欧州議会はEU圏内で販売されるスマートフォン、タブレット、カメラなどに共通充電規格(USB Type-C)の採用を義務付ける。
同法案は10年以上に渡って策定されてきたもので、2021年9月に欧州委員会が法案を提出していた。その後、暫定的な合意に至っていたが、10月4日(現地時間)の欧州議会本本会議での結果が賛成602票、反対13票、棄権8票となり、正式に義務化される。
正式に可決されたことで、メーカーは猶予期間を経て2024年末までにEU圏内で販売される下記端末に、USB Type-Cポートを装備させる必要がある。
ノートPCについては2026年春以降に同法案の対象となる。
名指しこそされていないが、AppleのLightningポートが標的になっているとの見方が強い同法案。狙いは「充電器やケーブルの無駄を省き、環境負担の軽減を目指す」ことだ。全ての機器で同じ充電器が使えるようになれば、消費者が充電器にかける費用を年間最大2億5000万ユーロ削減できるようになり、年間1万1000トンに相当する未使用充電器の破棄を削減できるという。
Lightningポートがいまだに採用されている製品はiPhoneだ。2022年9月発売のiPhone 14シリーズでもUSB Type-Cポートの搭載は見送られた。一方で同じApple製品としては2015年発売のMacBook、2018年発売のiPad ProからUSB Type-Cへの移行が進んだ。
AppleがLightningポートからUSB Type-Cポートへの完全移行に二の足を踏む理由の1つとして、「これまで周辺機器メーカーがMFi(Made for iPhone)認証取得のためにAppleへ支払っていたライセンス料にマイナスの影響を与えるからではないか?」との見方がある。Appleはこれまで「粗悪品の排除」を目的に周辺機器メーカーとのビジネスに取り組んできた経緯がある。
MFiの認証を取得した周辺機器なら、iOSのアップデート後も問題なく使い続けられることが保証されている点はよく知られているが、過去にはiPodやiPhone 4sまでの一部機種に採用されてきた30ピンコネクターからLightningポートに切り替わった際、MFiに参加する周辺機器メーカーは急ピッチでAppleが求める規格に合わせる必要があった。
仮にLightningからUSB Type-Cへの完全移行が決定したとしても、周辺機器メーカーにとっては再びAppleの厳しい要求に応えなければならなくなる。
しかもいまだにUSB PD非対応かつ5V1Aなど古い充電器でしか使えないUSB Type-Cも存在する。“見た目はUSB Type-Cといえど中身はMicro USBと変わらない”これらの規格を今後どうしていくのかも課題となっている。
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