「イオンモバイル」のユーザーが変わった理由 今後はポイントや金融サービスとの連携も視野に

» 2019年01月07日 17時38分 公開
[田中聡ITmedia]

 イオンリテールが「イオンモバイル」としてMVNO事業に参入してから間もなく3年になる。29種類もの豊富な料金プランや、全国のイオン200店舗以上で対面による契約やサポートが可能なこと、解約金や契約期間の縛りを設けていないことなどが特徴だ。

 現在、イオンモバイルはどんなユーザーが契約しており、どんなサービスが人気なのか。2018年12月26日にMMD研究所と共同で開催した勉強会で、イオンリテール 商品管理本部 モバイル事業部 事業部長の井関定直氏が説明した。

イオンモバイル イオンリテールの井関定直氏

2016年から2年で起きた変化

 イオンモバイルの契約数は公表されていないが、井関氏は2016年2月のサービス開始以降、契約者は順調に推移していることを説明。契約場所は店舗が92%、ECが8%で、圧倒的に店舗が多い。これは全国に店舗を持つイオンならではの特徴といえる。

イオンモバイル 「イオンモバイル」の契約数推移

 ここ最近の特徴として井関氏は、SIMカードを最大5枚持てる「シェア音声プラン」の契約が増えていることを挙げる。シェア音声プランの比率は、2016年3月時点では14.3%だったが、2018年9月には24.2%にまで向上している。その要因について井関氏は「家族でまとめて乗り換えている人が増えていること」を挙げる。「(まずは子ども向けに契約し、)子どもの利用動向や通信状況を確認した後に、親が自分の主回線を変えている」という。

イオンモバイル 契約種別の変化

 契約プランのデータ容量は、2016年3月時点では2GBまでの低容量プランが60%と多かったが、2018年9月では4〜8GBの中容量プランが54.2%で最多になっている。これは「TikTokやYouTubeなどの利用が伸びていること」に加え、「サービス開始当初は、サブ機として契約して小容量プランを選ぶ方が多かったが、メインスマホ用に契約する人が増えているため」だと井関氏は言う。

イオンモバイル データ容量の変化

 40代の契約者が最多という状況は変わっていない。2016年3月時点では40代が37.4%と突出して高かったが、2018年9月では29.5%にまで下がり、20〜30代、60〜70代以上の契約者が増えている。井関氏は「マジョリティー層に移行していることを感じる」と感触を述べる。また「シニア層は、偶数月15日の年金支給日に、ガラケーからスマホに変えたいという人が多い」ことも付け加えた。

イオンモバイル 契約者年代の変化

 端末とセットで契約する比率は全体では32.1%で、60代が47.1%、70代以上が46.2%で特に高い。この理由について井関氏は「20〜40代はスマートフォンを持っている人が多いため、もともとのスマートフォンにSIMを挿す傾向がある。一方シニアはファーストスマホ(初めてスマホを使う人)が多いので、SIMと一緒に買う人が多い」と説明する。

イオンモバイル 世代別の端末セット率

 ユーザー動向の変化についてまとめると「シェア音声プランの契約者が増えていること」「データ容量が増加していること」「20〜30代、60〜70代以上のユーザー比率が増えていること」の3つ。家族で契約する人が増えたことで、年代の幅も広がったといえそうだ。

ポイントや金融サービスとの連携を強化

 井関氏は、総務省が2018年11月に緊急提言した「シンプルで分かりやすい携帯電話に係る料金プランの実現」を踏まえつつ、イオンモバイルの考える通信サービスの在り方にも言及。この緊急提言には「同意」するとの考え。総務省の研究会で要望として挙がった「通信料金と端末代金の完全分離」「行き過ぎた拘束期間の禁止」「合理性を欠く料金プランの廃止」は、イオンモバイルでは既に実施済みだと強調する。

イオンモバイル イオンモバイルでは、もともと通信料と端末代は分離している(他の多くのMVNOも同様だが)
イオンモバイル 期間拘束や解約金が一切ないのは珍しい
イオンモバイル 料金プランの仕組みはシンプルだとアピールする

 またイオンモバイルならではの取り組みとして、端末とSIMの無料貸し出しサービスや、店舗受付シートを活用した契約時間の短縮などを実施している。無料貸し出しサービスは2018年11月末時点で1万3000人以上が利用しており、約80%が満足したとの反響が出ている。無料貸し出しサービスの期間は現在のところ最大1週間だが、2019年度からはSIMのみについては、貸し出し期間を最大2週間に延長する予定。

イオンモバイル 端末とSIMの無料貸し出しサービスは、高い満足度を得ている

 イオングループでは、ポイントや電子マネーサービス「WAON」や、金融業として「イオンカード」「イオン銀行」も展開している。今後は、これらのサービスとイオンモバイルの連携を強化する。「スマホ決済やポイント経済圏も競争が激しくなっている。通信、ポイント、電子マネー、金融サービスを併用するユーザーに向けたサービスを拡充することで、イオンのARPU(1ユーザーあたりの売り上げ)の拡大につながる」と井関氏は期待を寄せる。

イオンモバイル ポイント、決済、金融との連携を推進する

 実際、イオンカードの所持者がイオンモバイルを契約すると、その3カ月後にイオンカードの利用額が1.7倍まで伸びるという結果が既に出ている。これは、イオンモバイルで毎月確実に通信料が発生し、請求書と一緒にチラシを送付することで、ユーザーとのタッチポイントが増えたためだという。特にポイントや決済まわりは、通信キャリアも巻き込んで2019年も大きな動きがありそうなだけに、イオングループとして通信サービスとどう連携させるかは、腕の見せ所といえる。

イオンモバイル イオンモバイルのユーザーはイオンカードの利用額が高いというデータも出ている

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