インターネットイニシアティブ(IIJ)は8月10日、2021年度第1四半期の連結決算を発表した。売上は529億7000万円(+5.2%)、営業利益は43億6000万円(+113%)と、前年度同期比で増収増益を果たした。特に営業利益は202年度上期の計画(65億円)の約67%と想定以上に好調で、通期における業績予想の修正も検討するという。
IIJ全体では、先述の通り増収を果たしている。しかし、モバイル(MVNO/MVNE)事業に目を向けると、違った光景が見えてくる。
既報の通り、IIJは4月24日から個人向けMVNOサービス「IIJmio」において新プラン「ギガプラン」を提供している。このプランは、大手携帯キャリア(MNO)のオンライン専用プランなどに対抗する意味で、従来のプランよりも値下げをしている。
値下げの効果もあり、IIJmioの契約数は前四半期(2020年度第4四半期、2021年1〜3月)から1万9000件純増し、105万3000件となった。このうちギガプランは46万2000件で、約17%が新規契約による流入だという。
一方で、企業の目線に立つと料金の値下げは減収要因となる。この第1四半期のIIJmio(個人向けモバイル)の売上高は53億9000万円で前四半期比で2億4000万円、前年度同期比で4億1000万円の減収となった。
法人向けMVNOサービス(IIJモバイルサービスなど)の契約数は前四半期から5万3000件純増し、116万3000件に達した。売上高は前年同期比で6億7000万円増の23億4000万円と、全体的に減収となったモバイル事業の中で唯一“増収増益”を確保した。好調の主な要因は、ネットワークカメラやドライブレコーダーなどIoTデバイスへの回線導入が着実に進んでいることにあるという。
同じ法人向け事業でも、他のMVNOを支援するMVNEサービス(IIJモバイルMVNOプラットフォームサービス)はやや厳しい状況にある。MVNEサービスの売上高は28億5000万円、提供回線数は104万2000件となった。前四半期と比べると、売上高は13億5000万円減(前年同期比では15億3000万円減)、回線数は5万7000件の純減という結果である。
MVNEサービスが大きな減収となった原因の1つは、大手携帯キャリアの「データ接続料」「音声卸料金」の値下げにある。仕入れ値が下がった分、MVNOに提供する際の提供価格(仕切り値)も見直したということである。しかし、同社の説明によると「他のキャリアに買収されたMVNOが、順次(当該キャリアのサービスに)巻き取られている」ことも減収原因となっているという。
IIJは、IIJmioを含むモバイル事業全体で年間約83億円の減収を見込んでおり、そのうち約53億9000万円がIIJmioにおける減収だという。第1四半期の実績は、前年度同期比で12億6000万円の減収となったが、現時点では想定の範囲内に収まっているとのことだ。
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