売れた? 売れなかった? ショップ店員に聞く2022年の「新型iPhone商戦」元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(2/3 ページ)

» 2022年12月30日 09時00分 公開
[迎悟ITmedia]

「売れていない」のだとしたら、その原因は?

 例年に比べると売れているように思えない――その原因は一体どこにあるのでしょうか。もう少し、詳しく話を聞いてみました。

 売れていない原因ですか……。いろいろ心当たりはありますが、一番は「価格」じゃないでしょうか。

 7月にiPhone 13シリーズなどが値上げされましたが、それ以降、一部モデルを除いてiPhoneの売れ行きは明らかに落ちました。値上げ後の価格と比べると、iPhone 14シリーズの価格はそれほど変わっていないように見えますけど、よく見るとさらに少し上がっているんですよね。iPhone 13シリーズの値上げ前の価格と比べると“めっちゃ”高くなったと思われても仕方ありません。

 正直「iPhone 14シリーズはなかなか手が出ない」っていう人は多いんじゃないでしょうか。

 売れない原因としては、キャリアが提示する販売価格がAppleの直販価格よりも高い傾向にあることも考えられると思います。

 まず、毎年iPhoneを買い換えるような人は、キャリアの分割払いや購入プログラムを積極的に使わない限りは、一番安いApple Storeで買うのは当たり前だと思います。最近は一部の量販店がSIMフリー(=キャリアを介さない販売分)を取り扱い始めましたが、Apple Storeと同じ値段である上、率は低いですがポイントも付きます。キャリアを介して購入するメリットがますます薄れてしまいます

 よくよく考えてみると、現在のiPhoneはキャリアを介した販売分もSIMロックフリーです。商流(販路)が違うだけで無視できない価格差が出るんだとしたら、詳しい人ほど(契約上の)面倒がない上に安いSIMフリーに流れるのは当然です。

 キャリアで購入するメリットがあるとしたら、下取り前提の残価設定型の分割払いです。「2年で買い換え」という人なら、SIMフリーよりも有利な条件でiPhoneを買い換え続けられます。ただ、iPhoneを発売日に買うお客さまは「毎年買い換えたい!」というケースも多くて、その場合は残価設定型の分割払いのメリットも薄いですからね……。

 iPhoneを含めて、最近のApple製品って予約の受付開始時間が遅いですよね。これが売れ行きに影響している予感がします。

 以前は夕方から開始していたので、そのタイミングで来店して、相談の結果「新しいやつが良さそうだ」と予約していくお客さまが多くいらっしゃいました。現在は大半の店舗では営業を終了したタイミングで予約が始まるので、店頭で予約しようとすると翌朝です。

 より確実な入手を考えると、おのずとオンライン予約に行ってしまうのは自然の摂理かもしれませんが、もうちょっと実店舗のことを考えた予約開始時間を設定してほしいなと……。

 お客さまに「また少し待ったら『実質1円』とか『一括9800円』みたいになるんでしょ?」と、iPhone SEやiPhone 13シリーズのような特価施策を待っているような質問を受けることも多いです。あと、今回はスペック的に大きな変化が少なかったせいか「iPhone 13でも困らなさそうだから、そっちが安くなるのを待つ」というお客さまも結構います。

 このように、「売れていない理由」は「売れ行き」以上にたくさんの意見を聞くことができました。少し見方を考えると、売れていないと感じているからこそ、その理由や売る方法を模索しているともいえます。

 かつて日本では、キャリアを介さないとiPhoneを購入できませんでした。しかし、Apple Storeを含め“iPhoneだけ”を買う方法が充実したことで、一部客層においてキャリアを回避してiPhoneを手に入れる動きが定着し、「旧モデルを安く買いたい」「iPhone 14シリーズが高すぎる」といった事情も相まって、最新のiPhoneがユーザーにとって“手の届きづらい”スマホになってしまったことも改めて浮き彫りになったといえるかもしれません。

ソフトバンク ソフトバンクの場合、iPhone 14シリーズはいずれもApple Storeよりも数万円高いです。程度の差こそありますが、NTTドコモ、au(KDDIと沖縄セルラー電話)、楽天モバイルもApple Storeよりも“高価”なことに変わりはありません(参考記事
キャリア 大手キャリアを介して購入するメリットは、キャリア独自の下取り前提の販売プログラムを適用できることにあります。ただし、ユーザーの考える買い換えサイクルによってはメリットにならない場合もあるのが“悩み所”のようです(画像はドコモの「いつでもカエドキプログラム」の例)

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