寺田稔総務大臣は9月2日、「電波法施行規則」「無線設備規則」「特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則」を一部改正する総務省令を公布し、即日施行した。この省令に合わせる形で、複数の総務省告示も行われている。これらにより、日本国内における「6GHz帯の無線LAN」と「自動車内における5.2GHz帯の無線LAN」の利用が“解禁”されることになる。
今回公布/施行された総務省令は、日本国内における「6GHz帯の無線LAN」と「自動車内における5.2GHz帯の無線LAN」の利用を可能とするために行われる。両方の経緯について、簡単に解説する。
現行において最新の無線LAN規格「IEEE 802.11ax」では、より高速な通信を実現するために6GHz帯の電波を利用することも想定されている。しかし、ほとんどの国/地域では6GHz帯を無線免許の取得を必要とする帯域(ライセンスバンド)として運用してきたため、その一部を免許取得が不要な帯域(アンライセンスバンド)とするための法的手続きが順次進められている。
日本では4月19日、総務省の情報通信審議会において6GHz帯の一部(5925〜6425MHz/500MHz幅)をアンライセンスバンド化し、無線LAN機器で利用するための技術的条件が取りまとめられた。
今回の総務省令が公布/施行されたことで、この技術的条件を満たすことを条件に、日本でも6GHz帯を利用する無線LAN機器の利用が“合法化”された。6GHz帯に対応する無線LAN機器は「Wi-Fi 6E」という名称で案内されることが多く、今後は日本でも「Wi-Fi 6E対応」をうたう無線LANルーター、PC、スマートフォンなどが順次登場するものと思われる。
なお、最近のPC、スマートフォンやタブレットの中には、ハードウェア的にはWi-Fi 6Eに対応している機種もある。この場合、ソフトウェア(またはファームウェア)の更新で利用できるようになる可能性もあるので、当該デバイスのメーカーに問い合わせてみてほしい。
5GHz帯の無線LAN(IEEE 802.11a/n/ax)は、もう少し細分化すると「5.2GHz帯(5150〜5250MHz)」「5.3GHz帯(5250〜5350MHz)」「5.6GHz帯(5470〜5725MHz)」の3つの帯域に分かれている。これらのうち、5.6GHz帯は航空機内を除く屋内外で利用可能である。一方で、5.2GHz帯と5.3GHz帯は一部が他用途の無線(主にレーダー)と重複するため、屋内でのみ利用が認められている。
最近は自動車内でも無線LANを使う機会が多くなってきている。しかし、自動車内は法令上「屋外」扱いとなるため、車内で無線LANを使うには2.4GHz帯か5.6GHz帯を用いる必要がある……のだが、これらの帯域は、動画視聴のように大容量かつ連続した通信をすると品質的に厳しい面もある。
そこで「自動車内でも5.2GHz帯の無線LANを利用できるようにしよう」という議論が世界的に進み、それを受けて日本でも情報通信審議会で技術的条件の検討が行われた。結果、3月22日に自動車内で5.2GHz帯の無線LANを利用する際の技術的条件が取りまとめられた。
今回の総務省令が公布/施行されたことで、この技術的条件を満たすことを条件に、日本でも自動車内で5.2GHz帯の無線LAN機器の利用が“合法化”された。なお、自動車内で使う場合は、以下の条件を全て満たす必要がある。
(※1)等価等方輻射(ふくしゃ)電力
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