auが黒部峡谷鉄道で“圏外”を解消 山岳地帯の狭小トンネルにどう挑んだ? 現地でチェック!(1/2 ページ)

» 2022年10月25日 07時00分 公開
[石井徹ITmedia]

 スマートフォンが“どこでもつながる”のは当たり前という状況になって久しい。しかし、スマホが圏外となる秘境は未だに存在する。そんな秘境の1つである富山県の黒部峡谷鉄道の全区間が、KDDIの手によって「au 4G LTE」のエリアとなった。

 KDDIは10月21日、黒部峡谷鉄道のエリア化に関する説明会を“現地”で開催した。道路すら通っていない場所もある中、この秘境をどうやってエリア化したのだろうか……?

黒部峡谷鉄道 黒部峡谷鉄道の車両

黒部峡谷鉄道について

 黒部峡谷鉄道は、黒部川沿いの山間の縫うように走る鉄道だ。ダム建設のための運搬用路線として大正時代に建設されたが、後に観光客を運ぶようになり、現在も「観光」と「運搬」という2つの役割を担っている。「ナローゲージ」と呼ばれる幅の狭いレールを採用している影響で、各車両の座席は横幅が2人分と狭く、テーマパークのアトラクションのような作りになっている。

 観光面では「トロッコ列車」が有名だ。宇奈月温泉駅を起点として、黒部ダム下流にある欅平(けやきだいら)駅までの約20.1kmの区間を1時間20分かけて走行する。22本の橋を渡り、41本のトンネルを駆け抜ける車窓からは、黒部峡谷の雄大な山並みを望める。路線上には4つの旅客駅があり、山中に点在する温泉や景勝地にアクセスできる。

 会社としての黒部峡谷鉄道は関西電力の完全子会社で、黒部川沿いのダムに人や資材などを運ぶ「関西電力専用列車」も数多く運行している。黒部川水系に沿って設置された水力発電所は、全て合わせると原子力発電所1基分にも及ぶ発電能力を有しているそうだ。

黒部峡谷鉄道 黒部川の峡谷に掛けられた多くの大きな橋とトンネルを駆け抜ける
黒部峡谷鉄道 トロッコ列車から望む黒部川の雄大な景観がこの路線の醍醐味だ
黒部峡谷鉄道 窓の無い車両からは、景色がよく見える。秋の紅葉シーズンには、一面が紅葉で彩られる

エリア化が難しい特殊事情

 観光路線として知名度が高い黒部峡谷鉄道だが、au 4G LTEでの全線エリア化は、他キャリアに先駆けて実施された“国内初”の事例となる。2018年以降、旅客扱いのある4駅は競合各社も含めて携帯電話のエリア化が実施された。しかし、駅間など路線の大部分は“圏外”が続いていた。

 その背景として、同線ならではの“困難さ”がある。まず、黒部峡谷鉄道は路線の大部分が川沿いの断崖絶壁を通っている。しかも、麓の宇奈月駅(※1)周辺を除くと沿線に人の住む集落が存在しない。終点の欅平駅付近に至っては、≪麓の集落と直通する道路すら通っていない。つまり、このトロッコ列車がないとたどり着けない“秘境”なのだ。

(※1)富山地方鉄道本線の宇奈月温泉駅から徒歩で5分ほどの距離にある

黒部峡谷鉄道 黒部峡谷鉄道の本来の役割は、黒部川沿いのダムや水力発電所への資材運搬である。そのため、工事関係者専用のみ乗降できる駅も6駅ある
黒部峡谷鉄道 現在も関西電力専用列車は多数運行されている。道路が通じておらず、列車がないと到達できない地点もある

 過酷な自然環境も、エリア化に当たっては障害となる。黒部峡谷鉄道の沿線は、冬季に積雪が多い。そのため、冬季は全線で運行休止となる。通信設備を設置するには、降り積もる雪に耐えられるようにしなければならない。沿線の一部は「中部山岳国立公園」の区域内にあるため、新たな通信設備を設置する場合は、事前に環境省から許可を得る必要もある。

 さらに、先述の通り、黒部峡谷鉄道はナローゲージであるため、トンネルの断面が非常に狭い。ゆえにトンネル内に通信設備を置くことも困難を極める。

黒部峡谷鉄道 ナローゲージの列車にあわせて掘削されたトンネルは小さく、すき間が無い構造となっている
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