「プラチナバンドがなければ競争は困難」 楽天モバイルが既存周波数の再編を訴える

» 2020年12月24日 15時45分 公開
[田中聡ITmedia]

 総務省が12月23日に開催した「デジタル変革時代の電波政策懇親会」(第2回)にて、楽天モバイルがプラチナバンドの再編を訴えた。

 楽天モバイルに現在割り当てられている周波数は、LTEは1.7GHz帯の40MHz幅のみ。700MHz帯〜900MHz帯の低い周波数は、より電波が回り込みやすく屋内でもつながりやすいことから「プラチナバンド」と呼ばれているが、700MHz帯はドコモ、KDDI、ソフトバンクに、800MHz帯はドコモとKDDIに、900MHz帯はソフトバンクに割り当て済み。後発の楽天モバイルにはプラチナバンドは割り当てられておらず、同社は厳しい競争を強いられている。

楽天モバイル ドコモ、KDDI、ソフトバンクには合計50MHz幅のプラチナバンドが割り当てられている

 そこで楽天モバイルは、新規参入事業者に対しても、既存周波数の再配分も含めて機会の平等を実現してほしいと訴える。その指標として挙げるのが「電波のひっ迫度」。MHzあたりの契約数に加え、利用するデータ量も含めて指標を検討すべきとしている。

楽天モバイル 新規参入事業者にも機会の平等を与えてほしいと楽天モバイルは訴える

 楽天モバイルはデータ無制限のプランを1年間無料で提供していることもあり、毎月の総トラフィックは3キャリアの約2倍に上る。総務省の調査結果によると、3キャリアの1契約あたりの総トラフィックは7.3GBだが、楽天モバイルは15.6GBとなっている。

楽天モバイル 無料でデータ通信が使い放題ということもあり、楽天モバイルの総トラフィックは3キャリアよりも多い

 このまま3キャリアの2倍のデータ消費が続くと想定すると、2021年には電波のひっ迫度が3キャリアと同程度になり、2023年には3キャリアを超えるという。ただしこの試算はLTEのみで、5Gの周波数は考慮していない。また楽天モバイルの無制限プランは、2年目から月額2980円(税別)が発生する。

楽天モバイル 利用データ量2倍を加味すると、電波のひっ迫度は2021年に3キャリアと同程度になるという

 楽天モバイルは、プラチナバンドがなければ他キャリアと同等の条件でエリアを構築するのは困難だと認める。特に800MHz帯は1.7GHz帯より電波が約10倍透過するため、プラチナバンドがないと屋内でのユーザビリティが大きく劣後する。エリアのカバー範囲も、1.7GHz帯と比べて800MHz帯は約1.3〜2倍広いというシミュレーション結果を紹介する。

楽天モバイル 1.7GHz帯は電波が減衰しやすいため、特に屋内のエリア構築が不利になる
楽天モバイル カバー範囲もプラチナバンドの方が有利になる

 楽天モバイルは低価格の無制限プランや全機種SIMロックフリー、乗り換え手数料の無料化、eSIMやeKYCの積極採用など、キャリア間の乗り換えを円滑にする施策を推進している。新規事業者なので、転入の障壁を取り除くのは自然といえるが、これは政策に沿ったものであることから、周波数の割り当てを検討してほしいと述べる。

 新規周波数の割り当てについては、公平性の観点から、新規事業者に対して優先的に割り当ててほしいと訴える。また既存事業者と公正な競争ができるよう、既存周波数のプラチナバンドについても、周波数再配分の導入を検討するよう求めた。

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