決算発表に合わせて、IIJは同日、報道関係者向けの決算説明会を開催した。以下に、記者と勝栄二郎社長との主なやりとりを掲載する。
MNOが提供するオンライン専用プランに対して、勝社長は公平な競争環境の整備を求めていく姿勢を示した。
―― NTTドコモなど大手キャリアが3月から4月にかけて携帯電話料金を値下げしましたが、IIJmioにはどのような影響がありましたか。「ahamo(アハモ)」「povo(ポヴォ)」「LINEMO(ラインモ)」といったオンライン専用プランへの転出はあったのでしょうか。
勝栄二郎社長 ギガプランの販売は非常に順調に推移しています。先ほど渡井(昭久)CFOからも説明があった通り、(既存契約者の)移行を含めて46万2300回線がギガプランとなって、そのうち7万8000回線が新規契約者です。
ahamoとかpovoなどと比べると、(ギガプランは)どちらかというと低容量が中心で、2GBや4GBが全体の8割を占めていることが違いです。唯一、最近ソフトバンクがLINEMOで低容量なプランを発表していますが、基本的に我々とはプラン(の設定)が違いますし、(データの繰り越しなど)付加価値的なサービスも提供していますので、(オンライン専用プランとは)“違う”サービスであるという認識です。
そうは言っても(オンライン専用プランは従来と比べて)非常に低価格ではあるので、(MNOからより安価なプランが今後も出るようであれば)公平な競争環境を強く求めていくつもりです。―― LINEMOのミニプランは、御社のギガプランの一部(2GBや4GB)と料金的に直接競合する設定だと思うのですが、足元(直近)では御社に何らかの影響はありますでしょうか。
勝社長 私たちのプランは5つの容量に分かれていることと、いろいろなオプションサービスを提供していることもあり、今の所は影響はないと考えています。ただ、基本的な考え方として、(大手キャリアとの)公平な競争環境を求めていきたいと思います。
勝社長は、菅義偉内閣総理大臣が「携帯料金は倍の負担減が可能」と発言したことを受けて、携帯電話料金のさらなる値下げが起こる可能性があると考えている。そこに、商機を見いだしてもいるようだ。
―― 法人向けモバイルサービスについて、昨年度から順調に成長していると思います。どのような取り組みが奏功したとお考えでしょうか。
勝社長 2つあると思います。1つは、「ライフサイクル機能(未稼働の回線の月額料金を抑える機能)」や「eSIM」のように、さまざまなサービスを提供していることです。もう1つ、(自社で交換用設備を持つ)「フルMVNO」のサービスを提供しているのも大きいです。
最近は、監視カメラを始めとしてIoTへのニーズが高まっていますが、クラウドシステムと組み合わせて提供できることはIIJの強みです。―― 今後、他のMVNOも法人事業に注力する可能性があります。今後の競争軸として、どのようなものが出てくると思いますか。
勝社長 これも2つあります。1つは、先ほど申し上げた法人ニーズです。工場や農業など、いろいろな場面でIoTデバイス(と組み合わせる通信やクラウドシステム)へのニーズが高まっています。
もう1つが、菅総理大臣や武田(総務)大臣も最近言っていることですが、さらに一段進んだ“低価格”が進みそうだということです。今まで、我々は他のMVNOから移行(転入)が多かったのですが、これからは“メインスマホ”として、大手キャリアからIIJmioへの移行も増えると期待しています。
IIJは、インターネットやWAN(広域ネットワーク)に関するインフラの構築や運営も手がけている。そのこともあり、半導体不足による事業への影響に関する質問も寄せられた。
―― 第1四半期は好調な滑り出しかと思いますが、他社では半導体不足による製品どの調達遅延が一部で発生しています。それも含めて、第2四半期以降に想定される(業績に悪影響を与えうる)懸念材料があれば教えてください。
勝社長 先ほども話した通り、全体的に「デジタル化」というトレンドが(社会で)進んでいます。業績はこれからも順調に伸びていくと見込んでいます。
半導体不足の件は非常に注視していて、メーカーとも密に連絡を取っている状況です。現時点では、(機械の)注文を前倒ししたり、別の設備に切り替えたりするなどといった対応を取っています。今後、半導体不足が長引くとどうなるかは分かりませんが、現時点では大きな影響は出ていません。
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