世界を変える5G

auがiPhone 12に導入した秘策 4G周波数の転用は“なんちゃって5G”にあらず?

» 2020年10月16日 22時06分 公開
[田中聡ITmedia]

 auの「iPhone 12」シリーズでは、他キャリアにはない独自機能を導入することが分かった。

iPhone 12 9月25日に、今後発売するスマートフォンは全て5Gにすることを予告していたKDDI。その予告通り、iPhone 12シリーズは全て5Gに対応した

 データ通信が使い放題(テザリングや国際ローミングなどを除く)の5G向けプランを契約しているユーザーがiPhone 12シリーズを使うと、5Gエリアでは自動でフルHDなどへ高画質化するという。KDDIはこの機能を「au 5Gエクスペリエンス」と呼んでいる。対象プランは「データMAX 5G」「データMAX 5G ALL STARパック」「データMAX 5G Netflixパック」「データMAX 5G テレビパック」。

iPhone 12 iOSと連携させることで、4Gと5Gの通信を自動で切り替えられるようになった
iPhone 12 データMAXプラン契約者が5Gエリアに入ると、対象コンテンツの映像を自動で高画質化する

 iPhone 12シリーズでは、5G通信を必要としないシーンでは自動で4Gに切り替えて、バッテリーの消費を抑える「スマートデータモード」を搭載しているが、au 5Gエクスペリエンスは、iOSと5Gをさらに連携させた機能となる。iPhone 12側が契約プランを確認し、(ネットワーク側から)信号で返すことで、ユーザーが5Gの無制限プラン(データMAX系)を契約しているかどうかを判別するという。

 「アンリミテッド(プラン)を提供していないと、このサービスは提供できない。現在、うち(au)しか提供できない」とKDDIの高橋誠社長は自信を見せる。

iPhone 12 KDDIの高橋誠社長

 高橋氏は、AppleのiPhone 12発表イベントで米VerizonのCEOが5Gパートナーの代表として登壇したことに触れ、「今までにない展開。なかなかすごかった」と振り返る。「(Verizonは)全米に5Gを展開するのに加え、5Gを速いスピードで広げていらっしゃる。(4Gの)既存周波数を使っていると思うが、ローバンドで思いっきりネットワークを広げて、なおかつ、スペシャルな部分(5Gの新周波数)が非常に速い。Appleとキャリアが徹底的にチューニングしている。インテグレートという言葉もあった」

 この“インテグレート”をKDDIならではの形で実現したのが、au 5Gエクスペリエンスというわけだ。ただし対応するサービスは限られており、当面はApple Music、FaceTime HD、auの動画配信サービス「TELASA」(10月23日対応予定)、スポーツの動画を配信する「SPORTS BULL」(11月対応予定)、auの短尺動画配信サービス「smash」(12月以降対応予定)に限られる。

iPhone 12 au 5Gエクスペリエンスの対象コンテンツ

 現在はAppleやKDDIのサービスが中心だが、「5Gで体験がよくなることを、コンテンツプロバイダーにもご理解いただきアピールしていく」(パーソナル企画統括本部 副統括本部長の松田浩路氏)構え。「この機能を使いたいと言っていただける方たちは増えると思う。そんなに難しいAPIではないので、積極的に提案してアグリゲーターを増やしていきたい」と高橋氏も意気込む。また、Android向けにも同様の機能を提供するよう検討していく。

 KDDIは2020年度末までに約1万局、2021年度末までに約5万局まで5G基地局を拡大する予定。5万局まで広がると、人口カバー率は90%に達するという。対応周波数は、5G向けに新規で割り当てられた3.7GHz帯(200MHz幅)に加え、これまで4Gで運用してきた3.5GHz帯、2.1GHz帯、1.7GHz帯、700MHz帯の既存周波数も5G向けに利用することで、5Gエリアを一気に拡大していく考えだ。

iPhone 12 5G基地局は2021年度末までに約5万局に拡充し、4Gの周波数も活用していく

 気になるのが、ユーザーはどのようにして5Gの新周波数と4Gの既存周波数を判別するかだが、「エリアマップで分かるよう区別して表現していく」(パーソナル企画統括本部 次世代ビジネス企画部長の長谷川渡氏)という。既存周波数を5Gに転用した際の通信品質については「レイテンシの短縮も見込めるので、au 5Gエクスペリエンスも含めて体験が向上する」(松田氏)とのこと。

 ドコモは4G周波数の転用には慎重で、5G向けの新周波数を中心にエリア展開していく方針。4G周波数を5G向けに利用しても通信速度は4Gと大差ないため、「なんちゃって5G」などと揶揄(やゆ)されることもあるが、高橋氏は「5Gエリアに行くと、急に高画質化される。体験として非常に分かりやすい。ネットワークの低遅延化にも結びついている」と主張。数字上の通信速度がどれだけ上がるかよりも、ユーザーの体験価値がどれだけ向上するかに重きを置いていることを強調した。

 「9月の発表会で『サービスがネットワークを選ぶ』と述べたが、iPhoneもネットワークを選ぶ時代に突入した。使い放題のネットワークをお客さんに選んでもらいたい」(高橋氏)

 auのデータMAX系プランでは、Netflix、TELASA、Apple Music、YouTube Premiumなどのコンテンツをバンドルしているが、こうしたバンドルプランのユーザーは約65%が29歳以下となっており、若年層から支持を得ている。そこで、学割の対象を25歳から29歳に拡大し、10月16日から「auワイド学割」を提供する。Netflixパックとテレビパックは特にこだわり、6カ月間の割引額を他の2プランよりも高い1600円とした。

iPhone 12 バンドルプランは若年層から大きな支持を得ている
iPhone 12 その若年層をターゲットにした「auワイド学割」を提供する

 iPhone 12の発売を皮切りに新たな学割を始め、バンドルプランを軸に若年層を取り込むau。バンドルプランの中でau 5Gエクスペリエンス(5Gエリアで画質アップ)の対象なのは、現時点ではApple MusicとTELASAのみ。NetflixやYouTube Premiumなど、バンドルプランが扱っているその他のサービスにも拡充することを期待したい。

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