4月25日、総務省の電気通信市場検証会議に付属する会議体「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の第29回会合において、携帯電話端末の対応周波数帯(バンド)に関する端末メーカーへのヒアリング(意見聴取)が行われた。
端末の研究/開発や製造に掛かるコストの情報は、メーカーの営業上の秘密に相当する。「キャリアの乗り換えにおいて端末の対応バンドが障壁になっている」という一部の声を受けてのヒアリングだったが、それに応じたメーカーの数と名称、提出資料などは一切“非公開”とされた。
……といっても、実際にどのような議論が行われたのか気になるという人もいるだろう。筆者は先日、とあるメーカーが開催したグループインタビューに参加した。メインテーマは「携帯電話端末の対応バンド」で、今回の会合で非公開とされた部分と重なる。参考として、このインタビューでの主なやりとりを体裁を整えて掲載する。
―― 総務省の有識者会議では、一部の有識者から「キャリアの値引きでコストを吸収できるのであれば、他キャリア向けのバンドにも対応すべきではないか」との意見が出ていました。もし全キャリアのバンドに対応する場合、そのコストはキャリアの値引きで吸収できる範囲で収まるものなのでしょうか。
メーカー (端末の開発や製造に関する)コストに影響することは間違いありませんが、キャリアの値引きで吸収できる額に収まるかどうかは分かりません。端末のコストは部品や機能によって変わる部分もあるので、バンド対応コスト“だけを”値引きで吸収できるかどうかという判断は難しいと思われます。
―― この会議では、韓国において全キャリアのバンドに対応することが(間接的ながら)法的に義務付けられていることも指摘されました。他国向けモデルと比べた際に、韓国における全バンドへの対応はどのくらいのコスト増につながっているのでしょうか。
メーカー (先に述べた通り)コストにはさまざまな要因があります。対応バンドだけでコストの上乗せは計算していません。
―― (事実上)日本でのみ使われているバンドの数は他国と比べて多いものなのでしょうか。その数の多さが対応の難しさにつながっていることはあるのでしょうか(※1)。
メーカー 日本独自のバンドに対応するためのリソースと部材の差分があることは事実です。ただし、そのこと自体は対応の難しさにつながってはいません。
(※1)筆者注:LTEにおけるBand 11/21(1.5GHz帯)など
―― 御社端末における「他キャリアバンド非対応」(※2)について、ある有識者が会合でキャリアに対して不満を訴えました。バンドの決定権がキャリアではなくメーカー側にあるのなら、御社としてそうした不満を抱くユーザーへの解決策をどう考えているのでしょうか。
メーカー キャリア間の流動性が高まる昨今、私たちメーカーとしては、今後の動向を注視していきたいと思います。
(※2)筆者注:このメーカーのスマホのキャリアA向けモデルはキャリアBの800MHz帯(Band 18/26)に、キャリアB向けモデルはキャリアAの800MHz帯(Band 19)に対応していないことを指す
―― メーカーによっては、大手キャリアの主要バンドに対応するモデルを「SIMフリーモデル」としてキャリアを介さずに販売している事例もあります。御社はこのような対応をしないのでしょうか。
メーカー 弊社では最近オープンマーケット向けモデルをリリースしています。(日本で販売する)端末の対応バンドについては、今後の検討とさせていただきます。
―― キャリア向けのモデルにおいて、他キャリアが利用するバンドに対応することを提案したことはありますか。
メーカー 具体的な交渉内容に関わる部分なので開示できません(※3)。
―― 他キャリアのバンドに対応した場合、掛かるコストはどのくらいで、端末販売価格にはどのくらい反映されるものなのでしょうか。
メーカー 対応した場合にコストが掛かることは事実ですが、(先に述べた通り)コストにはさまざまな要因があります。対応バンドによる価格への影響は分かりかねます。
―― 対応バンドの問題と並んで、(キャリア向けモデルでは)「デュアルSIMスロット」や「eSIM」への対応が問題視されることがあります。これらの搭載をキャリアに提案したことはありますか。コストはかかるものなのでしょうか。
メーカー 日本では提案したことがありません。コストへの具体的な影響は不明ですが、掛かることには違いありません。具体的な交渉内容は開示できません(※3)。
(※3)筆者注:他社との契約条件に関わることなので、自社の判断だけではコメントできない
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