スマホやノートPCをバッテリー切れの危機から救う! 「モバイルバッテリー」選びで気を付けるべき4つのポイント(3/3 ページ)

» 2023年03月02日 20時30分 公開
[あーるITmedia]
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ポイント4:「容量」はどのくらい必要か?

 モバイルバッテリーは、あくまでも“バッテリー”である。スマホ、タブレットやノートPCのバッテリーと同じく最大容量が決まっている。

 容量は大きいほど給電能力を高めやすいが、その分だけ重量、サイズや価格が増してしまう。逆に、容量は小さいほど重量、サイズや価格を抑えられるが、給電能力を高めづらい。基本的にはバッテリー容量と重量/サイズ/価格は“トレードオフ”の関係となる。

 この前提を踏まえた上で、モバイルバッテリーに“快適さ”を求めるなら少なくとも1回、主に充電するデバイスのバッテリーを空の状態(0%)から満充電できるだけの容量はあった方が良い。

おことわり

 ここからの試算は、スマホのバッテリーとモバイルバッテリーが共に同じ電圧(約3.7V)を入出力する前提で行っています。


 5000mAhのバッテリーを備えているスマホを0%から満充電すると仮定しよう。単純に考えれば「モバイルバッテリーも5000mAhあればいいんじゃない?」と思うかもしれないが、そう単純ではない。モバイルバッテリーとスマホの間はUSBケーブルでつなぐことになるが、USBケーブルに電流を流す際に5〜20Vに“昇圧”する必要があるからだ。

 昇圧する際、電力にはある程度の損失(ロス)が生じる。用いる昇圧回路によって損失率は左右されるが、おおむね4割前後と考えればよい。そうすると、このスマホを満充電するために必要なモバイルバッテリーの容量は5000×100÷60≒8333(mAh)となる。8400mAh以上のモバイルバッテリーを買えば良いということだ。

 他のデバイスも同時に充電(給電)する場合は、より多くの容量を備えるものを買うと安心できる。

 最近はスマホやタブレット自身も大容量バッテリーを搭載するケースが増えている。「朝から充電なしで動画再生を楽しめる」とはいうものの、高負荷なゲームあるいは、通信を伴うWebサーフィンやSNSを楽しむと、この通りには行かない。スマホを1回満充電できるだけのモバイルバッテリーを持っていれば、万が一の場合にも十分に役に立つ。

RAVPower RAVPowerの「RP-PB186」は1万mAhバッテリーを備え、最大18WのUSB PD出力に対応している。本文中の試算に従えば、5000mAhのスマホを約1.2回満充電できる

 ノートPCを充電する場合は、モバイルバッテリーの容量がより重要となる。というのも、ノートPCに搭載されているバッテリー容量は、スマホのそれよりも非常に大きいからだ。

 詳細は省略するが、ノートPCのバッテリーを0%から満充電するには1万mAhでは全然足りない。モデルにもよるが、少なくとも2万mAhのモバイルバッテリーは欲しい

オウルテック オウルテックの「OWL-LPB20015」は2万mAhのバッテリーを備え、最大60WのUSB PD出力に対応する

 ……と、ここまで大容量推しをしてきて恐縮だが、航空機で移動する機会が多い人には注意がある。航空機に持ち込めるモバイルバッテリーの容量に制限があるのだ。

 モバイルバッテリーは、電子機器本体(スマホ/タブレット/ノートPCなど)と一緒に使う「予備バッテリー」という扱いを受ける。日本の法令では、予備バッテリーの航空機への持ち込みに以下のような制限が掛かっている。

  • 「預け入れ手荷物」としての預け入れ:容量を問わず不可
  • 「機内持ち込み手荷物」としての持込み
    • 容量100Wh以下:OK(個数制限は特になし)
    • 容量100〜160Wh:OK(1人2個まで
    • 容量160Wh超:持ち込み不可

 モバイルバッテリーが内部で3.7V駆動すると仮定した場合、2万7027〜4万3243mAhの製品は1人2個まで、4万3243mAh超の製品は持ち込み不可となる。国際線、特に中国本土(Mainland China)を発着する便の場合、この制限は厳しく適用されるので気を付けてほしい(※3)。

(※3)中国本土を拠点とする航空会社の便の場合、容量100Wh以下の予備バッテリーの持ち込みにも個数制限を設けている会社がある他、容量100〜160Whのバッテリーの持ち込みは例外なく航空会社の“承認”を得る必要がある

モバイルバッテリー 航空機へのモバイルバッテリーの持ち込みは制限がある。特に中国本土に渡航する場合は十分に注意しよう(出典:成田国際空港:PDF形式)

 ここ数年の間に、スマホのバッテリー性能は進化し、ノートPCの充電規格は一部のハイエンドモデルを除いてUSB PDへの集約が進んだ。モバイル機器の充電をめぐる環境は変化してきている。

 新幹線、特急列車や航空機といった公共交通はもちろん、カフェを始めとする飲食店でもコンセントやUSB充電プラグの整備は進んでいる。しかし、それらが確実に使えるとは限らない。モバイルバッテリーはモバイル機器の充電の最後の“とりで”であることに変わりはない。

 モバイルバッテリーは頻繁に買い替えるようなものではない。「もう持っているよ」という人は、次回の購入時に本記事で記載したようなポイントを抑えつつ、使い道に応じた最適な製品を手に入れてほしい。

 また、必ずしも1台ですべてをまかなうのではなく、例えば日常的な外出時には小型のモバイルバッテリーを、ノートPCも持ち運ぶ際には2万mAh・45W出力の大型のモバイルバッテリーを……というように、シーンに応じて最適なものを用意しても良いだろう

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