Android Pはいち早くユーザーの元へ Google「Project Treble」への期待

» 2018年06月18日 13時48分 公開
[太田百合子ITmedia]

 大手キャリアから2018年夏の最新スマートフォンが出そろった。これらのスマートフォンに搭載されているOSは、Android 8.0または8.1(Oreo)。これから長く使うことを考えると、少し先の話とはいえ、次期OS、Android Pへのアップデートがどうなるのかも気になるところだろう。

 というのも、Android OSのアップデートはメーカーによって対応がバラバラで、新OSがリリースされるとすぐにアップデートを実施するメーカーもあれば、かなり時間がたってからアップデートを行うメーカーや、そもそもアップデートをしないメーカーもあるからだ。ユーザーとしては同じAndroidスマートフォンなのに、メーカーや機種によって最新OSへのアップデートがきちんと保証されないのは困りもの。さらにユーザーが使っているOSのバージョンがバラバラなのは、アプリ開発者にとっても頭の痛い問題だ。

 そんなAndroidスマートフォンの現状を如実に表しているのが、Googleが開発者向けに公開しているAndoridのバージョン別シェア(外部リンク)。2018年1月8日時点の集計だが、最新のAndroid 8.0または8.1(Oreo)が5.7%なのに対して、Android 7.0または7.1(Nougat)が31.1%、Android 6.0(Marshmallow)が25.5%、Android 5.0または5.1(Lollipop)が22.4%で、約5年前にリリースされたAndroid 4.4(KitKat)のシェアもいまだ10.3%ある。残り5%はさらに古いOSだ。

Project Treble AndroidのOS別シェア。多くがNougat、Marshmallow、Lollipopに分散されている

 ちなみにAppleが同じく開発者向けに公開しているデータ(5月末時点)では、最新のiOS 11のシェアが81%、iOS 10が14%、その他が5%となっている(外部リンク)。OSもデバイスもApple1社が提供する「iPhone」に対して、AndroidスマートフォンではOSはGoogle、デバイスは各端末メーカーという違いがあるとはいえ、この差は大きいといわざるを得ない。

Project Treble iOSのOS別シェア。iOS 11が8割を超える

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 メーカーの違いによるデバイスの多様性はAndroidスマートフォンの大きな魅力だが、それゆえに新OSへの対応はメーカーや機種ごとに難易度が異なり、コストや時間を要するため、場合によってはアップデートをしないという選択も行われてきた。言うまでもないが、これはセキュリティの観点からも大いに問題がある。

 そこでこうした状況を打開しようと、Googleが2017年のAndroid Oreo開発段階から取り組んできたのが「Project Treble」だ。メーカーごとにカスタマイズされた実装部分とAndroid OSのシステム部分、つまりフレームワークを切り離して、メーカーがアップデートを実行しやすいようにする取り組みである。

 先日開催された開発者向けのイベントGoogle I/Oで、GoogleはAndroid Pのβ版をリリースするとともに、β版が利用可能な対応デバイスとして従来の「Google Pixel」「Google Pixel 2」に加えて、「Sony Xperia XZ2」「Xiaomi Mi Mix 2S」「Nokia 7 Plus」「Oppo R15 Pro」「Vivo X21」「OnePlus 6」「Essential PH‑1」の7機種の名前をあげた。

 残念ながら日本で発売中のXperia XZ2は対象外だが、Google Pixelシリーズだけしかサポートしていなかったこれまでに比べれば、大きな変化といえる。Androidのエンジニアリング担当バイスプレジデントのデイブ・バーク氏は、Google I/Oの期間中、メディア向けに行われたラウンドテーブルで、今回の複数デバイスのサポートは「Project Treble」の大きな成果であると強調した。

Project Treble Androidエンジニアリング担当バイスプレジデントのデイブ・バーク氏

 Project Trebleによってメーカーのアップデートが容易になるだけでなく、OSの開発から、それが新端末に実装されるまでのスピードも大幅に短縮されるという。

 従来はAndroid OSがアップデートされると、続いてプロセッサメーカーがプロセッサに合わせてカスタムを加えた新OS対応のソフトウェア「Board Support Package(BSP)」をデバイスメーカーに提供、デバイスメーカーが自社のスマートフォンの仕様や設計に合わせて開発を行い、さらにキャリアからの要求を反映してテストし、ようやくユーザーの元へ届くという長いプロセスが必要だった。このため、商機を逃したくないメーカーが、新端末にリスクの少ない旧OSのBSPを選択するケースも多かったという。

 そこでGoogleでは、Android PからQualcomm、MediaTek、Samsung Electronicsの各プロセッサメーカーとBSPを共同開発。これによってプロセッサメーカーからデバイスメーカーへより早く、安定した供給が可能になるという。

 「時間はかかったが、これは劇的な変化であり、今のところうまく機能している」とバーク氏。おかげでAndroid 8.0または8.1(Oreo)搭載の最新スマートフォンは、以前よりも早いタイミングでAndroid Pへアップデートできる可能性が高いだけでなく、Android Pを搭載する最新スマートフォンの登場も、以前より早くなる可能性が高い。以前の記事でも紹介したように、Android PにはUIを中心に多くの変更や新機能が加えられている。ユーザーがこの新OSを手にする日は、案外すぐにやってきそうだ。

Project Treble Android Pではホームボタンがなくなり、短いバーをタップまたはスワイプでして操作する新しいUIが採用されている

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