販売数1万台を突破 カード型ケータイ「NichePhone-S」はなぜ売れたのか?SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/3 ページ)

» 2017年12月22日 11時25分 公開
[石野純也ITmedia]

次世代機も開発したい

―― 仕様面では、アドレス帳に入力ができません。SIMカードからコピーはできますが、1回50件までです。これは何とかならなかったのでしょうか。

曲氏 この端末で入力したら、相当大変だと思います。アドレス帳は500件ぐらいまで入るようになっていますが、そんなにたくさんの電話番号に電話はしないですよね。その実用性よりも、サイズが求められていたのだと思っています。

NichePhone-S 文字通り、カードとほぼ同じサイズを実現

―― クラウドファンディングから始めた携帯電話というのも、日本ではまだ珍しいと思います。その理由を教えてください。

曲氏 この端末は9980円(税別)ぐらいで、売価として、(より多機能な)スマホと比べると高く見えてしまうかもしれません。これがアフリカなどなら、数十万台の規模になり(安くでき)ますが、日本では数万台でも多いと思います。その中に、先ほどお話した、日本用の開発費も乗ってきてしまいます。一部の人にとっては安いのかもしれませんが、逆に高いと感じる人もいる。ですから、「ああ、いいな」と思う人に届けられるようにしたかったんです。正直、このケータイが売れるかどうかも分かりませんでしたからね(笑)。

 そんな中で、最初はクラウドファンディングでやりましょうということになりました。ところが、ふたを開けてみると、一気に1000台を超え、最終的には2000台ぐらいまで行き、ビックリしました。これは本当にすごいことです。クラウドファンディングでやりがいがあったのは、ユーザーからの、「こんなケータイを待っていた」と熱いコメントが多かったことです。応援してくれる方が多く、次世代機も絶対に開発するという目標を強く持つようになりました。

―― そこまでの反響があった理由を、どう見られていますか。

曲氏 日本は、昔からフィーチャーフォンが根強く、ケータイが好きという文化があります。私が日本に来たのは2001年のことですが、当時のケータイには、まだカメラが付いていませんでした。その後、Jフォン(現・ソフトバンク)が写メールのケータイを発売しました。当時は留学生でお金もなかったので、高いと感じてauにしてしまいましたが(笑)、それが人生初のケータイでした。ケータイ販売のスタッフをやっていたこともあり、私もケータイが好きです。iPhoneが出たときは、中身を知りたくて分解までしましたからね(笑)。

 そういうことに興味がある、私と同じような人が、日本にはいっぱいいるのだと思います。iPhoneは確かに便利で、生活の一部になっているのは間違いありません。ただ、こういうケータイが出てくると、フィーチャーフォン時代を思い出し、懐かしいと思って買ってくれる。遊びで買うだけでなく、通話がきちんとでき、コミュニケーションの機会が増えるというのも受けている理由ではないでしょうか。

―― 今では大手家電量販店でも販売されています。これは、クラウドファンディングで話題になったことを受けてでしょうか。

曲氏 そうですね。あれがなければ、お店に展示しても、売れるかどうかは分かりませんでしたから。ただ、1つはクラウドファンディングの実績ですが、もう1つは、こういうケータイを見て、今ない商品だから発売したら面白いのではという気持ちもあったと思っています。

既に1万台を突破しているが、利益は……

―― MVNOで取り扱いたいというところもで、出てくるのではないでしょうか。

曲氏 中にはいますね。OCNさん(NTTコミュニケーションズ)とは、話し合いをして、認証端末になりました。

―― 最終的な販売台数ですが、販路が広がり、万の単位は見えているのでしょうか。

曲氏 というか、もう超えてます(笑)。

―― それはすごい。下手なSIMフリースマートフォンよりも売れてますね。3G対応のシンプルケータイが珍しいということでしたら、海外展開も考えていますか。

曲氏 ものとしては売れるのだと思いますが、(電波などの)認証費用がかなりかかってしまいます。韓国や香港からも問い合わせがありましたが、そのコストがあるので難しいですね。

―― 販売台数が万単位になったというお話でしたが、利益は出ているのでしょうか。

曲氏 正直、利益よりも、テスト端末として市場があるかどうかを見てみたかった。私と同じように考えている人がどのくらいいるのかを、試してみたかったというのが大きいですね。恐らく利益だけを考えると、この商品はやらないのではないでしょうか。ですから、他社がマネしようとしても、なかなか難しいと思います。開発しようと思えばできるものですが、なにぶんニッチな市場なので。

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