対応バンドを増やすとスマホの価格はどうなる? 総務省の会合がMVNOと端末メーカーからのヒアリングを実施端末メーカーの情報は非公開(1/3 ページ)

» 2022年04月26日 13時45分 公開
[井上翔ITmedia]

 総務省は4月25日、電気通信市場検証会議に付属する会議体「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の第29回会合を開催した。今回は会議の前半において携帯電話端末の対応周波数帯(バンド)に関してテレコムサービス協会 MVNO委員会と端末メーカーからのヒアリング(意見聴取)を、後半は「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」の第39回会合との併催という扱いで、「電気通信事業方第27条の3」と販売代理店の取り扱いに関して大手キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)と全国携帯電話販売代理店協会からヒアリングを行った。

 この記事では、会合の前半で行われた対応バンドに関する議論について簡単にまとめる。なお、端末メーカーからのヒアリングについては、応じた会社の情報も含めて非公開となっている。

ヒアリング 会合前半に行われた、端末の対応バンドに関するヒアリングの進行に関する資料。ご覧の通り、端末メーカーに対するヒアリングは応じた会社の情報も含めて非公開とされた(総務省資料より)

韓国とオンラインショップ価格の差を調査

 前回の会合では、韓国では特定キャリアの専売モデルも含めて韓国のGalaxyシリーズは、全モデルが韓国の5G/LTE(4G)用バンドに完全対応しているという例が出された。これは同国の法規制が、全バンドへの対応を間接的に義務付けていることが影響した結果実現したものと思われる。

 この会合の質疑において、ある構成員から「韓国と日本の端末販売価格の差を比べてみたらどうか?」という提案があった。

 この提案を受けて、総務省は今回の会合で「対応周波数の違いによる端末価格の比較」という資料を作成して公開した。この資料では、日韓のキャリアが販売する端末の価格差を「Galaxy S21/S22/Zシリーズ」を使って、日本国内の価格差をソニーの「Xperiaシリーズ」を使って「比較」している。

Galaxyシリーズ:全バンド対応の韓国の方が安い……?

 日韓のキャリアにおける端末販売価格の調査では、日本ではNTTドコモとau(KDDI)、韓国ではSK Telecom(SKT)とKTの各2社のオンラインショップにおける各種値引き前の税込み価格を比較している。「1円=0.1015ウォン」で換算した場合、価格は以下の通りになったという。

  • Galaxy S21
    • NTTドコモ:9万9972円
    • au:9万1085円
    • SKT/KT:10万1490円
  • Galaxy S21+(NTTドコモは取り扱いなし)
    • au:10万6260円
    • SKT/KT:12万1699円
  • Galaxy S22
    • NTTドコモ:12万2012円
    • au:12万5030円
    • SKT/KT:10万1490円
  • Galaxy S22 Ultra
    • NTTドコモ:18万3744円
    • au:17万8820円
    • SKT/KT:14万7378円
  • Galaxy Z Flip3
    • NTTドコモ:14万8896円
    • au:12万8915円
    • SKT/KT:12万7281円
  • Galaxy Z Fold3
    • NTTドコモ:23万7600円
    • au:23万7565円
    • SKT/KT:20万2868円

 韓国における2キャリアが“同一価格”である理由は特に説明されていないものの、価格を見比べる限り前世代モデルは日本の方が手頃で、最新世代モデルは韓国の方が安い。この結果だけを見ると「全バンド対応している韓国よりも日本の方が割高!」と見えてしまいがちだ。

 しかし、この価格はあくまでもオンラインショップにおける小売価格であって、キャリア(販売者)が“上乗せ”する利益がどのくらいなのか分からない。また「全キャリアに対応する」といっても、韓国はキャリアごとに利用するバンドが大きくばらけていない上、一般の5Gネットワークにおいてミリ波(28GHz帯:n257)の利用がまだ始まっていないという違いがある(※1)。さらにいえば、日本では韓国を含む海外モデルにはない「おサイフケータイ(モバイルFeliCa)」対応や独自フォントの導入(※2)といった追加装備もある。

 求められるハードウェアを含めて、市場環境が異なる日本と韓国で端末の販売価格を比べるのは「正しい」ことなのかと言われると、疑問が残る。

(※1)今回の比較対象機種のうち、Galaxy S21、Galaxy S21+、Galaxy Z Flip3は日本向けモデルもミリ波非対応
(※2)Galaxyスマホの日本向けモデルは、可読性を高めた日本語フォントを独自に搭載している

Galaxyの比較 日本と韓国におけるGalaxyスマホの価格比較。単純に見ると韓国向けモデルの方が安いのだが、キャリアが上乗せする利益の幅や、実際に掛かっているコストは判然としない点い注意が必要である(総務省資料より)

Xperiaシリーズ:一見するとメーカーモデルの方が安いが……?

 国内の端末販売価格の調査では、大手キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク)のオンラインショップとメーカー直販サイト(ソニーストア)における「Xperia 5 II」「Xperia 1 III」「Xperia 5 III」の各種値引き前の税込み販売価格を比較している。結果は以下の通りだったという。

  • Xperia 5 II
    • NTTドコモ:なし(※3)
    • au:8万8140円
    • ソフトバンク:9万2880円
    • ソニー:7万9200円
  • Xperia 5 III
    • NTTドコモ:11万3526円
    • au:12万1405円
    • ソフトバンク:13万7520円
    • ソニー:11万4400円
  • Xperia 1 III
    • NTTドコモ:15万4440円
    • au:13万7540円
    • ソフトバンク:18万8640円
    • ソニー:14万9600円

(※3)調査時点で販売を終了していたため対象外

 一見するとデュアルSIMとDSDV(2回線分のVoLTEの同時待ち受け)にも対応しているメーカー(SIMフリー)モデルの方が安価だが、よく確かめてみると、キャリアモデルの方が手頃なケースもある。キャリアモデルの中では、ソフトバンク向けの価格が気になる。ドコモやauと比べて高価なのは、なぜなのだろうか……?

 各キャリアの主要バンドをおおむねカバーしていることと、内蔵ストレージの容量が2倍になっていることも踏まえると、メーカーモデルは手頃といえる。しかしFMラジオ受信機能とミリ波5G対応(Xperia 1 IIIのみ)はキャリアモデル限定の装備となっている。

 デュアルSIM対応を施しストレージを倍増する一方で、FMラジオ(とミリ波)を削って「平均価格から約1万円引き」という設定なら、見方によってはキャリアモデルの存在意義が大きく揺らぐ。ただしキャリアモデルの方がソフトウェア更新の頻度が多い傾向にあることを頭の片隅に置くと、メーカーモデルの方が「おトク」と言いきるのは難しい。

Xperiaシリーズ Xperiaのハイエンドモデルはメーカーモデルのおトク感が強い。しかし「FMラジオがない」「ソフトウェア更新の頻度が少なめ」「ミリ波非対応(Xperia 1 IIIのみ)」をどう捉えるかという問題がある(それだけに、端末のコスト構造がどうなっているのか知りたくもある)(総務省資料より)
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