日本通信が「合理的かけほプラン」をHIS Mobileに提供 その狙いは? 福田社長に聞くMVNOに聞く(2/2 ページ)

» 2020年10月07日 12時45分 公開
[石野純也ITmedia]
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合理的かけほは主回線として契約する人が多い

―― HIS Mobileに話を戻しますが、店舗に来る方の目的は旅行だと思います。そういった状態の人に、携帯電話を勧めて、どのぐらい響くものなのでしょうか。

福田氏 その意味で一番注目していたのが「HISでんき」です。どのぐらいいくのかと思っていたら、すごくいい。コストを削減する方向の話は、常にベストセラーになりうることが分かりました。これが逆に、コスト的にプラスアルファになってしまうようなものだと、提案しても恐らくダメなのでしょう。旅行のために来ても、確実にコストが下がると分かれば、食いつきはいいと思います。ここで肝になるのも、やはり「必ず安くなる」というキーワードです。

―― ちなみに、日本通信で出した合理的かけほプランの反響はいかがでしたか。

福田氏 まず、Webだけで先行販売しました。とにかく早く出さないと……と思ったからです。Webだけにしては、うちとして手いっぱいな注文をいただいています。うち8割ぐらいがMNPです。都道府県分布を見ても、ほぼ人口比率と同じでした。これはうれしかったですね。最初にイオンSIMを出したときは、想定が裏切られ、買われていたのが東名阪だけでショックを受けましたから(笑)。以前はよく分かっている方だけが買っていた状態でしたが、今回は普通に主回線として使う方が買い替えています。あとは、現実的な話として、楽天モバイルのネットワークがまだ(全国に)あまりない。そういうところも、多少は影響していると思います。

 もう1つ、問い合わせが殺到しているのが法人です。法人向けもやるとは言っていましたが、開始時にはまだ用意ができていませんでした。ところが、いきなり「法人で契約できますか」という問い合わせが殺到してしまったため、8月に慌ててWebサイトを作って、突貫工事で受付を始めました。これはこれでうれしかったですね。中小企業で、上が100回線ぐらい。そういうところが非常に増えました。

HIS Mobile 要望の多さを受け、法人向けページも急きょ作成したという

 反響という意味では、販売店関係も多かったですね。話を聞きたいというところは非常に多い。ただ、Amazonやヨドバシカメラでは販売していません。同じことを繰り返してもダメだからで、そういったところには他のMVNOのSIMもたくさん入っています。その中に埋没するのは嫌でした。これがHIS Mobileなら、うち一本に絞った提案ができます。同様に、規模の小さい販売店も、あれもこれもはできないため、一本化してくれます。そういった提案をしっかりしていくことが大事になると見ています。

短時間の通話定額プランも提供したい

―― 音声定額ですが、10分などに限定して、もっと料金を下げてほしいというニーズもあると思います。そういったニーズは、どうお考えですか。

福田氏 どこかで投入しようと思っています。実はもともと、合理的かけほプランのライト版も考えていました。ただ、店舗をやっていくこともあり、(スタッフを)あまり悩ませたくない。キャリアでも定額と準定額の差は大体1000円ぐらいですね。そのぐらいの料金差だと、店舗で違いを出しづらいかもしれない。一方で、セグメント別に考えると、確かにそういうプランを求める方もいます。年齢的には比較的若い方で、ネットのサービスをたくさん使っていて、通話時間が比較的短い。そういった方々に向けた形としては、やりたいと考えています。いくつか仕掛けていることもあります。

―― 合理的かけほプランも、HIS Mobileの格安かけ放題プランも、ドコモ回線です。一方で、今までは両社とも、ソフトバンク回線を提供してきた経緯もあります。ここについては、どうされていくのでしょうか。

福田氏 重要なのは音声のところで、ソフトバンクにも当然、原価ベースでやっていただくことになると思います。データ通信に関しては、(ドコモより)ソフトバンクの方が安くなったぐらいですからね。

―― 最後に、日本通信として合理的かけほプランを、HIS Mobile以外のMVNOに提供する予定があるのかを教えてください。

福田氏 その問い合わせも結構あって、徐々に始めています。外国人向けにやっているMVNOなどは、大々的に販売しているようです。こういう言い方は変かもしれませんが、自分たちなりのマーケティング戦略を持っている方々が多い。こういうお客さまに対して、こういうやり方をしたい、そのためにはこういうものが必要というところは、品ぞろえだけでの勝負はしませんからね。

取材を終えて:かけ放題は広がりそうだが、政府の値下げ要請に不安も

 HIS Mobileは旅行者中心のMVNOだっただけに、新型コロナウイルスの影響がやはり大きかったという。一方で、日本通信がタイミングよく音声定額を提供できたことから、国内ユーザー向けのビジネスモデルに大幅な転換を図っていくようだ。Go Toトラベルキャンペーンなどでユーザーの客足が戻れば、格安かけ放題プランを拡販するチャンスも広がる。

 とはいえ、総理大臣が変わり、大手キャリアへの値下げ圧力はいっそう強まっている。政府のシナリオ通りに進んでしまうと、MVNOにとの差が縮まり、安さをアピールしづらくなるため、福田氏が思い描いていたイメージ通りに行かない可能性もある。単純な大手キャリアの値下げではなく、サブブランドや新規参入キャリア、MVNOの底上げをするような政策が求められていると感じた。

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