IIJmio「ギガプラン」の狙いを聞く 通信品質はどうなる? eSIMの音声サービスは?MVNOに聞く(1/4 ページ)

» 2021年03月19日 13時43分 公開
[石野純也ITmedia]

 大手キャリアの値下げに対抗する形で導入されたIIJmioの「ギガプラン」は、その安さが衝撃を与えた。先行して新料金プランを導入していた他社を大きく下回り、MVNOとしての“意地”を見せた格好だ。料金は、データ量が最も少ない2GBプランで780円(税別、以下同)。現行プランのミニマムスタートプランと比べると、データ容量は1GB少なくなるが、料金は820円も下がる。

 eSIMをメインの料金プランの中に組み込んだのも、ギガプランの特徴だ。フルMVNOにいち早く参入し、eSIMの展開も早かったIIJだが、これまでは通常のSIMカードとは料金体系が別々だった。eSIMはデータ通信のみで、音声通話契約はできないが、料金はSIMカードを発行する場合のデータ通信専用プランよりさらに安く、2GBの価格はわずか400円。最大容量の20GBプランでも、1500円と激安価格を打ち出している。

IIJmio 音声SIMは月額780円からという低料金を実現したIIJmioの「ギガプラン」

 では、IIJはなぜここまで大胆な値下げに踏み切ることができたのか。同社でMVNO事業を統括する、執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏、MVNO事業部 コンシューマーサービス部長の亀井正浩氏、MVNO事業部 ビジネス開発部 担当部長の佐々木太志氏の3人に、ギガプラン導入の狙いを聞いた。

20GBを入れるかどうかは最後まで意見が割れた

IIJmio 執行役員 MVNO事業部長の矢吹重雄氏

―― ギガプランを導入した経緯を、改めて教えてください。

矢吹氏 もともと、料金を改定するという話はありました。eSIMをシェアしたいという意見が多く、それは1つのテーマでした。ただ、eSIMだけをシェアにするとなるとなかなか複雑なので、思い切って全料金をガラッと変える必要があると考え、結果的に変えることにしています。2020年の6月には、最終的な価格以外の部分まではできていました。

―― データ容量も、今のような区切りだったのでしょうか。

矢吹氏 当時は、ちょっと少なかったですね。ただ、それだと既存ユーザーの解約がどうしても出てきてしまいそうだったので、そこをどう減らすのかも1つのテーマとしてありました。試行錯誤しながらできたのが、あの料金です。特に20GBのところは、最後の最後まで意見が割れていました。

―― それは、MVNOだとあまり使われないからということでしょうか。

矢吹氏 はい。確かにそんなに必要なのか、という意見はありました。

―― ですが、最終的には料金プランの1つになっています。これはなぜでしょうか。

矢吹氏 (ahamoなどの登場で)市場のベンチマークになっていたのはありますが、どちらかと言うと、社内に2人だけ20GBを使っていた人がいたことが大きいですね(笑)。

―― その2人のためですか(笑)。

矢吹氏 自分たちが使いたいためのものという意味ではそうですね。

佐々木氏 (現行プランの)ファミリーシェアプランも僕が欲しかったから作ったようなものでしたから(笑)。

今までと違うものにすることは早い段階から決めていた

―― 発表会では、自分たちが使いたいプランという原点に立ち返って料金プランを作ったというお話がありましたが、20GB以外のデータ容量もそうでしょうか。

矢吹氏 統計的にIIJmioは3GBのミニマムスタートプランが多いというデータがあり、分布を見ると、2GBと4GBはいい線を突いていると思います。同じく、ライトスタートプランの6GBを考えると、4GBと8GBは悪くない選択肢としてあります。ここは仮説と検証を繰り返しました。

 例えば、4GBプランは、クーポンがどのぐらいで使い切られて、我慢している人がどれだけいるのかを考え、3GBでは足りないということで考えたものです。3GBのままでいいという話も当然ありましたが、既存プランを大幅にテコ入れするのが困難で、新プランを出すのであれば、3GB、6GB、12GBは混乱を招きます。今までとは違うものにするというのは、早い段階で決めていました。

亀井氏 同じデータ容量にして、何月何日以前と以降で分けてしまうと、絶対に伝わらない上に、誤解を与えてしまいます。申し込みの日を起点に同じプランでデータ容量を分けるのはやめた方がいいというご指摘をいただきました。

矢吹氏 販売店である家電量販店の意見も取り入れています。

IIJmio ギガプランの料金。既存のプランとはデータ容量も大きく変えている

卸価格や接続料を予測して料金を設定した

IIJmio MVNO事業部 コンシューマーサービス部長の亀井正浩氏

―― 金額ですが、こちらが予想していたよりもかなり安かった印象があります。特に音声通話対応の料金が非常にリーズナブルでした。

亀井氏 音声のユーザーにファーストスマホとして使っていただけるよう、分かりやすく魅力ある価格で訴求したいという思いがありました。逆に、データ専用やSMS対応SIMの料金は、後付けでこれぐらいという価格になっています。渉外チームがキャリアと話をしたり、MVNO委員会の一員として活動したりする中、総務省でこれだけの話がされていれば、これだけの価格(卸価格や接続料)になるという予測を出しました。

 それをしたことで、ここまで攻めていくことが明確になりました。2GBで780円は僕らも頑張った気はしていますが、2年、3年たてば、きっと(他社も)これに並んで落ち着くだろうというものを作っています。20GBの1880円は割と決めやすかったのですが、2GBは当然楽天モバイルの発表も踏まえています。4GBで(楽天モバイルの1GB超3GB以下の980円に)並び、2GBで下をくぐるようになっています。これは、1GB以下を無料にする発表の前から考えていました。

矢吹氏 音声プランについては、データ容量と価格を見ると、確かにちょっと下げすぎたかもしれませんが、品質という問題が1つ残ります。この3つの掛け算で言えば、品質とデータ容量、価格の3つは十分適正だと思っています。

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