MVNO業界に衝撃を与えたIIJmioの新料金プラン なぜここまで安くできたのか?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年02月27日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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コスト低下をダイレクトに反映させた価格設定、他のMVNOに影響も?

 IIJの新料金プランは、先に挙げた矢吹氏のコメントにある通り、「将来を予見したもの」だ。MNOから回線を借りる際の基本使用料や音声通話料、データ通信の接続料が値下げされる見通しを受け、料金の改定に踏み切った格好だ。その要因を分解していくと、次の通りになる。

 まず、音声通話対応SIMの場合、現状では基本使用料が1回線につき666円かかる(ドコモ回線で割引適用後、以下同)。IIJも、音声通話対応SIMには700円の基本使用料を設定しているが、これはMNOからの仕入れ原価に基づいたものだ。差額はIIJ側の利益になるが、音声通話対応のためにかかる追加のコストを考えれば、ほぼ原価でユーザーに提供しているといえる。音声通話が30秒20円なのは、卸価格として30秒14円をMNOに支払っているからだ。

IIJmio ドコモがMVNO向けに提示している音声通話利用時の基本料。正価は1回線ごとに1486円かかるが、割引を適用すると666円に下がる

 この基本使用料や卸価格は、大手3キャリアとも大幅に値下げする方針。正式な価格はまだ開示されていないが、「音声通話とデータ通信の基本使用料の値差は、かなり縮まってきている」(MVNO事業部 ビジネス開発部 担当部長 佐々木太志氏)。音声通話対応プランとデータ通信専用プランの価格差は100円で、「これがそのまま仕入れ値というわけではないが、社会情勢に鑑みながら予測値を出した」(亀井氏)という。この時点で、600円程度の値下げが実現する。現行のライトスタートプランをそのまま値下げしたと仮定すると、料金は3GBで1000円になる。

IIJmio IIJの佐々木氏は、基本使用料は大きく下がる見通しだと語った

 一方で、ギガプランは音声通話対応で4GB、980円。MNOから回線を借りる際の基本料が値下がりしただけでは、この価格で提供できない。1GB、データ量が増えているからだ。データ容量には、接続料の値下げが反映されているとみていいだろう。ドコモが開示している接続料は、2020年度が10Mbpsあたり41万4368円。将来原価方式で予測値も記載されるようになり、2021年度はこれが33万2114円、2022年度は27万9247円に下がる見通しも示されている。2020年度から2021年度にかけては、2割程度接続料が下がるというわけだ。2020年度と2022年度の比較では、3割強になる。

IIJmio 接続料は、2021年度と2022年度に下がる見通し。2020年度は10Mbpsあたり41万4368円だ

 値下がりした分IIJが帯域を増強すれば、今の品質を維持したまま、ユーザーに付与するデータ容量を増やせることになる。ただ、2割程度、接続料が下がっただけだと、データ容量を増やしてトラフィックが増えた分は吸収できない。そのため、IIJでは「現在の競争環境や接続料を巡る社会情勢を考え、私たちなりの価格を設定した」(亀井氏)という。「MNOから提示される接続料を待った上で考えたいところはあったが、それを待つと、プランの検討が遅くなりすぎる」(同)からだ。確度の高い予想を立てることで、見切り発車したというわけだ。

 ただし、音声通話料や音声通話の仕組みは従来のままで、通話料は30秒20円。中継電話サービスの「みおふぉんダイアル」を使うと、30秒10円まで下がるものの、専用アプリで発信する必要がある。音声通話定額もみおふぉんダイアル経由のみで、3分600円と10分830円の2種類。完全通話定額は提供されていない。「音声(卸)は見直しが検討されているが、そちらを反映したものではない」(亀井氏)といい、今後の導入が待たれる。

 予測を交えながらコスト低下分をダイレクトに料金プランへと反映させた格好で、大手キャリアとの価格差もしっかりついている。混雑時に極端な品質が低下するようなことがなければ、ユーザーの支持を集めそうだ。大手MVNOでは、NTTコミュニケーションズのOCN モバイル ONEや、ソニーネットワークコミュニケーションズのnuroモバイルが、まだ料金を改定していない。価格のインパクトが大きかっただけに、既に新料金を導入済みのmineoなども含め、他のMVNOの出方にも影響を与えそうだ。

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