続いて、Vice President, Business Development, Qualcomm France S.A.R.Lのフィリップ・ポジアンティ氏が登壇し、5Gにおけるミリ波のメリットと、そのユースケースについて説明した。
フィリップ氏によると、5Gのミリ波は帯域幅の広さ、世界中で採用されていること、技術が確立されていること、既に150以上の端末が存在しデバイスのエコシステムが成熟していること、そして費用対効果が高く早期にコスト回収できることなどから、既に「成熟したエコシステムと考えている」と説明。そのユースケースも広がりを見せつつあるという。
代表的な活用事例の1つは、デジタルデバイドの解消に向けたワイヤレスファイバーへの活用で、主に米国の農村部やオーストラリア、東南アジアなどで活用されているという。またミリ波は上りの通信速度が高速なことから、法人での活用も多くなされているとのことだ。
そこでフィリップ氏は、法人でのミリ波活用事例をいくつか紹介。イギリスの精密農業における事例では、センサーから情報を取得してクラウドに情報を送信、膨大なデータを分析して作物に合った水や肥料を調整している。ブラジルの事例では、サンパウロでのサンバカーニバルで撮影した高画質の映像を、モバイル通信事業者のクラウドを通じてアップロードし、テレビの視聴者にライブで届けるという取り組みを行っている。
そしてもう1つ、フランスのSNCF(フランス国有鉄道)の事例では、高速鉄道のTGVのメンテナンスに5Gのミリ波を用いている。列車に2台の5Gのミリ波に対応したセンサーを搭載し、従来手動で実施していた車両に関する大量のデータのアップロード作業を自動化しているとのことだ。
加えてフィリップ氏は、5Gのミリ波は混雑した場所での利用にもメリットがあると説明。ミッドバンドの場合、混雑した場所でのダウンロード速度が大幅に落ちやすいが、ミリ波であれば混雑した場所であっても、ミッドバンドにおける非混雑時と同じくらいのダウンロード速度を実現できるという。
そうしたことからスタジアムや駅、ショッピングモールなど、人が多く集まる場所でミリ波を活用すれば最高のユーザー体験を提供できるとフィリップ氏は話す。うまく収益化すれば年間の売り上げが3%伸ばせる上、2027年度には10%の成長が見込めるとしており、投資コスト回収の短さを考えても、ミッドバンドを使うよりもメリットがあるとしている。
最後にフィリップ氏は、日本における5Gミリ波のパフォーマンスの変化についても説明している。5G試験サービス時点の2019年4月と、商用サービスが始まりエリア整備も進んだ2022年4月の通信速度を比べた場合、ダウンロードのピーク速度が3年間で66%向上しているとのことだ。
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