「Xperia Z3」でパープルを採用しなかった理由は?――デザインとカラーの意図を聞く開発陣に聞く「Xperia Z3」(2)

» 2015年01月08日 12時45分 公開
[田中聡ITmedia]

 ソニーモバイルコミュニケーションズが投入したスマートフォン「Xperia Z3」開発の舞台裏をインタビューする短期連載の第2回では、デザイン担当の鈴木氏に、デザインコンセプトやカラーについて話を聞いた。

photo デザイン担当の鈴木氏

Xperia Z3は“究極の一枚板”に近づいた

 Xperia Z以降のXperiaといえば、どの方向からでも持ちやすい「オムニバランスデザイン」を継続して採用しているが、Xperia Z3でもこうしたデザインの基本コンセプトは継承している。角に球体、背面にガラスを使い、4側面+ディスプレイ面+背面の計6面から構成されている作りも従来機から大きな変更はない。

 デザイン担当の鈴木氏は「Xperia Z3は究極の一枚板を目指すという本来のコンセプトにかなり近づきました」と自信を見せる。Xperia Z3では厚さが約7.3ミリと薄くなり、金属フレームとガラスの間に樹脂を入れていない。またXperia Z2やZ1などで見られた側面を斜めにカットする処理もしていない。純粋なガラスとメタルの生成物に昇華されたといっていい。

photo ガラスパネルと金属フレームの隙間がなくなり、また本体を薄くすることで、一枚板というコンセプトにより近づいた

 「造形はある一定の流れがあるものですが、スマートフォンはいろいろな使われ方をするので、あえて“方向性をなくせないか”とチャレンジしたのが、オムニバランスデザインです。軸の交わるコーナーに着目して、球体をぐるーっと1周させて、6面カットしています。Z3では側面のラウンドは残して、球体からディスプレイ面と背面だけをカットしたイメージなので、(方向性をなくすという)もともとの考えに近いのです」と鈴木氏は説明する。

 Xperia Z2ではメタルフレームと樹脂を一体成型させた「インサートモールディング」を採用していたが、Xperia Z3ではよりシンプルなデザインを目指した。また細かいところでは、電源キーもシンプルな形状にすべく、Xperia Z2では◎型だったものを、Xperia Z3では○型にしている。

photo 電源キーもXperia Z2のような二重丸ではなく、シンプルな丸型にした

 「Xperiaのデザインは、ある程度認知されてきています。ガラス感やメタル感を強調しながら、よりシンプルな方向に行こうと決めました。今までも側面をカットしているところは特徴的な部分ではありましたけど、あえて自己主張をしなくてもいいんじゃないかと。もともと、ガラスとメタルでどこまでできるかをチャレンジしたかったので。当初から目指していたところは、Z2から確実に近づいていますね」(鈴木氏)

前面もホワイトに、新機軸の「カッパー」「シルバーグリーン」も採用

 続いてカラーについても見ていこう。Xperia Z3のカラーはホワイト、ブラック、カッパー、シルバーグリーンの4色。今回はホワイトをメインカラーとして打ち出しており、ディスプレイの周囲もホワイトで背面とそろえている。ディスプレイ面もホワイトにした過去機種は、初代Xperia(Android端末)のXperia X10(日本ではXperia SO-01B)までさかのぼることになる。Xperia arc以降のXperiaは、ブラックアウトした画面1枚を演出すべく、ディスプレイ面もブラックで統一してきた。

photo Xperia Z3のホワイト

 鈴木氏はディスプレイ面もホワイトにした意図を「シンプルなデザインになって全体が軽くなったので、軽快感を出したかった」と説明する。また、ディスプレイを鮮明に表示させながら、その周りの白をきれいに表現することは難易度が高かったという。「(ガラスと液晶の間に)ギャップ(隙間)があったXperia X10よりも、ギャップのない端末で目指した白に到達するのは難しかったんです。以前から仕込みはしていて、この段階でようやく出せるようになりました」(鈴木氏)

 そんな苦労の末に完成したホワイトで目指したのは「ニュートラルな白」だという。「これはけっこう難しくて、白はちょっと(色味が)変わると印象も変わってしまいます。青白かったり黄色っぽくなったり……。(開発拠点のある)スウェーデンや欧米のスタッフが見たときと、アジア人が見たときの印象を合わせて、混じりけのない白を目指しました」と鈴木氏。今回のホワイトは、同時期に発売したXperia Z3 CompactとXperia Z3 Tablet Compactでも同色で統一している。

 一方、今回気になったのが、フラッグシップモデルのXperia ZからZ2まで一貫して採用してきた「パープル」を、Xperia Z3では見送ったことだ。Xperia Zシリーズといえばパープルというイメージがあっただけに、大きな方向転換だといえる。鈴木氏はその意図を以下のように話す。

 「Xperia Z3はガラスとメタルの一枚板に近づきましたが、そのメタルをきれいに見せることを考えたときに、パープルは金属の色ではないんです。トレンドやいろいろなものを加味したときに、カッパーが1つの答だと行き着きました。シルバーグリーンも、金属のちょっと緑っぽい光り方から着想を得て、メタルをより魅力的に見せられるシグニチャーカラーとして採用しました。

 パープルはグローバルではプレミアムな色、ロイヤルカラーとして認知されていて、日本では高貴な色というイメージがあります。Xperia Zから取り入れたパープルは、メタルというよりはガラスのイメージが大きかったんです(Xperia Zではメタルフレームは採用していない)。

 もう一度、プロダクトの本質的な部分に立ち戻ることを考えたときに、素材を一番魅力的に見せるには、カッパーや素材本来の色にアプローチする方法があるのではないかという議論になりました。パープルは特徴的な色で、(Z〜Z2の)各モデルで厳密な色味は違っていましたが、印象はそれほど変わらなかったと思うんですね。今回はカッパーを筆頭にした暖色系と、シルバーグリーンを筆頭にした緑系で、以前よりも幅を持たせています。そこから(派生して)、Xperia Z3 Compactのオレンジ系やグリーン系の色を採用しています」

photophoto Xperia Z3(写真=左)とXperia Z3 Compact(写真=右)。ブラックとホワイトはそろえつつ、ほかのカラーでバリエーションを出している

 ブラックとシルバーはベーシックカラーとして多くのモデルで採用しているが、今回は特徴的なカラーを「ガラスと金属の美しさを引き立てる色」とし、これまでのXperiaでは見られなかったカッパーとシルバーグリーンを加えたというわけだ。

 「カッパーは女性も取れるところは意識しましたが、今年これが流行しているからという決め方はしていません。シルバーグリーンは見慣れない色だと思うので、何度も検討しましたが、意外と女性の方からも良い反応をいただきました。アイシャドウに使う色と言われたこともあります。シルバーも検討はしましたが、4色並んだときに、偏ってしまうところがあります。加えて、常に新しいチャレンジをしていきたいので。『シルバーグリーンはあまり見たことがなかった』という言葉をいただけると『しめしめ』という感じです(笑)」(鈴木氏)

Xperia arcのころからデザインの考え方が変わった

 2013年以降、ソニーモバイルはXperiaでは一貫してオムニバランスデザインを採用してきた。Xperia Z3はその究極形ともいえる「ガラスの一枚板」に近づき、スマートフォンのデザインとしても成熟してきた感があるが、今後、ほかのデザインコンセプトを採用する可能性はあるのだろうか。鈴木氏は「直近はそのフェーズではないと思っています」と答える。

 「Xperia arcのころからデザインの考え方が変わってきています。あのころは“電話を作ろう”という意識がどこかにあった気がしますが、今はこれを『電話です』と言う人はあまりいない気がします。また、デザインの入口も変わってきていると感じています。Xperia X10やarcのころは、いかに自己主張するか、個性的ものにするかを考え、ほかとは違うデザインを打ち出していく部分がありました。

photophoto 「Xperia X10」ベースの「Xperia SO-01B」(写真=左)と「Xperia arc SO-01C」(写真=右)。Xperia X10はiPhone対抗のスマホとして鳴り物入りで登場し、arcは当時は珍しいカーブを描いたデザインが大きな話題を集めた

 その中で、当時(arcのころに)ヒューマンカーバチャーという、手になじませつつ、全体的にカーブの強いデザインを採用していましたが、「Xperia NX」では少しシンプルな方向にして、その次は“一枚の板”に行き着きました。スマートフォンの画面で何をするかを考えたときに、それを包むデザインのプロダクトは極力シンプルで、白いキャンバス的な存在であるべきだろうと考えたので、Zでシンプルな一枚板を目指して、それを進化させてきて今に至ります。

 もちろんスマートフォンの使い方が変われば、デザインも変わっていくかもしれません。arcのころは、みんな『5インチなんてそんな巨大なものを……』という感覚でしたし、ウェアラブル系がどうなっていくかの考え方も変わってくると思います。例えばウェアラブルとスマートフォンの主従関係が変わる時代が、もしかしたら来るかもしれないですし、そうなると、デザインも自然に変わってくるのではないでしょうか」(鈴木氏)

 次回はカメラ機能についてお話をうかがいます。

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