インターネットイニシアティブ(IIJ)が5月12日、2020年度の通期決算について説明した。
2020年度通期の売上は2130億円で前年比4.2%増、営業利益は142.5億円で前年比73.2%増。特に、企業のICT利活用拡大に伴う法人ストック売り上げの伸びが大きく貢献した。IIJは2022年に創業30周年を迎える。鈴木幸一会長は「来期は30年の節目になるので、社会をリードして、新しい市場を作りながらより大きな発展をしていきたい」と語った。
2021年度は、売上2260億円(前年比6.1%増)、営業利益175億円(前年比22.8%増)を見込んでいる。売上については、「IIJmio」で安価な新料金プラン「ギガプラン」を提供したことで約83億円の減収を見込んでいる。これはデータ料金の値下げに加え、音声付帯料が従来の700円から100円に低減したことが影響している。一方でキャリアに支払うデータ接続料や音声卸料金も低減しているため、「利益は昨年度(2020年度)水準を維持するレベルだと考えている」と渡井昭久CFOは説明する。
モバイル事業については、2021年3月末時点で総回線数は325.1万に上り、前年比で7.3%増加した。2020年度の総売上は475.2億円で前年比3.1%増、うちフルMVNOは21.7億円で前年比54.3%と大きく増加した。法人向け「IIJモバイル」の回線数は右肩上がりに増加しており、2021年3月時点で111万回線となった。特にフルMVNO事業が好調を維持しており、ネットワークカメラを活用した遠隔監視、食品業や工場などでのIoT事業も拡充しているという。
対して、個人向けのIIJmioは2020年度の各四半期で純減を繰り返しており、2021年3月時点で103.4万回線。渡井氏も「個人向けは競争環境が厳しいこともあり、契約は伸び悩んでいる」と振り返る。IIJmioでは4月1日からギガプランを提供しており、巻き返しを図る構え。
5月の連休明け時点でギガプランの契約数は約35万に上り、うち新規契約は約15%だという。旧プランのユーザーは5月1日から新プランに移行可能となったが、連休中に多くの旧プランユーザーがギガプランに移行したことが分かる。「少し旧プランからの移行が強く出ている」と渡井氏は話す。
2021年度中には旧プランから大半のユーザーがギガプランに移行するとともに、月数万規模で純増することを同社は想定している。ただし具体的な契約目標は公表していない。
ギガプランに先んじて、3月にNTTドコモが「ahamo」、KDDIが「povo」、ソフトバンクが「LINEMO」といったオンライン専用プランの提供を開始したが、これらのプランとは差別化できるとの考え。「ギガプランのお客さまはあまりデータを使わず、2GBや4GBあたりが中心。旧プランも3GB(プランの契約者)が多かった。そういったもの(低容量)に特化したマーケットに受かっている。他社からどれぐらい来たかの傾向はまだ分からないが、マーケットは分かれてきている」(渡井氏)とした。
ギガプランでも提供しているeSIMについては、「他の会社と一緒に使うと安くなるという裏技も語られているが、マニアックな人が使っている」と渡井氏。「eSIMの対応機種が多いわけではないので、端末の普及に伴って利用者が増えていくのでは」と期待を寄せた。
ドコモが低容量の領域でMVNOと提携する意向を示していることについては、「メリットがある形なら、ある程度対応していく考えているが、ドコモとアライアンスを組んでいくことは今のところ考えていない」(鈴木氏)とした。
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