MVNO業界に衝撃を与えたIIJmioの新料金プラン なぜここまで安くできたのか?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2021年02月27日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 UQ mobileやY!mobileに押され、苦戦を強いられていたMVNO。政府の意向を受け、2020年12月から大手キャリアがさらなる値下げに打って出る中、価格差が縮まり、売りである“格安”が打ち出しにくくなっていた。苦境に立たされていた格好のMVNOの業界団体は、総務省の有識者会議に要望書を提出。大手キャリアから回線を借りる際の接続料や音声卸の価格、基本使用料などの緊急見直しを求めた。金額の算出が適正かどうかのチェックも、MVNO側の要望の1つだ。

 こうした動きと並行して、回線を貸し出す際の各種料金は値下げが進んでいる。音声卸の代わりに、交換機側でプレフィックスを自動で付与する接続方式を大手3キャリアが提供する他、将来原価として提示されているデータ通信の接続料を見ても、4月以降は一段下がる予定だ。2020年12月に新料金プランを発表した日本通信を皮切りに、2021年1月から大手MVNOも続々と新料金プランを発表している。オプテージのmineoや、KDDI傘下のBIGLOBEモバイル、J:COM MOBILEなどが、これまでより一段安い料金を打ち出した。

 そんな中、楽天モバイルのMVNOを除くと実質的なシェア1位となるIIJが、IIJmioの新料金プランである「ギガプラン」を発表した。ギガプランは2GBから20GBまで5段階に料金が分かれており、最安の2GBプランは音声通話付きで780円(税別、以下同)。大手キャリアはもちろん、他のMVNOの新料金プランを大きく下回る金額が話題を集めた。さらに、データ通信のみのeSIMだと、料金は2GBで400円まで下がる。では、なぜIIJがここまで低価格な料金を打ち出せたのか。その理由を読み解いていきたい。

IIJmio IIJmioが新料金プランのギガプランを発表した。料金は、2GBで780円から

料金値下げしつつ容量も改定、前倒しで導入したギガプラン

 ギガプランと銘打たれたIIJmioの新料金プランは、単なる値下げではない。データ容量やデータシェアの仕組み、さらには速度制限時の通信速度や対応する通信方式の世代まで変わっており、全面改定と言っても過言ではない中身だ。現行の料金プランは、データ容量が3GBの「ミニマムスタートプラン」、6GBの「ライトスタートプラン」、12GBの「ファミリーシェアプラン」の3つ。これを、2GB、4GB、8GB、15GB、20GBの5段階に改める。

IIJmio 現状の主力プランはミニマムスタートプラン、ライトスタートプラン、ファミリーシェアプランの主に3つ

 音声通話付きの場合、2GBは先に挙げたように780円。4GBは980円、8GBは1380円、15GBは1680円、20GBは1880円とリーズナブルな料金を打ち出している。現行のミニマムスタートプランは3GBで1600円だが、ギガプランで4GBプランを選べば、データ容量が1GB増えるとの同時に、料金も620円安くなる。1つ上の8GBプランを選んでも、3GBのミニマムスタートプランより維持費が安くなるのは驚きだ。より安価なプランを選んで節約してもよし、近い金額のプランを選んで容量を増やしてもよしと、選択に迷ってしまいそうな料金体系になっている。

IIJmio ギガプランは2GB、4GB、8GB、15GB、20GBの5種類。音声通話付きやSMS対応、データ通信専用などから選択できる

 大手キャリアやそのサブブランドはもちろん、直接的に競合する他のMVNOと比べても、IIJmioのギガプランは安い。例えば、2月に料金を改定したmineoの「マイピタ」は、音声通話付きの1GBプランが1180円で、IIJmioの2GBプランより容量が少なく価格が高い。5GBプランは1380円で、IIJmioの8GBプランと同額だが、データ容量が3GB少ない。中容量帯も同様で、全体の傾向としては、IIJmioの料金の方が安く、データ容量も多い。IIJ 執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏は、「来年、再来年にはMVNOの標準的な価格になっていると思うが、将来を予見して、積極的なプライシングができた」と自信をのぞかせる。

IIJmio 執行役員の矢吹氏は、これがMVNOの標準になると自信をのぞかせた

 現行プランとは、データ容量をシェアする仕組みも変更した。現状では、ミニマムスタートプランとライトスタートプランは最大2枚、ファミリーシェアプランは最大10枚のSIMカードを持つことができ、それぞれの料金プラン内でデータ容量をシェアできるが、ギガプランでは、SIMカード1枚につき1つのプランがひも付き、同一契約内でデータ容量を合算できるようになる。夫婦と子ども1人でそれぞれ8GB、8GB、2GBのプランを契約している場合、合計18GBを家族で利用できる。

IIJmio データ容量シェアは、SIMカードごとにつくデータ容量を合算する仕組みに変わった

 ギガプラン自体は4月に導入されるが、このデータ容量のシェアは、6月に提供が開始される予定だ。他のユーザーにデータ容量をプレゼントする機能や、5Gオプション、新アプリの導入、追加データ量の購入なども、全て6月を待つ必要がある。矢吹氏は「春商戦は意識したが、本来われわれのサービスは6月にリリースするという計画で、一部が4月に間に合わなかった」とその理由を打ち明ける。付加機能が2カ月強遅れるのではなく、ギガプランの導入を2カ月強前倒しにしたというわけだ。

IIJmio ギガプラン向けに用意された新機能の多くは、6月からの提供になる

 大手キャリアや他のMVNOも含め、値下げ競争が急激に激化しているのが、その背景だ。矢吹氏が「マーケットの事情や競合他社のことを考え、いち早く提供する必要があると判断し、この時期になった」と語っていることも、それを裏付ける。IIJmioと同様、オプテージのmineoも新料金の開始を前倒しにしたといい、MVNO各社が時計の針を早回しで進めざるを得なくなっていることがうかがえる。きっかけが、2020年12月に発表されたドコモのahamoだったことを踏まえると、“ahamoショック”が業界全体に波及したといえそうだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月12日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
  2. 庵野秀明、GACKT、ひろゆき、ドワンゴ川上らが集結 “カメラのいらないテレビ電話”をうたう新サービス「POPOPO」18日に発表へ (2026年03月11日)
  3. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  4. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  5. 自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート (2026年03月10日)
  6. 携帯キャリアの通信9サービス、総合満足度はpovoがトップ サブブランド勢が好調 MMDが調査 (2026年03月10日)
  7. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  8. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  9. 「Galaxy S26」シリーズはどこが安い? 一括価格と2年間の実質負担額を比較、お得なキャリアはココだ (2026年03月11日)
  10. どこでもウユニ塩湖? 3COINSで550円の「スマホ用反射ミラークリップ」を試す (2026年03月12日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年