海外では携帯電話やスマホの「バンド縛り」はある? 総務省が調査(1/2 ページ)

» 2022年04月01日 20時45分 公開
[井上翔ITmedia]

 総務省は4月1日、電気通信市場検証会議に付属する会議体「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の第27回会合を開催した。この会合では、今後の会合において議論される予定の携帯電話端末における対応周波数帯(Band)の制限について、同省による調査結果が公表された。

【更新:4月3日】「海外で対応Band問題はある?」の文章の一部を分かりやすく改めました

なぜ端末の対応Bandに関する議論をするのか?(おさらい)

 携帯電話の通信は電波を使って行われる。携帯電話端末が対応する通信規格やBandは、メーカーが投入先の国/地域やキャリアを考慮しつつ決定している。

 AppleのiPhoneシリーズは、投入先の国/地域やキャリアによって複数モデルを用意しているが、世界の各地域で使われている主要なBandにおおむね対応している。

 一方で、さまざまなメーカーが開発/製造しているAndroid端末は、投入先の国/地域やキャリアに“特化”する傾向にある。そのため、投入先以外の国/地域やキャリアで使うと、通信できるエリアが限られたり通信速度が低下したりするといった問題が生じやすい。

 これは日本でも同様で、キャリアが発売したAndroidスマートフォンを当該キャリア以外で使うと通信できるエリアが限られたり通信速度が低下したりすることがある。対応Bandをよく見てみると、各キャリアの800MHz/900MHz帯(いわゆる「プラチナバンド」)に対応していないケースが多い。キャリアにもよるが、プラチナバンドはLTE通信サービスにおけるメインBand、あるいはエリアカバー拡大用Bandとして運用される傾向にある。使えるか使えないかは通信の快適差に直結しやすい。

 そのこともあり「対応Bandの制限が、SIMロックに代わる“縛り”(キャリアを乗り換える際の障壁)になっているのではないか?」という指摘がある。そこで競争ルールの検証に関するWGで議論されることになったのである。

Band一覧 日本の携帯電話事業者が利用しているBandの一覧(BWA用帯域を除く)(総務省資料より、PDF形式)
Band一覧 日本国内で販売されている主要なスマートフォンにおける対応Band(LTEその1)(総務省資料より、PDF形式)
Band一覧 日本国内で販売されている主要なスマートフォンにおける対応Band(LTEその2)(総務省資料より、PDF形式)
Band一覧 日本国内で販売されている主要なスマートフォンにおける対応Band(LTEその3)(総務省資料より、PDF形式)
Band一覧 日本国内で販売されている主要なスマートフォンにおける対応Band(5G NRその1)(総務省資料より、PDF形式)
Band一覧 日本国内で販売されている主要なスマートフォンにおける対応Band(5G NRその2)(総務省資料より、PDF形式)

海外で対応Band問題はある?

 それでは、海外において対応Bandによる縛りはあるのだろうか。総務省では在外公館を通して米国、イギリス、フランス、ドイツ、韓国とEU(ヨーロッパ連合)における携帯電話端末の対応Bandに関する状況を調査を行った。

 調査によると、米国以外の国(地域)ではキャリアが販売している端末は各キャリアの全てあるいは主要なBandには対応しているという。ただし、対応Bandに関連しそうな法的措置(規制)を課しているのは韓国のみである。

 もっとも、韓国における法的措置は全キャリアの主要Bandに対応することを義務付けるものではない。簡単にいうと特に認められた端末を除いて、SIMカード(USIMカード/UIMカード)と端末の相互運用性を必ず確保することを求める規定を定めている。この規定を満たすために、結果的に他キャリアが利用するBandにも対応することになったということのようだ。

各国の状況 総務省が在外公館を通して5カ国(+EU)の対応Bandに関する状況を聴取した結果。米国以外では、他キャリアの使っている全てあるいは主要なBandに対応する端末を販売しているという。ただし、韓国以外の国/地域では本件に関する法的措置は特に取っていない(総務省資料より、PDF形式)
韓国の状況 法的措置を取っている韓国でも、定めているのは「対応Bandに関する義務」ではなく「USIMと端末の相互運用性を確保する義務」である。ただし、この義務が結果的に、各キャリアの専売モデルであっても全キャリアの全Bandに対応する結果につながっていることも事実ではある(総務省資料より、PDF形式)

 一方、米国では他キャリアのBandに対応しない端末が“普通に”販売されている。ただし、対応Bandに関する議論がなかったわけではないようだ。

 米国では、700MHz帯のLTEにおいて「Band 12」と「Band 17」を運用している。Band 12はT-Mobile USの他、中小キャリアにも割り当てられている。一方で、Band 17はAT&Tに割り当てられている。この割り当てには、いわゆる「電波オークション」が利用されたという。

 Band 12はBand 17と同じ周波数帯を含んでいる。そのため、Band 12に対応する端末は対策を講じればBand 17でも通信できる。しかし、Band 17にしか対応しない端末はBand 12では通信できない

 「端末メーカーが販売数の見込めるAT&T向け端末(≒Band 17にのみ対応する端末)の開発に注力して、Band 12に対応する端末が少なくなるのではないか」と危機感を抱いた中小キャリアは、消費者団体と共に「Interoperability Alliance(相互運用性アライアンス)」という団体を結成し、規制当局であるFCC(米国連邦通信委員会)に対応を求めた。

 その結果、FCCは端末におけるBand 12とBand 17の相互運用性確保を義務付ける規則の検討に入った。それを受けて2013年9月、AT&Tを含む大手キャリアが“自主的な”取り組みとして端末におけるBand 12への対応(=相互運用性の確保)を進めることをFCCに確約した。最終的に、FCCは2017年10月に規則の改正を採択している。

米国の状況 米国では、他キャリアのBandに対応しないスマホが普通に売られている。なお、日本と同様に米国にもSIMロックの解除は法的な義務がある(総務省資料より、PDF形式)
韓国と米国 韓国や米国ではSIMカードや端末の相互運用性に関する議論が起こったことがある(総務省資料より、PDF形式)
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