菅義偉首相が自民党総裁選への出馬を断念したことで、通信各社の株価が上昇している。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年9月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
確かに通信各社はこの1年、菅政権に苦しめられてきた。実際、値下げ要因で、KDDIとソフトバンクは年間600〜700億円、NTTドコモは年間2500億円規模の影響が出るとされている。
菅首相は雑誌のインタビューで「さらなる値下げ圧力」を予告していただけに、退陣に追い込まれたことは通信各社にとっては朗報だろう。
菅首相がいなくなるからといって、さすがに、すぐに値上げに踏み切ることは考えにくい。単に20GB3000円以下のプランを20GB4000程度に値上げしては、わかりやすすぎてユーザーの反発を買うのは間違いない。
ただ、長期的な視点で俯瞰すると、通信各社はどこかのタイミングで値上げというか、料金改定を行い、収益を確保しようと動き出すのではないか。
そのタイミングとして考えられるのが2年後の2023年あたりだ。
エリクソンの試算では、北東アジアにおいて、スマートフォンユーザーの平均トラフィックは、2020年、11.1GBとされていた。これが2022年から2023年には20GBを超えると予想している。
今年3月、3キャリアで20GB、3000円以下のオンラン専用プランがスタートしたが、2年後には20GBで足りなくなるユーザーが増えてくるというわけだ。その声に応える形で、料金プランを改定するという流れが出ることが予想できる。
30GB4000円程度という料金プランを新設すれば、値上げという印象は少ない。ユーザーが新しいプランに切り替えれば、ユーザーの通信料金に対する負担は増すことになる。
KDDIの高橋誠社長は直近の決算会見で「4Gスマホから5Gスマホに乗り換えると、トラフィックが倍増する」と語っていた。2020年に11.1GBという平均トラフィックが2023年には20GBを超えるというのは、5Gスマホの普及やネットワークの広がりによって、現実味のある予想と言えるだろう。
コロナが落ち着き、外に出られるようになると、街中のカフェや出先でテレワークをする機会も増えるだろう。ビデオ会議をすれば1時間で1GBを消費することも珍しくない。
菅政権で通信各社の収益は一時的に落ち込んだが、政権が変わり、5Gスマホが普及することで今後、通信料収入の回復が見込まれるのではないだろうか。
© DWANGO Co., Ltd.