世界を変える5G
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» 2021年07月03日 10時16分 公開

「鉄道路線5G化」で5Gエリアを急速に広げるKDDI “パケ止まり”対策でも先行石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

KDDIは東京の山手線全30駅および大阪の大阪環状線全19駅のホームに5Gの基地局を設置。同社は、利用者の導線に沿った5Gのエリア化を行っており、人口カバー率が90%に達する2021年度末までには、関東21路線、関西5路線に5Gを拡大していく予定だ。大手3社のエリア展開の方針を振り返りつつ、鉄道を中心に5Gのエリア化を進めるKDDIの狙いに迫る。

[石野純也ITmedia]

 大手キャリアが5Gのエリア展開を加速させている。NTTドコモは、衛星との干渉問題が起きない4.5GHz帯を中心に、出力を上げたマクロ局を展開。基地局数は、6月末時点で1万を突破した。対するKDDIやソフトバンクは、5G用の新周波数帯は3.7GHz帯が中心で、マクロでの調整が難しい一方で、4Gから5Gに転用した周波数帯を使い、エリア展開を加速している。

5G 5Gのサービス開始から1年がたち、エリア展開が加速している。都市部では徐々に5Gのアイコンを目にする機会が増えている

 そんな中、KDDIは東京の山手線全30駅および大阪の大阪環状線全19駅のホームに5Gの基地局を設置。同社は、利用者の導線に沿った5Gのエリア化を行っており、人口カバー率が90%に達する2021年度末までには、関東21路線、関西5路線に5Gを拡大していく予定だ。ここでは、大手3社のエリア展開の方針を振り返りつつ、鉄道を中心に5Gのエリア化を進めるKDDIの狙いに迫る。

5G KDDIは、山手線および大阪環状線の全駅ホームを5Gエリア化した

サービスインから1年、周波数転用も始まり急速に広がる5Gエリア

 サービス開始から1年がたち、大手3社は5Gのエリアを急速に拡大している。2021年度末(2022年3月)にはドコモが人口カバー率約55%、KDDIとソフトバンクは人口カバー率90%を達成する予定。現時点でも5Gがスポット的にしか利用できなかったサービス開始当初と比べ、徐々に“面”としてのエリアができつつある。実際、東京でのエリアマップを見てみると、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社とも、主要な駅を中心にしながら、繁華街やオフィス街を広い範囲でカバーできるようになりつつあることが分かる。

5G 2021年8月末時点に予定しているドコモの5Gエリア。東京都内は、かなり面展開が増えていることが分かる
5G 転用した周波数帯を使い、カバー範囲を広げているKDDI。秋以降のエリア計画を見ると、都内が5Gで埋め尽くされている
5G ソフトバンクも、東京は中心部がSub-6、周辺部分や隙間を転用した周波数でカバーしている

 ただし、エリア拡大の手法はキャリアによって少々異なっている。5G用に割り当てられた新周波数帯を使い、「瞬速5G」をうたうのがドコモだ。同社は、2020年夏から出力を上げたマクロ局の運用を開始。その数が徐々に増え、都市部ではエリアの面展開ができつつある。

 マクロ局を展開する上で有利に働いているのが、衛星との干渉が少ない4.5GHz帯(n79)だ。3社とも5G用の周波数帯として3.7GHz帯(n77/n78)が割り当てられているが、衛星との干渉調整が必要になる。エリアをまとめて広げれば広げるほど、干渉が起りやすくなるため、地道なチューニングが必要になるというわけだ。ドコモが新周波数帯にこだわり、「瞬速」をうたう理由もここにある。こうした周波数戦略が功を奏し、6月28日には5Gの基地局が1万局に達した。

【訂正:2021年7月3日19時20分 初出時、3.7GHz帯(n77/n79)としていましたが、正しくは3.7GHz帯(n77/n78)です。おわびして訂正致します。】

5G ドコモは他社にない4.5GHz帯を持つ。衛星との干渉がなく、マクロ局でエリアを広げやすい。写真は2019年のプレサービス開始時のもの

 KDDIやソフトバンクも、3.7GHz帯のエリアは拡大しているものの、干渉対策には時間がかかっているという。KDDIエンジニアリング モバイル設計本部 エリア設計部の加藤純人氏によると、KDDIではアンテナの取り付け方を変えて微妙に傾けたり、電波を出す方向を変えたりして干渉を回避しているという。「距離感で言うと、数十キロの施設が影響することもある」(KDDIのパーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 次世代ビジネス企画部 部長の長谷川渡氏)というだけに、チューニングにはかなりの時間を要する。

5G
5G 3.7GHz帯は干渉が発生するため、基地局の細かなチューニングが必要になり、エリア拡大に時間がかかる

 そのため、4.5GHz帯を持たないKDDIやソフトバンクは、5Gのエリア拡大には4Gから5Gへの周波数転用を活用する。KDDIは700MHz帯(n28)と3.5GHz帯(n78)を5Gに転用済み、ソフトバンクは700MHz帯と3.4GHz帯(n77)に加え、1.7GHz帯(n3)も5G化している。3.5GHz帯の周波数特性はSub-6のそれに近い一方で、いわゆるプラチナバンドに近い700MHz帯や、既存の基地局が多い1.7GHz帯はエリアを広げやすい。転用した周波数帯で面展開しつつ、スループットを必要とするエリアにはピンポイントで3.7GHz帯やミリ波を導入していくのが、2社に共通した戦略だ。

【訂正:2021年7月3日19時20分 初出時、ソフトバンクの周波数帯を3.5GHz帯としていましたが、正しくは3.4GHz帯です。おわびして訂正致します。】

5G エリア拡大には4Gから転用した周波数帯を使うKDDI。2021年度末の人口カバー率は90%を予定する

 実際、東京の都心部では、大手3キャリアの回線を使っていると、アンテナピクトの横に「5G」の文字を目にする機会は増えている。特に周波数転用でエリアを広げているKDDIやソフトバンクは、その頻度が高い。上記のエリアマップの広さを見ても、2社は周波数転用を活用していないドコモを大きく上回る。ほぼどこでもつながる4Gにはまだまだ及んでいないものの、サービス開始から1年かけ、着実にエリアを広げていることが伺える。

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