―― 接続料の金額は同じだと思いますが、eSIMだけ価格設定が通常の料金より安くなっています。これはなぜでしょうか。
亀井氏 サブ回線でちゃんと使っていただくためには、訴求しやすい価格である必要がありました。eSIMのよさを分かっていただき、そこからシェアで他の回線もMNPで入っていただけるのであれば、“見せ球”としてアリありということであの価格になっています。
―― つまり、宣伝のため、意図的に安くしているということですね。
亀井氏 そうなります。
―― ちなみに、先ほどお話に出てきた楽天モバイルを主回線にすると、合計3GBが400円で使えて、通話もRakuten Linkならかけ放題になってしまいます。これは狙ったのでしょうか(笑)。
亀井氏 それでeSIMが広がってくれれば助かりますが、計画していたかと言われれば、全然そんなことはありません。
矢吹氏 われわれとしては、1回線目もIIJmioにしていただきたいので、そういう戦略は考えていませんでした。
―― 音声プランに関しては値下げ幅が大きいと思いますが、こちらの背景を伺えますか。やはり基本料が大きかったのでしょうか。
佐々木氏 今、この瞬間は666円ですが、ここをいかに下げていくかになります。最終的に、プレフィックス(の自動付与機能による音声接続)に行くかどうかですが、行かないのであれば、卸価格をどう下げていくのか。これは、われわれ側でも早急にコスト低減を考えていかなければなりません。ただし、有識者会議での結論はほぼ出ていますし、(音声接続の)約款も出ています。
―― 過去には、接続料の見込みが外れて業績を下方修正したこともありますが、今回は、その心配はないのでしょうか。
佐々木氏 接続会計の読み方は、トラフィックの需要をどう考えたらいいのかになりますが、以前はMNOから出てきた数字が上がるか、下がるかを予測し、事後でチェックをしていたところがあります。先の下方修正以来、情報収集能力や分析能力はかなり高まっていますし、MNOからも将来原価方式で予測をもらえるようになりました。総務省の指導が出たことで、MNOにもプレッシャーがかかっています。僕ら自身のスキルもありますし、社会情勢も変わっている。下方修正したときより、予測は立てやすくなっています。
矢吹氏 アクション・プランで期間を区切ってここまで下げるという話が、1つのリスクヘッジになっています。3年後にそうなると考えると、(仮に外れても)今年(2021年)か来年(2022年)かだけの話で、リスクマネジメントはしやすい。従来以上に精度が上がっていることに加えて、こういった事情もあります。
―― なるほど。先ほど矢吹さんは品質面のお話をされていましたが、データ容量が増えるとなると、それに応じてトラフィックも増えていくと思います。混雑時の通信速度は、どうなっていくのでしょうか。
矢吹氏 基本的には、今までより改善したいということで設計しています。どこまで改善できるのかはこれからですが、下がるような設計にはなっていません。上げていくのはわれわれの努力です。現時点で最終的な音声卸の料金や接続料が確定していないので、言いにくいのですが、品質改善を目指すべく設計していますし、それを目指す運営もしています。
佐々木氏 足元を見ると、コロナ禍でトラフィックは平滑化してきています。ご自宅でテレワークをしている方が昼休みに使わなくなっただけでなく、以前は夕方6時から8時がストレスフルでしたが、通勤、通学時のトラフィックも激減しています。もちろん、僕らの取り組みの効果も一定程度はあり、昔に比べるとひどい状況にはなっていません。コロナの影響は一過性の話かもしれないので、来年(2022年)、再来年(2023年)にどうするかという話はありますが、逆に、アクション・プランでドラスチックに接続料が下がる可能性もあります。トラフィックに関しては若干の追い風もあり、接続料は下がっていくので、われわれとしては料金の値下げだけでなく、きちんと体感の向上につなげていきたいと思います。
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