「スマホ不振、ソリューション好調」のHuaweiが繰り出す次の一手は?山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)

» 2022年04月15日 06時00分 公開
[山根康宏ITmedia]

 2022年3月28日、Huaweiは2021年のアニュアルレポートを発表した。米国政府の制裁の影響により事業全体が困難な道を歩んでいるが、18年ぶりの減収となりながらも利益は増加した。

Huawei 18年ぶりの減収となったHuawei

コンシューマー事業は49.6%の大幅減

 発表会ではカナダで2018年12月に逮捕され、2021年9月まで拘束を受けたのち解放され、2021年復帰したCFOの孟晩舟(Meng Wanzhou)氏が登壇。同氏が公の場に姿を現せたのは解放後初めてのことだ。Huaweiの2021年決算は売り上げが前年比29%減となる6368億元(約12兆2664億円)。Huaweiの3大事業ごとに見ると、通信インフラ関連が7%マイナスの2815億元(約5兆4270円)、エンタープライズソリューションが2.1%増の1024億元(約1兆9742円)、そしてスマートフォンなどのコンシューマー事業は49.6%と大幅減の2434億元(約4兆6926円)だった。

Huawei 孟晩舟CFO

 各事業の売り上げに占める割合は45%、16%、39%。2020年を振り返るとそれぞれ3026億元、1003億元、4829億元であり、34%、11%、55%だった。Huaweiの売り上げはコンシューマービジネスが特に高く、3部門を均等化させることで成長を進めていく戦略を目指していたが、2021年度は図らずもコンシューマー事業の突出はなくなった。

Huawei エンタープライズソリューションは全体の16%ながら、3部門で唯一増収だった

 18年ぶりの減益は同社の成長拡大路線にブレーキがかかった格好ではあるものの、ソリューション事業はクラウドビジネスなどが好調で、3事業の中で唯一増収となった。3本目の柱となる事業が逆風の中でも成長を示したことは、Huaweiにとって明るい材料だろう。また2021年の研究開発費は1427億元(約2兆7558円)と過去最高を記録。これは収益の22.4%にも達している。2020年と2021年は合計2万6000人の新卒者を採用したとのこと。

 Huaweiの技術力の高さは特許に現れており、IFI Claims Patent Servicesの調査によると、2021年の米国におけるHuaweiの特許取得数はIntelやAppleを抜いて5位。利益減にもかかわらず開発部門への投資は惜しまない姿勢を貫いている。

Huawei IFI Claims Patent Servicesによる2021年米国特許取得数

コンシューマー分野は「冬の時代を耐え抜く」

 とはいえ、気になるのはスマートフォンを含むコンシューマービジネス事業の今後の動向だろう。2021年12月にHuaweiは縦型の折りたたみスマートフォン「P50 Pocket」を発表したが、コンシューマービジネスグループのCEO、余承東(リチャード・ユー)氏は「冬の時代を耐え抜く」と語った。米国政府の制裁が解除されない限り、思うように新製品を投入することはできないのがHuaweiの現状である。

 Huaweiの通信関係の技術は業界でもトップクラスだが、インフラのみならず端末も開発することで技術力を高めてきた。現在のHuaweiは制裁の影響で5Gスマートフォンを自由に開発できず、特に子会社HiSiliconのKirinチップセットも製造ができないことで、AIや省電力といった次世代チップに必要な技術の革新にもブレーキがかかってしまっている。

Huawei 2021年12月にP50 Pocketを発表した余承東CEO

 スマートフォンのOSはAndroidから自社開発のHarmonyOSへの移行を進めており、タブレットやスマートウォッチ、さらにはスマート家電まで全てを同一OSでカバーする新しいエコシステムの構築を目指している。中国ではその戦略はうまくいっている一方、海外向けに販売されているP50 PocketはHarmonyOSではなく従来のAndroid+EMUIという組み合わせになっており、中国外への展開には苦心しているようだ。

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