「韓国の国策」といわれるように、5Gというキーワードは各パビリオンに表れ、ゲーム感覚のVR体験は子どもたちにも伝わっているようで、よいブランディングになっている。
しかし、ワクワクするような5Gのメリットが、いまひとつ伝わってこないのだ。5GとVRの体験は離れすぎているのだろう。スキージャンプの体験もいまではVRで体験できるが、そこにライブやモバイルであることの意義が伝わってこない。5Gが少々盛り上りに欠けるのは、「明確な未来を見せるキラーコンテンツがないからだ」とも言われるが、どうだろうか。4Gのときには、スマートフォンがあった。5Gは私たちに何を与えてくれるのだろうか?
今回の実証実験で残念なことがあるとすれば、こうした肝心の映像やシーンは「録画」でしか見られなかった点だ。そのため、リアルタイムに画像を送り出し、それを番組やプログラムとして加工し、ユーザーがリアルタイムに受け取る仕組みが欲しい。2020年の東京オリンピックでも5Gを生かしたサービスを展開するのなら、以下の提案をしたい。
平昌オリンピックでは、Samsungが1100台の5G端末を提供して、主にパビリオンでのデモ機として使われていた。それでも、いかんせん台数が足りない。東京オリンピックでは、リアルタイムで楽しさやメリットを享受するためには、先行した5G端末を販売またはレンタルするために、1万台以上は用意してほしい。またタブレットでは大きすぎるので、スマートフォンも欲しくなる。
実際に見に行った人が5Gの端末を操作してくれるのか考えると、少々難しい。座って観戦する屋内競技場ならともかく、屋外で直射日光のあたる観客席や、マラソンなどの沿道では、端末を操作する余裕があるのか、見えても十分使えるのか疑問だ。
そのため、VRシアターと題したパブリックビューイングを幾つか設置すべきだ。そうすれば、聖火リレーにも伴走として参加できるだろうし、キムヨナと一緒にあの聖火台に上り、一緒に火をともすことだって可能だろう。またカメラ撮影許可さえクリアできれば、一緒に高飛び込みの台に上がったり、100m走を並んで走ったりすることも不可能じゃない。
せっかくの新しい映像体験だが、今回は放映権の問題で、NHKなど一部のサイトでしか見られない。5G映像として分類していないので、直感的に分かりにくいのも不満だ。
会場は混雑しているため、余裕をもって試合の振り返りなどしていられない。せめて過去のゲームを簡単に見せるアプリや案内コーナーがあってもいい。公式アプリなどとしっかり連動すれば使いやくなるだろう。
私にとっては少々、不完全燃焼気味だった5Gオリンピックだが、新しい時代の兆しは見え始めている。5Gが生む新しいサービスへのアイデアを問い続ける私に対して、KTのCSR担当のジンホン・キム氏が答えてくれた。
「3Gから4Gに変わったときにも同じような疑問が出ました。新しい技術が生まれても、それを何に使えばいいか、すぐには誰も分からない。だから、時間をかけて考え続けることが大事なんです」
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