キャリア間で進む“バックアップ回線”の運用 スマホよりもIoTで先に実現したワケ石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2022年11月26日 09時30分 公開
[石野純也ITmedia]
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間接的だがコンシューマーメリットも大きい、スマートフォンへの応用にも期待

 いずれも法人向けだが、IoT回線はB2B2Cの形で利用されることも多いため、一般のユーザーにも恩恵がある。実際、7月に発生したKDDIの通信障害はIoT用の回線にも波及し、間接的に影響を受けたユーザーも続出した。通信障害が起こった回線数は最大で150万回線と、全体の規模からすると少ないが、キャッシュレス決済が利用できなくなったり、物流の配送状況が見られなくなったりと、社会的なインパクトも大きかった。

 一方で、「業界全体として、7月に弊社が起こした通信障害まで、これほど社会的影響があるという認識がなかった」(KDDI野口氏)。通信障害でIoT回線が影響を受けた事例は過去にもあるが、KDDIのそれは大規模かつ長期間で社会的な関心も高かった。結果として、ユーザーの中で「BCPという観点で、いろいろな対策をしなければいけないという意識が高まってきた」(同)のは、けがの功名といえる。

バックアップ回線 金融やキャッシュレス、物流などの回線の安定性が高まれば、間接的ながらコンシューマーのメリットにもなる

 2社の発表したソリューションは、法人かつIoTに限定されているが、考え方自体は個人向けのサービスにも応用できる。冒頭で挙げた事業者間ローミングの検討会でも、デュアルSIMやeSIMを活用した対策が議論されている。IoT向けのソリューションが、比較的短期間で導入できたことからも分かる通り、デュアルSIMやMVNOのような既存の技術、仕組みを応用しているだけに、実現性は高い。

 実際、KDDIの野口氏は「コンシューマー向けや、音声とデータ通信を組み合わせた(法人利用の)通常のスマートフォンでのBCP対策をどうするのかというのは、引き続き検討していきたい」と語っている。NTTコミュニケーションズがバックアップ回線として導入したTransatelも、コンシューマー向けにeSIMでのローミングサービスを提供しており、日本でもデータ通信の利用はできる。

バックアップ回線 総務省の報告書案でも、デュアルSIMやeSIMへの期待が寄せられている。IoT用の仕組みの一部は、コンシューマー向けにも応用ができそうだ

 ただ、IoT向けのソリューションは、いずれもデータ通信に限定される。野口氏が語っていたように、そのままの形でスマートフォンに流用するのは難しい。2社が活用したソラコムやTransatelは、いずれもデータ通信専業MVNOで、そのままでは音声通話を含めたサービスを提供できないからだ。裏を返せば、データ通信に特化したIoTだからこそ、既存の枠組みを使って迅速に新サービスを提供できたといえる。一方で、こうしたソリューションが始動したことは歓迎できる。IoT向けのソリューションを皮切りに、多様なサービスに発展することを期待したい。

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