日本通信が「合理的かけほプラン」をHIS Mobileに提供 その狙いは? 福田社長に聞くMVNOに聞く(1/2 ページ)

» 2020年10月07日 12時45分 公開
[石野純也ITmedia]

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う人の移動の減少で、旅行業界は大きなダメージを受けている。旅行者を主戦場にしてきたMVNOも同じだ。日本から海外に渡航するユーザーをターゲットにした海外用SIMカードは、軒並みビジネスモデルの変更を余儀なくされている。

 そんな中、国内向けの料金プランを拡充したのが、MVNOの老舗である日本通信と、旅行業界大手のHISが合弁で設立したHIS Mobileだ。同社は8月28日に「格安かけ放題プラン」の提供を開始。これは、3GBのデータ通信と音声通話のかけ放題がセットになったプランで、料金は2480円(税別、以下同)で済む。追加のデータ通信容量が必要な場合は、1GBごとに250円の料金がかかる仕組みだ。無制限の音声通信には、アプリの利用はプレフィックス番号の付与は必要ない。

 MVNO業界に詳しいユーザーは、この仕様を聞いて、日本通信の「合理的かけほプラン」のことを思い出したはずだ。実際、HIS Mobileの格安かけ放題プランと、日本通信の合理的かけほプランの料金は完全に同じ。最大容量も30GBまでとなっている。日本通信がドコモとの間の総務大臣裁定を受けて投入した合理的かけほプランを、いち早くHIS Mobileで展開した格好だ。

 では、HISで同プランを提供する勝算はどこにあるのか。HIS Mobileに技術提供する、日本通信の福田尚久社長に話を聞いた。

福田尚久 日本通信の福田尚久社長

新型コロナの影響で旅行以外のビジネスにも注力

―― 最初に、なぜ、このプランをHIS Mobileに投入したのかを教えてください。

福田氏 もともとHISとは、合弁を始めたときから広くやっていくということを考えていました。店舗での販売もスタートします。法人営業も持っているので、それも始めようと準備を一生懸命しているところです。

 ただ、従来の格安SIMは格安といっても、安くなるかもしれないが、高くなるかもしれない。電話の仕方次第で料金が変わってしまっていたからです。(音声定額があれば)少なくとも、ドコモ、au、ソフトバンクから移ってくれば、今まで使い方を変えなくても確実に安くなる。そうすると、店舗での案内がかけやすくなります。

 こういった違いを理解された方が、今、動こうとしています。その1つがHIS Mobileです。新型コロナウイルスで海外旅行がなくなってしまったので、彼らも違うビジネスをしようとしているところでした。もともと、HISは格安航空券で「格安」という言葉を最初に使い始めた会社ですが、安くても信頼があるというブランドを築けています。そこからケータイを押さえにいくぞということで、コンシューマー向けに案内をかけています。

 今は、Go Toトラベルキャンペーンもあるため、店舗にはお客さまがいらっしゃっているようです。HISは電力を頑張っていますが、その中に通信も入れて、電力と通信をバンドルできるのではないでしょうか。

 他の販売店も、その違いをだんだん分かってきたようです。似ているようで、大きな差があるということをです。安くなるかもしれないのと、必ず安くなるでは、大きな違いがあります。そういったことを、今、大手の販売関係者と詰めているところです。

―― 店舗数は、どのぐらいになるのでしょうか。

福田氏 まだ調整をしているところですが、販売店でやること自体は決まっていて、日本通信側ではタブレットでの受付などの準備をしています。タブレットで案内できる店舗と、もうちょっと簡易的な入り口だけにするところに分かれますが、それを広げていこうとしているところです。

―― HIS Mobileというと、どうしても海外向けのSIMカードのイメージがあります。やはり、海外向けが多かったのでしょうか。

福田氏 この2月ぐらいまでは、圧倒的(に海外向け)でした。最後発ではありましたが、旅行者向けSIMのナンバー1に伸びていました。HISには支店が何百とあるので、旅行に絡んだ販売ルートもありましたからね。

―― それが、新型コロナウイルスの影響でピタッと止まってしまったわけですね。

福田氏 今はしょうがいないですね……。ただ、インバウンドの方が、このところ少し動き始めています。9月1日から、在留資格のある方が日本に戻ってくることができるようになり、今はそういった方々加入されています。また、合理的かけほプランを外国人向けに売る動きも始まっています。在留資格があれば契約はできますから、小規模な事業者がいろいろなところでやっています。

シンプルにすべく日本通信と同じプランに

―― その意味だと、やはり国内向けの料金プラン拡充はHIS Mobileにとって必須だったといえそうですが、なぜ日本通信と同じ料金プランなのでしょうか。

HIS Mobile HIS Mobileの「格安かけ放題プラン」は、日本通信と同じ内容。かけ放題と3GBのデータがセットで月額2480円。1GBあたり250円で追加チャージできる

福田氏 まずは同じ料金でスタートしましたが、次に大容量プランを追加しようかどうかというところです。大事なのは、通常のケータイショップとは違うHISで売ろうとすると、シンプルである必要があります。そうでないと、トレーニングができません。お客さまの9割はドコモかauかソフトバンクなので、「そこから変えると必ず安くなる」と言えるプランである方がいい。あまり細かくすると、分かりづらくなってしまいます。

 もともと、HIS Mobileで提供していた料金プランは日本通信のものから微妙に変えていましたが、あえて同じにしたのはそのような理由からです。まったく同じにすることで、案内もしやすくなり、しかもそれが平均的なユーザーにピタッとはまります。そこはシンプルに置きにいった方がいいと考えました。

 ちなみに、対象となるユーザーにヒアリングをすると、楽天モバイルのプランは視野に入っていません。うちも重視はしていますが、さすがに0円とは勝負したくない(笑)。テレビであれだけ露出していても、自分で行くかというとそうでもないようです。あとは、菅(総理大臣)さんの「下げる余地がある」という発言も大きかったと思います。昔は大手の料金があり、そこより安いと何か悪い面があるのではないかというイメージが強かったと思いますが、値下げ余地があるとあれだけ言われると、それも変わってきます。

販売店に手を付けないと、大手キャリアの値下げは難しい

―― ただ、それを真に受けて大手キャリアが値下げしてしまうと、価格差が縮まってMVNOが苦しくなってしまわないでしょうか。

福田氏 いつかはそうなってほしいですけどね。コンシューマー向けの料金は、キャリアが下げないからわれわれがやっているという使命感もあります。ただし、確かに値下げ余地はある一方で、大手キャリアの場合は販売店政策を根本的にやり直さない限り、(値下げは)難しいと見ています。うち(MVNO)には原価ベースで出して、ああいう価格になっているわけですから。彼らにあって、うちにないのは販売店の“遺産”です。その部分に手をつけない限り、大幅な値下げは難しいでしょう。その辺のハードルが高いことは、コンピュータ業界で苦しんで突破してきたので、肌感覚で分かります。

 商材的にも、例えばアメリカだとどこの地域にどこのキャリアが強いという差がありますが、日本はエリア的には大差がありません。売っている端末も、ほとんど同じです。となると、そこに接しているお客さまは、どの販売店がいいのかとなります。それがドコモショップであり、auショップであり、ソフトバンクショップです。コモディティの世界では、お客さまをスイッチさせる力を持っているのが販売店になります。ですから、そこに対するインセンティブはなかなか落とせない。「販売店はなくなる」と言われていましたが、実際には逆で、統合はしていますが1つ1つはみんな大きくなっています。

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