モバイルSuicaやモバイルPASMOの定期券を購入したり残高にチャージする際は、原則として「3Dセキュア 2.0」対応のクレジットカードが必要とされています(参考記事)。「中学生や高校生はクレジットカードを持てないので、どうやって買う(チャージする)んだ!」という意見もありますが、モバイルSuica/モバイルPASMOでの定期券購入やチャージは、クレジットカードがなくてもできます。
最近は、クレジットカードの決済ブランドが付帯する「デビットカード(銀行口座から即時引き落としをして決済するカード)」や「プリペイドカード(あらかじめチャージした残高で決済するカード)」が増えています。
モバイルSuica/モバイルPASMOでは、クレジットカードの決済ブランドが付帯するデビット/プリペイドカードを使って定期券の購入やオンラインチャージを行えます。ただし、以下の注意点が必要です。
中学生や高校生の通学定期券をモバイルSuica/モバイルPASMOで購入する場合は、保護者のクレジット/デビット/プリペイドカードで代理決済できます。カードの情報は「窓口で保護者のクレジットカードで買う」というシチュエーションを、モバイルでも再現できるということです。
ただし。カード情報は会員情報(あるいは端末)に保存されないため、カード情報は都度入力しないといけません。また、決済に使うカードは3Dセキュア2.0に対応している必要があります。
なお、モバイルSuicaでは端末でのオンラインチャージでも代理決済を利用可能です。
クレジットカードの多くは、3Dセキュア2.0に対応しています(一部、利用開始前に申し込みが必要です)。一方で、デビットカードやプリペイドカードでは、3Dセキュア2.0に対応していないケースも少なからずあります。
ただし、3Dセキュア2.0に非対応のカードでも、おサイフケータイ対応Androidスマホなら「Google ウォレット」に、iPhoneやApple Watchなら「Apple Pay(ウォレット)」に登録できれば、3Dセキュア2.0非対応のカードでも定期券の継続購入やオンラインチャージが可能です。定期券の新規購入はできないのですが……。
モバイルSuica/モバイルPASMOというと、オンラインでカードを使ってチャージしないといけないというイメージがありますが、現金チャージや現金による精算にも対応しています。ただし、以下のいずれかの方法(機器)を使う必要があります。
モバイルSuica/モバイルPASMOが使える路線の鉄道駅では、モバイル対応のチャージ機/自動精算機を最低1台設置する動きもあります(会社によっては自動券売機もモバイル対応しています)。また、モバイルSuica/モバイルPASMO(と「モバイルICOCA」)を使う人が増えてきたせいか、Suica/PASMO以外の交通系ICカードに対応する鉄道事業者でも、機器のリプレース時にモバイル対応を行うケースが増えているようです。
18年間モバイルSuicaを使ってきた身からすると、ここ2〜3年の利便性向上は目を見張るものがあります。
モバイルSuica/モバイルPASMOを使わない理由として「通信しないと使えない!」「アプリが起動できなくなったらどうするのか?」という意見もあります。
まず、モバイルSuica/モバイルPASMOは新規発行時やオンラインでの乗車券類の購入/チャージ時以外は通信が不要です。乗車券やプリペイド残高の情報はカード上にあるので、手持ちの携帯電話で通信障害があっても問題なく使えます。見方を変えると、通信障害時はオンライン処理が必要な手続きができないわけですが、乗車券(や電子マネー)が使えれば、何とかなると思います。
普段のかざす操作なら、アプリの起動も不要です。ただし、Apple PayのSuica/PASMOの場合、エクスプレスカードに指定していないカードを使う際に、ウォレットアプリでのカード選択と認証操作が必要なので気を付けてください。
モバイルSuicaやモバイルPASMOに関して「スマホが壊れたらどうするんだ?」という意見もありました。筆者も携帯電話が壊れてモバイルSuicaが使えなくなったことが18年弱で“一度だけ”ありましたが、別の対応端末を手元に持っていたので、再発行依頼をすることで翌日には復旧しました。
カードタイプと同様に、モバイルSuicaやモバイルPASMOも記名カードであれば端末故障や紛失/盗難に伴う再発行が可能です。しかも、手数料は無料です。具体的な手順や注意点は以下の通りです。
おサイフケータイ対応Androidスマホが故障(操作不能)/盗難/紛失に遭遇し、カードの再発行先に同じくおサイフケータイ対応Androidスマホを選ぶ場合は、以下の手順で再発行できます(同じGoogleアカウントでログインしてください)。
再発行するカードのデータは、以下のタイミングからダウンロードできます。いずれの場合も、プリペイド残高を含む定期券以外の情報は、翌朝5時以降にモバイルSuica/モバイルPASMOアプリから別途ダウンロードしてください。
(※3)モバイルPASMOの場合、バス定期券のみを含むカードも同様です。モバイルSuicaの場合、鉄道定期券とバス定期券が併載されている場合は、同時に再発行を受けられますが、バス定期券のみ搭載されている場合は翌朝5時以降にアプリから他の情報と一緒にダウンロード可能です(当日中のダウンロードができません)
iPhoneやApple Watchが故障(操作不能)/盗難/紛失に遭遇し、カードの再発行先に同じくiPhone/Apple Watchを選ぶ場合は、以下の手順で再発行できます。
なお、いずれの場合も、プリペイド残高を含む定期券以外の情報はSuica/PASMOアプリから別途ダウンロードしてください(翌朝5時以降にならないとダウンロードできない場合があります)。
【Apple PayのSuicaの場合】
(※4)ウォレットに登録したカードを一括削除する場合はデバイス情報のサイトからも操作可能
【Apple PayのPASMOの場合】
Suicaと同様の方法の他、以下の方法でも再発行できます。
プラットフォームにまたがる再発行はできません。同じプラットフォームの予備端末を持っている場合は、同じプラットフォームでいったん再発行を行った上で、そのデータを退避してから乗り換えることをお勧めします。
同じプラットフォームの予備端末を持ってない場合は、会員メニューサイト(モバイルSuica/モバイルPASMO)から払い戻し(返金処理)を依頼し、カードを発行し直してください。
モバイルSuicaやモバイルPASMOについて、誤解されがちなことを解説しましたが、書いているうちに、JR東日本やパスモ(とPASMO加盟各社)がモバイルSuica/モバイルPASMOの“使い方”をもっとしっかり告知すべきだと感じました。
メリットや注意点を網羅的かつ分かりやすく伝えるのは難しいのですが、それでもきちんと告知することで“わざわざ”行列を作る人は減らせるように思えます。Xでの反応を見る限り、学校や企業にモバイルSuicaやモバイルPASMOの利用を“認めさせる”活動も必要そうです。
ともあれ、カードにもモバイルSuica/モバイルPASMOにも一長一短ありますから、リスクとベネフィットをてんびんにかけて使うようにしたいものです。
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