「5Gを予感させるワクワクを」 KDDIがNetflixと提携した理由 旅行の遠隔体験も

» 2018年05月29日 17時36分 公開
[田中聡,ITmedia]

 KDDIとNetflixが提携し、25GBのデータ容量と「Netflix(ベーシックプラン)」「ビデオパス」をセットにした月額7500円(税別、各種割引を含めれば最安で月額5500円)の「auフラットプラン25 Netflixパック」を、2018年夏以降に提供する。Netflixは国内ではソフトバンクとも提携しているが、専用プランを手掛けているのはauのみ。au夏の目玉は、この“Netflix専用プラン”といえる。

au 月額7500円(割引で最安5500円に)で利用できるNetflix専用プラン
au KDDIの高橋誠社長とNetflixプロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏
au auのCMに出演している川栄李奈さん、有村架純さん、菜々緒さんが発表会に登場

次世代ネットワークを予感させるワクワクを提案したい

au KDDIの高橋誠社長

 KDDIはなぜ、Netflixとの協業を決めたのか。KDDIの高橋誠社長は、同社のキーメッセージに「ワクワクを提案し続ける会社」を掲げており、Netflixとの協業も、このワクワクを提案できる施策の1つという位置付けだ。同社は、ワクワクの先に、2020年に商用サービス開始を予定している次世代通信規格「5G」を見据えている。高橋氏は「次世代ネットワークを予感させるワクワクをご提案したい」と話す。

 5Gは「大容量」「低遅延」「多接続」という特徴を持つが、単に通信スペックが進化するだけではなく、これらを生かしたサービスを提供することが大切。「どういう体験価値を感じてもらえるかを4Gの時代から提案して、これだというものを5Gでキラー(コンテンツ)にしていく」と高橋氏は意気込む。

 高橋氏は5月29日の発表会で、3つの「ワクワク」を提案した。その1つが「ハマる体験」で、先述したNetflixの協業を指す。「この夏、エンタメにハマる体験を提供したい」と同氏。Netflixのような動画ストリーミングサービスは、大容量、低遅延になるほど品質は向上するので、5Gを見据えて強化するサービスに適していると判断したというわけだ。

au 「ワクワクする体験を届ける」ことを目指すKDDI

 「Netflixは7年前に初めて本社に行って以来、ずっとアプローチしていた」(高橋氏)そうで、念願の提携となった。単にNetflixのサービスを販売するだけでなく、専用プランにすることで「通信とエンタメの融合を実現した最初の体験価値を提供できる」と同氏は胸を張る。

 ICT総研の調べでは、有料動画サービスの利用者は右肩上がりで増加しており、2020年末には利用者は2010万人に達すると見込まれている。ただ、KDDI調べだと有料動画サービスを利用している人は2018年3月時点で15%にすぎない。利用していない理由として「見たいコンテンツがない」「料金が高い」「時間がない」が多く挙がった。そこで、Netflixをお得に楽しめる大容量プランを作った。日本ならではのコンテンツが多いビデオパスも含めることで、コンテンツの量もカバーしていく。

au 有料動画サービスの利用者は年々拡大している
au それでも未加入者は多い
au Netflixのベーシックプランがバンドルされた専用プランを作った
au Netflixのグレッグ・ピーターズ氏

 Netflixは現在、世界190カ国以上で利用されている。会員数は1億2500万人に上り、会員数の50%以上が米国以外のユーザーだという。Netflixプロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏は「日本のストーリーテラーと組んで、高いクオリティーの作品を世界中にお届けしている。2018年末までに1000タイトルのオリジナル作品を作る」と意気込みを語った。モバイル向けの独自コンテンツの配信は現時点では予定していないが、「時間のない人でも楽しめるよう、短編や既存コンテンツを編集したものの配信は検討している」とのこと。

au Netflixも順調に会員数を増やしている

 Netflix専用プランのデータ容量は、当初は25GBのみだが、「他社や海外では30GB、50GB、無制限のプランもあるので、それ以外のプランも必要なら考えていきたい。(au)ひかりなど、固定系とのバンドルも考えられる」(高橋氏)とのこと。なお、動画コンテンツの通信量をカウントしない「カウントフリー」については、「現時点では考えてない」(同氏)とのこと。ネットワーク中立性の問題もあり、KDDIとしては慎重に考えているようだ。

 ビデオパスが伸び悩んでいるからNetflix提携したのでは? との質問に対しては「ビデオパスのユーザー数は非公表だが、100万以上はいる。伸び悩みが提携の原因というわけではない。グローバルプレーヤーの規模感はすさまじい。ビデオパス(のようなローカルサービス)だけでは追い付けないのは、どこの会社も同じ。こういうOTTプレーヤーといかに組んでいくかがポイント」(高橋氏)と答え、外部パートナーとの連携でコンテンツを拡充していく考えを示した。

ロボットを遠隔操作して「距離を超える体験」を

 KDDIが2つ目のワクワクとして提案するのが「距離を超える体験」で、テレイグジスタンス(遠隔存在)と呼ばれる技術を活用する。KDDIが出資しているTelexistenceの遠隔操作ロボットの量産型プロトタイプ「MODEL H」を活用した体験イベントを2018年夏に実施する。Telexistenceの富岡仁CEOは「ロボットと人間をインターネットで結び付け、ロボットを遠隔で分身のように操作できるテレイグジスタンスで、人の移動の在り方や活動の仕方、企業のデジタルトランスフォーメーションのアプローチの仕方を根底から変えたい」と話す。

au Telexistenceの富岡仁氏。左にいるのが遠隔操作をするロボット「MODEL H」

 テレイグジスタンスの最初のテーマに掲げるのが「次世代の旅行体験」で、イベントでは小笠原諸島での旅行を遠隔地で体験できる。まずは小笠原諸島にロボット数体を配置し、auのネットワークに、ロボットと操作用端末を接続させる。遠隔地でヘッドマウントディスプレイ(HMD)やグローブを装着したユーザーの動きに合わせてロボットが動き、ロボットが見た映像がHMDにリアルタイムで表示される。LTEなので多少の遅延はあるが、あたかも現地を歩いているような感覚を味わえる。

au テレイグジスタンスの技術を活用し、次世代の旅行体験を提供する
au 最初の舞台に選んだのが、小笠原諸島。旅行体験イベントは、小笠原返還50周年記念事業の一環で実施する

 なぜ小笠原諸島を選んだのか? 東京から小笠原諸島までは約1000kmあり、片道24時間も掛かる。移動手段は竹芝から出ているフェリーのみで、そのフェリーは週に1回しか運航していない。このように「極めて時間と距離のコストが高い」ことから、「auと一緒に、この現状を変えていきたい」と富岡氏。テレイグジスタンスも5Gにつながる技術で、より低遅延な5Gの方が、精度の高い体験ができるだろう。

 なお、小笠原諸島での旅行体験イベントの実施場所や料金などは未定。多くのユーザーが気軽に体験できる場が提供されることに期待したい。

au 小笠原諸島への移動手段は限られる
au 約1000kmの距離をネットワークで埋める
au ロボット「MODEL H」を使ったテレイグジスタンスのデモ。操作者と同じ動きをロボットがする

スタートアップ企業との提携も

 3つ目のワクワク感は、「次世代をつくろう」と題し、スタートアップ企業との新事業創出を目指すプラットフォーム「KDDI ∞ Labo」に、「次世代プログラム」を2018年8月に開設する。パートナー企業と提携し、ロボティクス、XR、IoT、ビッグデータ、AI、ブロックチェーン、ドローンなどのテーマで、5Gを活用した新たなサービスやプロダクトの創出を目指す。「技術のテクニカルワードにだまされず、何をお届けするか。“次世代”を皆さまと作っていきたい」と高橋氏は意気込んだ。

au 5Gを活用したサービスを、外部パートナーと作っていく「次世代プログラム」
au 東京都の虎ノ門に、次世代プログラムの開発拠点を2018年夏にオープンする

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月27日 更新
  1. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  2. 「Galaxy Z Fold8」「iPhone Duo」を“メイン端末”として使う上での課題 縦型コンテンツの最適化をどう進める? (2026年10月26日)
  3. 「iPhone Duo」画面不具合の報告がSNSで話題 店頭デモ機の過酷な使用環境が起因か (2026年10月26日)
  4. 「Androidのマイナンバーカード」がスタートするもフル機能対応機種が少ない件 ポイントは「StrongBox」という仕組み (2026年10月24日)
  5. 「iPhone Duo」はLINEもポケモンGOも“黒い”余白だらけ? 日本の定番アプリは未対応が多く (2026年10月23日)
  6. 20〜30代限定の「ダイナースクラブ ゴールド」登場 スタバやスマホで10倍還元、「食べログプレミアム」が実質無料 (2026年10月26日)
  7. 「iPhone Duo」は買いか見送りか――賛否 そんな中、登場した「iPad mini」は誰向け? (2026年10月27日)
  8. KDDI、子会社モビコムのモンゴルでの火災について事実関係を公表 「法令違反行為を行っていない」 (2026年10月24日)
  9. 進化した「Siri AI」で感じた、iPhoneの操作を一変させる実力 「AI出遅れ」の汚名返上なるか (2026年10月24日)
  10. きょう発売の「iPhone Duo」、Apple 表参道でゲットしてきた 早速開封レポート (2026年10月23日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー