一方、アップデートしたくてもできない人の場合は、自分が持っている機種がOSアップデートの対象外となってしまったことが主な要因である。とりわけメジャーアップデートがなされる際は、機能を増やすことでハードウェアに求められる性能も高まってくることから、性能が低い古い機種をアップデートの対象外とすることは少なくない。
実際、iOS 15.1に対応するiPhoneは、最も古い機種で2015年発売の「iPhone 6s」シリーズまでとなっており、それ以前の「iPhone 6」シリーズなどはアップデートの対象外だ。iPhone 6とiPhone 6sは見た目に大きな違いはないものの、ハードウェア性能の違いからアップデートの可否が分かれている。
だがiPhoneはかなり古い機種まで継続してOSアップデートが提供される方であり、Androidスマートフォンはそこまで長期間のアップデートは提供されないことがほとんどだ。実際、Googleが提供する「Pixel」シリーズでも、OSのアップデート保証期間は基本的に米国での発売から「少なくとも3年間」とされている。
またAndroid端末の場合、ハードウェアの性能がそれなりにあるにもかかわらず、OSアップデートがなされなくなるケースもある。その理由はソフトウェアによるところが大きい。
特にOSのメジャーアップデートがなされると、インタフェースが大きく変わったり、新しい機能が増えた代わりにあまり必要ではない機能が省かれたりするなど、内部的に大きな変化が起きることが多い。一方でAndroidスマートフォンを開発するメーカーは、自社独自のホーム画面やアプリなどを搭載していることが多く、アップデートを提供するには自社製のアプリを新しいOSで正しく動作するよう修正しなければならない。
ゆえにそうした修正にかかる手間やコストと、「このスマートフォンはユーザーが何年使うか」という製品寿命のバランスを考慮して、OSアップデートを提供しないという選択を取る場合もあるわけだ。
もっとも、最近ではスマートフォンの買い替えサイクルが長くなり、それに伴ってOSアップデートの重要性が高まっていることから、メーカー側が一定年数のOSアップデートを保証するケースもいくつか見られるようになってきた。またアップデートのしやすさを意識してか、その障壁となる独自アプリを減らし、素のAndroidに近い状態で提供するメーカーも増えている。
ちなみに機種によっては、海外で販売されている同じモデルでは既にOSアップデートが提供されているのに、国内向けのモデルはアップデートが遅れる、あるいは提供されないケースも時折見られる。しかもそうしたケースが起きやすいのは、キャリアが販売しているモデルであることが多い。
その理由は、キャリアが販売するスマートフォンが一部を除いて“キャリアの製品”という扱いとなるため、OSをアップデートするか否かを判断するのはキャリア側となるからだ。キャリアが販売するスマートフォンにはキャリア独自のアプリが搭載されていることも多く、それらの修正にかかるコストなども考慮した上でアップデートの判断がなされることから、海外のモデルとはアップデートに違いが生じやすいのである。
スマートフォンは生活必需品でありながらコンピュータでもあり、常に進化が求められていること、そして常にセキュリティの脅威にさらされていることを考えると、OSアップデートの問題を避けて通ることはできない。それだけにユーザーの側も、OSのアップデートを見越した機種選びが求められるようになってきているのは確かだ。
だからといって、必ずしも長期間OSアップデートができる機種を選ばなければいけないのかというと、そうではない。例えば最近では2万円前後で購入できる非常に安価なスマートフォンも増えているが、メーカー側にかかるコストも考慮すると、そうした機種はOSのメジャーアップデートができる回数が1回、あるいはゼロという可能性も高い。
だがもともとの価格が安いことから、短期間で新しい機種に買い替えていけばアップデートを気にすることなく常に新しいOSを利用できることにもなる。自分のスマートフォンの使い方や買い替えサイクルなどを考慮しながら、OSアップデートとの付き合い方を考えていくのがいいだろう。
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