携帯電話端末のバンドの問題は、大手携帯通信事業者(MNO)からネットワークを借り受けてサービスを提供するMVNOにも影響を与えうる。
例えば、そのMVNOが「キャリアA」からネットワークを借りている場合、キャリアAが販売したAndroidスマホであれば(少なくとも)電波的には過不足なく利用できる。しかし、キャリアA以外のキャリアが販売したAndroidスマホと組み合わせて使うと、端末の対応バンドによっては通信できるエリアが限られたり、通信できたとしてもスループット(実効通信速度)が低下したりする可能性がある。
そのことを踏まえて、今回の会合ではMVNOを代表してテレコムサービス協会(TELESA)のMVNO委員会からのヒアリングも実施された。
MVNO委員会は、MNOとのイコールフッティング(同等条件下の競争)の実現を求めており、その一環として同委員会はキャリアの乗り換えに掛かる「スイッチングコスト」を極力ゼロとすることを主張している。その観点に立つと、利用者が持っている端末がどのMNOのネットワークでも制限なく使えることが理想である。
しかし、MNOが販売する端末の多くは他キャリアが保有する一部バンド(特に800/900MHz帯のいわゆる「プラチナバンド」)に対応していない。これが「利用者の利便性」を低下させ、「心理的なスイッチングコスト」を引き上げているとMVNO委員会は指摘する。
前回の会合では、NTTドコモが端末の対応バンド情報を一元化して表示する提案を行った。MVNO委員会はMNO側からこのような提案が出てきたことを評価する一方で、対応バンドにまつわる問題を利用者が正しく理解することは困難ではないかと課題も指摘する。
そこで同委員会は、ドコモが提案する対応バンド情報の一元化に加えて、MNO各社の主要バンドへの対応を求めるガイドラインの策定と、ガイドラインを満たす端末へのマーク付与を提案する。マークの付いた端末を選べば、他のMNOはもちろん、他のMNOのネットワークを使うMVNOに乗り換えても安心、というわけである。
ただし、MVNO委員会も指摘しているが、対応バンドを“強制”してしまうと端末の開発/検証や製造にまつわるコストが増える可能性も否定できない。「どのキャリアでも使えるなら端末の価格が少し上がっても構わない」という人ばかりなら、コストを端末価格に転嫁(上乗せ)することも問題ない。しかし、本件については「端末の価格が上がるなら余計なこと(=他キャリアが使うバンドへの対応を強制すること)はしてほしくない」という意見も見受けられる。
そのことを踏まえてか、MVNO委員会は総務省に利害関係者(端末メーカー、MNO、MVNO、中古端末事業者)を交えた検討を進めるように訴えている。
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