く問題でもある。

 その1つは特殊な構造のため、部品のコストとは別にPoPの実装コストが発生すること。そしてもう1つは熱である。電子部品は電力を消費すると熱を発する。プロセッサとメモリはとりわけ発熱量が大きく、フル稼働させると、PoPされた部分の温度は摂氏70度程になる。局所的に発生する熱を素早く周囲に拡散させて冷やさないと、熱に弱い電子部品はすぐに故障してしまう。そのため、この部分の熱を逃がすために銅製の熱伝導パイプや高価な熱伝導素材が多く使用されている。

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