ソシャゲに偏見を持つ私が1日4時間プレイするほど熱中した「Fate/Grand Order」について(2/3 ページ)

» 2017年03月10日 12時30分 公開

好きなメーカーが嫌いなジャンルに来てしまった葛藤

 発表されたタイトルは『Fate/Grand Order』(以下、FGO)。スマートフォン向けでガチャ課金制度もあるということで、発表を聞く限りでは紛う事なき「ソーシャルゲーム」だった。

 TYPE-MOONはもともと同人ゲームを作っていたサークルで、ビジュアルノベルゲーム『月姫』や月姫作品のキャラクターを題材にした対戦型格闘ゲーム『MELTY BLOOD』といった人気作を世に送り出した後に会社化。商業作品として初めて作ったのが『Fate』シリーズ初作品である『Fate/stay night』だ。

 聖杯戦争という、7人の魔術師と彼らが使役する英霊(サーヴァント)の殺し合いに巻き込まれた主人公・衛宮士郎は、セイバー(アーサー王、アルトリア・ペンドラゴン)とともに殺し合いを止めるべく聖杯戦争に身を投じていく。

 TYPE-MOONのシナリオライター、奈須きのこ氏の描く魔術世界は月姫、Fate/stay night、小説の『空の境界』で一貫しており、その世界観に魅了されるファンも多い。

 また、聖杯戦争のサーヴァントシステムで呼び出される英霊は原則として世界史上で実在した人物や神話・物語で描かれた人々であるため、一から設定を決めなければならない完全に架空のキャラクターとは異なり、英霊の数だけ物語の下地がある。

 これらの設定を生かした、虚淵玄氏が描くFateのスピンオフ小説『Fate/Zero』はstay nightの前日譚だ。美少女キャラが多かったstay nightとは打って変わってセイバー以外全員男性サーヴァントによるハードボイルド殺し合いという様相だったが、空の境界の映画化も手掛けたufotableによって「劇場版か!?」と言われるほどのクオリティーをもって地上波アニメ化され、そのBlu-ray Disc BOXの初週売上は『涼宮ハルヒの憂鬱』のそれを上回り、アニメジャンルでは当時の歴代1位となるほどの人気となった。

 このように、Fateシリーズはゲームであれ小説であれ、作品内で描かれる「物語」が何よりも魅力的なコンテンツだった。

 そんな『Fate』がソーシャルゲームになる。ぶっちゃけてしまうと「ああ、お金がないのかな」というような感想を当時持ったことを覚えている。今まで買い切り型のゲームしか作ってこなかったのにオンラインゲームの運営ができる体制があるのかという疑問もあったし、コンプガチャが規制された後で(主観的には)ソシャゲの波が落ち着いたという印象もあったので「出すのが遅いのでは」とも思った。

fgo Fate/Grand Order(公式サイトより)

 そして何より、買い切り型のTYPE-MOON作品のファンであった自分にとって、ソシャゲでFateのIP(知的財産権)を切り売りしてお金を稼ぐビジネスモデルなんて見たくなかったという思いから、2015年7月のローンチ時も見て見ぬふりをしていた。

 運営体制に関してはやや予想が当たったようだった。ローンチすぐに重大な不具合が見つかり、8月4日から6日にかけてはほとんどの時間がメンテナンス状態で、わずかにログインできた時間は「奇跡の2分」「伝説の18分」などと皮肉って呼ばれていた。また、ゲーム内のシナリオが流出しGitHub上に公開されてしまうという事件もあり、それらの様子を見て「ああ、やっぱりな」と思いを強くし、それ以降しばらくFGOの話題からは目をそらすようになった。

 それから時がたつこと1年半、私が再びFGOの話題に触れたのは2016年12月の大みそかの夜だった。

 TOKYO MXなどで年末特番としてFGOを2時間番組で取り上げ、その中でFGOの序盤をアニメ化したものを放送するという。あのいかにもスタートダッシュでダメそうだったゲームが、1年半という期間運営を続け、大みそか特番という枠でアニメ化するまで支持を得ることができたのか――。

 そんな風に興味を持ち、年末特番を見た。恥ずかしながら、そこで初めてFGOというゲームの内容を知ったのだった。

 人類史の守護をつかさどる人理継続保障機関・カルデアによって未来を保障されていた人類だったが、2015年に突如、観測できていた未来領域が消失、計算によれば2017年までに人類が絶滅してしまうことが証明されてしまう。そんな中、カルデアの観測機器は過去のある地点で観測不能な領域があることを見つける。Fate/stay nightの舞台となった冬木市を初めとして、中世フランス、18世紀北米、紀元前のバビロニア王国など7つの観測不能な特異点へ主人公が時間旅行し、2016年までに原因を修復して人類の未来を取り戻す、というのがFGO第1部の物語だ。

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