世界を変える5G

5Gの普及には「ミリ波」が不可欠の理由 通信速度だけでないメリット、Qualcommが解説(1/2 ページ)

» 2022年06月09日 12時49分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 Qualcommは2022年6月8日にメディア向けラウンドテーブル「Qualcomm NOW」を開催。2022年5月9日より米国で実施されたイベント「Qualcomm 5G Summit」の内容をもとに、Qualcommの最新の取り組みと、同社が力を入れる5Gのミリ波の活用について説明した。

費用対効果が高いミリ波、官民での普及加速を求める

 クアルコムジャパンの代表社長である須永順子氏はまず、Qualcomm 5G Summitで同社が掲げた「コネクテッド・インテリジェント・エッジ」構想について説明。これはネットワークに常時接続する、AIを活用したエッジデバイス(端末)を示している。

Qualcomm Qualcommの最新の取り組みについて説明する、クアルコムジャパンの須永氏

 AI処理と聞くと、ビッグデータを活用した予兆の認知や判定などをイメージすることが多いが、端末のバッテリー寿命を伸ばすことや、ネットワークの異常検知、セキュリティの改善などにもAI処理は生かされているとのこと。そこでQualcommでは、5Gを核とした無線通信技術に加え、同社のSoC「Snapdragon」シリーズにAI技術を搭載することで、AI処理をエッジ側にも分散させ、クラウド中心のAIの概念を変えていきたいと須永氏は話す。

Qualcomm Qualcommが掲げる「コネクテッド・インテリジェント・エッジ」は、5GとAI機能を搭載した端末の活用で、クラウドとエッジのAIを分散・効率化を図る取り組みになる

 続いて須永氏は、Qualcommが力を入れている5Gのミリ波のメリットについて説明。ミリ波による5Gのネットワークは、国内では既に携帯4社が実用化しており、エリア構築を進めているが、端末についても国内外含め50以上のベンダーから、スマートフォンやモバイルWi-Fiルーター、PCに至るまで150以上の対応デバイスが登場している。

 また須永氏によると、ミリ波はモバイルネットワークの費用効率化と品質向上をもたらすとのこと。同社の試算によると、5Gの基地局投資のうち12%を、交通密度の高いエリアにおけるミリ波の整備に割り当てた場合、24%のユーザーがミリ波の恩恵を受けられる上、投資も5年未満で回収できるという。ミッドバンド(いわゆる「Sub-6」の周波数帯)で整備した場合は投資を回収するのに7〜8年程度かかることから、ミリ波の投資効率は非常に高いと須永氏は話している。

Qualcomm 5Gの投資を交通密度の高いミリ波に割り当てることで、より多くの人がその恩恵を受けられる上、投資コストも5年未満で回収できるとのこと

 しかも5Gのミリ波は今後も進化を遂げ、エッジデバイスやユースケースの開拓を後押しするものになるとのこと。実際、標準化団体「3GPP」の5G標準化仕様の最新版「Release 17」では「ミリ波がキーワード」と須永氏は話しており、Sub-6とミリ波のデュアルコネクティビティや、5Gのミリ波によるスタンドアロン(SA)運用、さらには71GHzという現在より高い周波数帯のサポートなど、ミリ波に関する機能強化がなされているという。

Qualcomm 3GPPのRelease 17ではミリ波、Sub-6のデュアルコネクティビティや、ミリ波単独でのSA運用対応、ミリ波に関する強化が多くなされているという

 さらに須永氏は、日本がBeyond 5Gや6Gでの競争力を拡大する上でも、5Gのポテンシャルを発揮できるミリ波を早期普及させることが不可欠であり、「5Gを制したものが6Gでもリーダーシップを取れると考えている」と話す。ただ現在は、携帯各社が5Gのエリアの拡大を優先し、広域をカバーしやすいSub-6の活用に重点を置いていることから、須永氏はミリ波の普及状況が「思わしいものではない」と、ミリ波の普及に向け官民一体での取り組む必要があると話している。

「Snapdragon X70」はAIとミリ波の両方に対応

 Qualcommが注力するそれら2つの要素を取り入れて開発しているものが、新しい5G対応モデム「Snapdragon X70」だ。Snapdragon X70は同社製5G対応モデムの5世代目に当たり、AIエンジンを搭載した初のモデム製品になるとのことで、AIの活用によりミリ波のカバー率を28%改善した他、Sub-6では車両で73%、歩行時は26%のスループット改善がなされているという。

Qualcomm 5Gのミリ波に加え、AI機能も搭載された「Snapdragon X70」。2022年末には搭載するデバイスが登場する見込みだ

 また、Snapdragon X70は5Gミリ波のSA運用に対応しており、4Gのアンカーが必要なくミリ波単体での通信が可能とのこと。Qualcomm 5G Summitではこのモデムを搭載した試験端末を用い、5Gのミリ波帯によるSA運用での通信試験をしたところ、ピーク時で下り8Gbpsもの通信速度を達成したという。

 加えて、Snapdragon X70では、新たに「Transmit 3.0」という技術を導入。セルラー通信だけでなくWi-FiやBluetoothの電力もダイナミックに制御することで、より信頼性の高い通信を実現できるとのことだ。

 須永氏はその他にも、5Gによる無線通信を固定ブロードバンドの代わりに利用する「ワイヤレスファイバー」や、5G対応ノートPC、コネクテッドカー、そしてメタバースなど、Qualcommが現在進めている製品や取り組みについても説明。メタバースに向けては1億ドル(約140億円)を投じて「Snapdragon Metaverse Fund」を立ち上げており、関連するスタートアップなどに向け積極的な投資を進めていくとのことだ。

Qualcomm Qualcommではメタバースに向けた取り組みも加速しており、ファンドを立ち上げ積極的な投資もしていくという
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