例年9月に発売され、秋商戦と冬商戦にかけて携帯電話ショップを盛り上げてくれる「新型iPhone」。2021年も「iPhone 13シリーズ」が9月に発売されて、Webメディアはもちろん新聞やTVなどで大きく取り上げられました。
例年通り、iPhone 13シリーズは2021年末まで携帯電話売り場を盛り上げてくれました……と言いたい所ですが、携帯電話ショップや家電量販店の携帯電話コーナーに勤務している複数の店舗スタッフに話しを聞くと、口をそろえて「例年に比べるとなぁ……」というさみしい声が聞こえてきました。2022年に入っても、その傾向は大きく変わっていないようです。
iPhone 13シリーズは、今までのiPhoneとは何が違ったのでしょうか。店舗スタッフの声をまとめてみました。
大規模な家電量販店では、キャリアごとに(店舗によってはキャリアフリーモデルも含めて)iPhoneの在庫一覧を掲示していることがあります。容量、カラーも含めて在庫の有無を確認できるのでとても便利です。
以前であれば、発売日は全キャリアで全モデルが「予約受付中(≒在庫なし)」あるいは「在庫僅少(予約なしでも買えるが在庫が片手で数えるほどしかない)」という状況で、日がたつにつれてだんだんと「在庫あり」に移り変わっていき、年を越えるとおおむね全モデルの全容量、全モデルが「在庫あり」になる感じでした。
ところが、iPhone 13シリーズに限っていうと、特に「iPhone 13 Pro」と「iPhone 13 Pro Max」において年が明けても「予約受付中」となっている容量/カラーが複数存在するのです。
ずっと「予約受付中」となっているのを見て、元店舗スタッフである筆者は「ああ、人気があって在庫が足りないのかな?」と考えてしまったのですが、売り場にそれ相応の“活気”が見られないことが気になります。
そこで現役の店舗スタッフに話を聞くと、こんな答えが返ってきました。
iPhone 13シリーズ、在庫(≒予約なしで販売できる分)が全然入ってこないんですよね。今までのシリーズは、予約分がある程度さばけると、カラーや容量を問わずある程度の在庫を確保できていたんですが……。
特にiPhone 13 Pro/Pro Maxは、ある程度の数量が初回に(発売日販売分として)入荷して以来、まとめて入荷することが困難な状況にあります。発売日(9月24日)までに予約いただいた分が、最近(12月に入ってから)ようやく行き渡った感じです。フリー(予約なしで販売できる)在庫なんて、夢のまた夢……。
どうやら「人気があってずっと予約販売」というわけではなく「発注してもなかなか入荷しないカラーや容量がある」状況のようです。
そこでもう少し詳しく話を聞いてみると、こんな声が出てきました。
iPhoneは、発売日前に実機を並べることができません。なので、発売日からしばらくの間は(実機を見るために)お客さまの来店が増えます。実際に試してから購入するかどうか、実機を見てから考えるお客さまが少なからずいるということです。
購入を決断されたお客さまが希望される構成の在庫がない場合、Proシリーズへのこだわりが特にない場合は、私たちのトーク(説得)によって別モデルや構成に誘導することもある程度はできます。しかし、始めからProシリーズを決め打ちで希望されるお客さまの多くは、Proシリーズにしかない要素、特にカメラ機能に価値を見いだしています。それだけに、別のモデルや構成に誘導できないケースも少なからずあります。
私の店では、iPhone 13/13 miniは在庫を持っているか、欠品していても発注すればすぐに入荷します。でも、iPhone 13 Pro/Pro Maxの在庫はなくて、発注してもすぐには入荷できない状態が続いています。
例年だと、より新しいもの、より高機能を求めるお客さまが発売日近辺でProシリーズに飛びついて、それが落ち着いたらProじゃないモデルがコンスタントに売れていくという感じです。ところが、今回(2021年)は初動を担うProシリーズが全然入荷せず、事前予約分をさばくだけでもある程度の時間を要している状況です。
そのせいか、今回のiPhone 13シリーズについては「売れている」という実感を持てないですし、売り場の盛り上がりにも欠ける状況になってしまっています。
筆者の知人は“ハイエンド”指向が多く、スマホもスタンダードなモデル(最近ならミドルレンジモデル)ではなくフラグシップ(ハイエンド)モデルを好む傾向にあります。iPhoneであれば、Proシリーズにしか興味を持たないという知人も少なくありません。
販売スタッフの目線に立つと、iPhoneのProシリーズはもちろん、Androidスマホのフラグシップモデルはとにかく“初動”が命という面があります。というのも、これらのスマホを求める人は「1日でも早く最新機能や高パフォーマンスに触れたい」と考えるため、需要が発売日から数週間から1カ月程度に集中しやすいのです。このような人はスマホの買い換えスパンも1〜2年程度と短い傾向にあるため、iPhoneならProシリーズじゃないと買い換える意味がないとも考えがちです。
しかし、フラグシップモデルを求める人は、発売から日を置かずに手に入らないとなると「もういいや」と考えがちでもあります。もちろん、店舗スタッフの声にもあるように入荷を辛抱強く待つ人もいるのですが、待ちきれずに別のモデルを買ってしまうケースも見受けられます。
初動が命であるフラグシップモデル(Proシリーズ)がなかなか入荷しない――その文脈に立つと、iPhone 13シリーズが売り上げ的にも店舗スタッフの士気的にも“盛り上がりに欠く”状況だったのは間違いないようです。
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