なぜドコモの「U15はじめてスマホ割」“のみ”が中止に? 総務省に確認した

» 2020年07月02日 17時12分 公開
[田中聡ITmedia]

 NTTドコモが7月1日からの提供を予定していた「U15はじめてスマホ割」が、急きょ中止に追い込まれた。

 U15はじめてスマホ割は、新規契約やMNPでドコモを契約した15歳以下のユーザーを対象に、月額料金を12カ月にわたり1000円割り引くというもの。中止の理由についてドコモは「電気通信事業法に抵触するため」と説明する。総務省からドコモ側に指摘があったそうだが、具体的に何がまずかったのか。総務省料金サービス課に改めて確認した。

U15はじめてスマホ割 急きょ中止に追い込まれた「U15はじめてスマホ割」

 電気通信事業法での割引規制といえば、「電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン」で定められている「通信料金と端末代金の分離」が思い浮かぶ。

 ここで禁止しているのは「1.通信サービスの継続利用や端末購入を条件とした端末値引き」と「2.通信の利用と端末の購入を条件とした2万円を超える割り引き」。2は明らかに無関係だが、1についても端末の購入が前提のため、U15はじめてスマホ割が必ずしも該当するとは限らない。

 U15はじめてスマホ割の条件は「15歳以下の新規契約」なので、端末購入が必須ではないからだ(……といいつつ、新規契約で、しかも初めてスマホを使う人が多いと思われる15歳以下に限定しているので、端末を購入するケースが大半だろうが)。

 では何が問題なのか? 電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドラインでは、「『端末の販売等に際して』ではない『新規契約』を条件として行う利益の提供については、通信料金の割引を行うものであれば、法第29条第1項第5号に規定する要件に該当する可能性がある」と定められている。

 電気通信事業法第29条には、「総務大臣は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、電気通信事業者に対し、利用者の利益又は公共の利益を確保するために必要な限度において、業務の方法の改善その他の措置をとるべきことを命ずることができる」とある。この第5号が「電気通信事業者が提供する電気通信役務に関する料金その他の提供条件が他の電気通信事業者との間に不当な競争を引き起こすものであり、その他社会的経済的事情に照らして著しく不適当であるため、利用者の利益を阻害しているとき」という内容。

 つまり、端末を購入しなくても、新規契約の条件が「不当な競争を引き起こすもの」と判断されたら、改善措置の対象になるというわけだ。

電気通信事業法 電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドラインでは、新規契約を条件とする割引は事業法に抵触する可能性がある旨が記載されている

 しかしちょっと待ってほしい。新規契約を条件とした割引施策は、何もU15はじめてスマホ割に限った話ではない。直近ではKDDIも「U15 スマホスタート割」という似たような施策を展開している。同じドコモで言えば、学割も新規契約を対象にしている。なぜU15はじめてスマホ割だけがNGなのか?

U15 スマホスタート割 auの「U15 スマホスタート割」では、新規契約だけでなく、3Gからの契約変更を条件にしている

 総務省は、U15はじめてスマホ割の条件を「新規契約(MNP含む)に限定していたこと」を問題視したという。U15 スマホスタート割や学割は、新規契約の他に「3Gからの契約変更」も条件に定めていたので、NGの指摘を免れたようだ。料金サービス課の担当者は「個別の施策についてのコメントは控えるが」と前置きした上で「自社のユーザーも(施策の対象に)加えている場合は問題ない」と述べた。

 しかしU15 スマホスタート割や学割も、新規契約を条件の1つにしていることは変わりなく、「機種変更や契約変更も条件に含めれば問題ない」という説明には釈然としない部分もある。事業法のルールを徹底させるのなら、新規契約は一律NGとすべきではないだろうか(もちろんユーザーには何1ついい話ではないが)。

 U15はじめてスマホ割も、契約変更を条件に加えればよさそうだが、そうすると、既に実施している「はじめてスマホ割」と大差なくなってしまうため(割引額は異なるが)、中止にしたのだと理解できる。

 ともあれ、今回の件をきっかけに新規契約向けの割引施策が厳しく制限されることになったら、キャリア間の流動性はますます低下しそうだ。

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