KDDIが8月28日、5G時代を見据えた戦略「au UNLIMITED WORLD」を発表した。
5Gの商用サービスは、2020年3月の開始を予定しているが、これに先駆け、5G時代を先取りした料金プランやサービスを提供していく。au UNLIMITED WORLDは、LTEから5Gに向かって拡張する世界観を表現したものだ。
また、「令和元年は5G元年でもある」(KDDI高橋誠社長)ことから、auの5Gロゴを一新し、先進感や未来感を表現したというメタリックカラーを採用した。
KDDIには、3.7GHz帯で100MHz×2枠、28GHz帯で400MHzの5G周波数が割り当てられる。2024年度末までに4万2863の5G基地局を設置し、93.2%の人口カバー率を目指すが、当初はLTEと5Gの両方に対応したインフラを広げていく。LTEネットワークは既に日本全国をカバーしており、現在は品質改善に尽力している。「お客さまの生活導線、全てのところで4Gがきっちり使えるネットワークを作って、その上で5Gを作る。ハイブリッドなネットワークでスタートする」と高橋氏は見通しを話す。
5Gといえば、「超高速」「多接続」「低遅延」といった特徴が挙がるが、高橋氏は「5Gを主語で話す人を信じてはダメ」「5Gという言葉をひけらかす人は、サービスのイメージがわいていないのではないか」と話し、5Gならではの体験を重視する。KDDIはフランドスローガンとして「おもしろいほうの未来へ」を掲げているが、これは5Gでも継続する。5Gでは「今までの制約から解放されて、本当の意味でアンリミテッドな世界がやってくる」と意気込む。
この制約のない、5G時代を先取りした料金プランとして、「auデータMAXプラン Netflixパック」を9月13日から提供する。
その前身である「auフラットプラン25 Netflixパック」は、順調に契約数を伸ばしているという。また「バンドルプランにしたことで、解約率が極めて低く、エンゲージメントが上がり、大成功だった。いろんな方々から一緒にやろうという話も来ている」と高橋氏は手応えを話す。他の事業者についても「“来るもの拒まず”で検討する」(同氏)ことから、Netflix以外のバンドルプランも増えそうだ。
「アンリミテッド(使い放題の定額サービス)については、3Gと4Gでも(auが)一定の文化を作ってきた」(高橋氏)という自負もあり、Netflixパックでは「アグレッシブな料金(各種割引適用で4880円〜)を実現した」と自信を見せる。「ソフトバンクやドコモは『ギガなんとか』をやっているし、楽天は上(大容量)の料金は厳しいのでは」と話し、他社への優位性もアピールした。
高橋氏は「AUGMENT(拡張)」もキーワードに掲げ、5Gならではの体験を創造すると意気込む。中でも注力するのがスポーツの領域。横浜DeNAベイスターズとはスマートスタジアム構築に向けて協業し、名古屋グランパスとは新サッカー観戦体験の実現に向けて協業する。大学スポーツ協会(UNIVAS)とも協業し、大学スポーツの動画配信やXRを活用した新たな観戦体験などにも力を入れる。
渋谷区観光協会と渋谷未来デザインとは、街での体験を変える取り組みも行う。専用アプリを搭載したスマートフォンを渋谷の街にかざすと飲食店情報などをARで表示。さらに空中を浮遊するさまざまなオブジェクトが街を彩り、能動的にスクランブル交差点の先を回遊したくなる仕組みづくりを目指すという。
コンテンツ面では「auスマートパスプレミアム」を5G時代に合うよう2019年11月以降、拡張させる。月額450円(税別)の料金はそのままに、映像作品、音楽、雑誌の使い放題サービスを加える他、各種イベントのチケットの先行申し込み、大学生スポーツ協会(UNIVAS)関連の動画視聴などが可能になる。スマートウォッチやスマートグラスなど、最先端のスマートデバイスを体験しやすくする特典も用意するという。こうした体験を創出すべく、KDDIは年間100億円規模のコストを投下する。
これらは、商用サービス開始前に5Gインフラでサービスを試験的に提供する「5Gプレサービス」とは異なり、5Gを見据えた体験をLTEネットワーク上で実現する「プレ5Gサービス」という位置付けになる。5Gのインフラを活用したプレサービスは、ドローンを使ったものを予定しているが、商用サービス開始前に、ユーザーがauの5Gスマホ(試験機)に触れる機会はなさそうだ。ともあれ、2020年3月の商用5Gサービス開始前に、KDDIが「5Gで何がしたいのか」のヒントが、これから多くの場面で得られるだろう。
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