キャリア間で進む“バックアップ回線”の運用 スマホよりもIoTで先に実現したワケ石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年11月26日 09時30分 公開
[石野純也ITmedia]

 7月に発生したKDDIの大規模通信障害を契機に、総務省で非常時の事業者間ローミングに関する議論が進んでいる。11月15日には、「第1次報告書案」が出され、28日にはそれに基づいた検討会が開催される。一方で、事業者間ローミングは、ネットワーク側の改修が必要になり、実現にはやや時間がかかる。非常時に限定し、緊急通報などの優先通話を可能にすることを目指しているため、データ通信は救済されない。

 そんな中、各キャリアは、デュアルSIMやeSIMを活用しながら、バックアップ回線をお互いに提供するような案も検討している。コストをどう負担するかなど、オペレーション上の問題はあるが、予備で入れていたSIMカードに切り替えるだけで済むため、技術的にはすぐに実現できる。実際、コンシューマー向けに先立つ形で、IoT回線のバックアップソリューションが各キャリアから登場している。

バックアップ回線
バックアップ回線 7月に発生したKDDIの大規模通信障害をきっかけに、「冗長化」の重要性が再認識されている。これを受け、KDDIやNTTコミュニケーションズはIoT向けの新サービスを発表した

デュアルSIMとシングルSIM、2つのバックアッププランを用意したKDDI

 その1つが、24日に発表されたKDDIのBCP(Business Continuity Planning=事業継続計画)対策用ソリューションだ。KDDIは、ATMを運用する銀行のような一部企業ユーザーに対し、傘下のソラコム回線などをバックアップとして提供してはいたものの、「お客さまの要望に合わせており、ワンストップソリューションにはなっていなかった」(ソリューション事業本部 DX推進本部 5G・IoTサービス企画部長 野口一宙氏)。ユーザーに合わせて裏メニューとして用意していたものを、正式なメニューリストに乗せたと言えば理解しやすいだろう。

バックアップ回線 これまでも、銀行のATMなどの一部は、ソラコムの回線を使って冗長化を行っていたが、これをソリューションに昇華させた

 ソシューションとしてメニュー化するにあたり、サービス内容を2つに増やした。1つが、デュアルSIMのルーターに対し、KDDIのSIMカードと他社回線のSIMカードを入れるというもの。通信障害などが発生し、ネットワークにつながらなくなったことを検知すると、自動で予備の回線に切り替わる。バックアップ回線は「ドコモかソフトバンク」(同)につながるといい、ここにはソラコムの技術を活用しているようだ。

バックアップ回線 ルーターに2枚のSIMを入れておき、メインのKDDI回線が切断された際に、自動で他キャリアの回線に切り替わる仕組みを提供する

 主回線はKDDI、バックアップ回線はドコモかソフトバンクだが、1つのコンソールでまとめて管理することができる。KDDIが提供する閉域網への接続も可能だ。ネットワークの切り替えは端末側で判断しており、「電波が見えている状態であっても、経路が確立できないことを確認でき次第、冗長化用の回線に切り替える」(同)。バックアップを用意しておくことで、「途切れる時間を最小化し、業務への影響を小さくすることができる」(同)のがこのソリューションのメリットだ。

 もう1つのメニューが、シングルSIMソリューション。こちらは、デュアルSIM対応ルーターを用意できない通信モジュールなど、「端末側がデュアルSIMに対応していないケースがある」(同)ことを想定したものだ。SIMカード1枚だとこれまでと同じでは……と思われるかもしれないが、このSIMカードはKDDIが発行したものではなく、「海外事業者のローミングプロファイルが入っている」(同)ものだ。

バックアップ回線 海外キャリアのローミングプロファイルを活用し、1つのSIMで複数のキャリアにつながるようにしたソリューションも用意
バックアップ回線 デュアルSIMとシングルSIM、どちらもKDDIのコンソールから一元的に管理できる

 通常はKDDIのネットワークにつながるが、これもあくまでローミングを介した接続。非常時にも、ローミングで他社のネットワークに切り替える。KDDIが直接回線を提供するのではなく、海外事業者のローミング経由という離れ業で、1枚のSIMカードで複数のキャリアに接続できるようになったというわけだ。自ら回線を敷設するMNOとしては異例のサービスだが、MVNOの中には海外に加入者管理データベース(HSS/HLR)を持ち、ローミングで接続している会社もある。技術的な位置付けとしては、これに近い。

 KDDIによると、デュアルSIMの場合、料金は利用形態に合わせて変わってくるというが、シングルSIMは、ローミングで接続する関係上、使ったときだけ課金される従量制になるという。「バックアップ用の基本料金は設定しない」(同)というため、コストを抑えつつ、回線の冗長化を行いたいユーザーにも適したサービスといえる。

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