MVNOが成長するのに“足りていないこと” 「格安スマホ」激動の10年を振り返りながら議論(1/3 ページ)

» 2024年04月19日 06時00分 公開
[房野麻子,ITmedia]

 テレコムサービス協会MVNO委員会が3月22日、「ユーザが望むこれからのMVNOとは」というテーマで「モバイルフォーラム2024」を開催した。MVNOが「格安スマホ」として市場に認知され始めて10年、ユーザーはどのように感じ、市場はどのように変わったのか。また、今後、ユーザーはMVNOに何を望み、MVNOが担うべき役割は何なのかを議論した。

 今回は「格安スマホから10年、これからのMVNOにユーザが望むこととは」をテーマにしたパネルディスカッションの様子をお伝えする。パネリストはスマートフォン/ケータイジャーナリストの石川温氏、フリージャーナリストの西田宗千佳氏、Crilu 代表取締役の長山智隆氏、イオンリテール イオンモバイル商品G 統括MGRの井原龍二氏、オプテージ コンシューマ事業本部モバイル事業戦略部 部長の松田守弘氏、テレコムサービス協会 MVNO委員会委員長/インターネットイニシアティブ MVNO事業部コーディネーションディレクターの佐々木太志氏の6人。モデレーターはITmedia Mobile 田中聡編集長が務めた。

モバイルフォーラム2024 パネリスト6人によるトークセッション
モバイルフォーラム2024 モデレーターの田中聡編集長

2014年にMVNOの楽天モバイルが誕生、SIMフリースマホのない時代

 トークセッションは、「格安スマホ」10年の振り返りからスタートした。

モバイルフォーラム2024 2014年から2018年までのMVNOを巡る主な出来事

 2014年は、一部メディアがMVNOのサービスを「格安SIM」「格安スマホ」と名付けたことで一般に広く知られるようになっていった年。楽天モバイルがMVNOとしてサービスを開始し、三木谷氏が「3年で1000万台の販売を目指す」と発言したことが話題となった。au回線を使ったUQ mobileやmineoも登場。この当時、SIMフリースマホはほとんどなかった。

 2015年は総務省で「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が設置された。これを機にMNOが低容量帯の料金プラン提供の準備を開始し、不適切なキャッシュバックの是正も提言された。

 2016年はLINEモバイルが誕生。HuaweiやASUSなどの海外メーカーからスマホが相次いで発売され、SIMフリースマホが増加した。ガイドラインの改正で端末の実質0円販売が禁止に。また、SIMロック解除が、従来の購入後180日目以降から100日以降に短縮された。

 イオンモバイルの井原氏は「2014年の終わりくらいから日本メーカーのSIMフリー端末も出たが、低価格モデルがなかった。そこにHuaweiさんが買いやすいモデルを出してくれて、MVNOにとっては本当にありがたかった。SIMフリー市場を認知させるために、メーカーさんと協力しながら作り上げていった」と当時を振り返った。

モバイルフォーラム2024 イオンモバイルの井原龍二氏

2017年以降にサブブランドが台頭するも、MVNOにとって「敵ではない」

 2017年は、ドコモがシンプルプラン、auがピタットプランと大手キャリアが格安SIMに対抗するプランを導入。この頃、サブブランドという言葉がよく聞かれるようになり、ソフトバンクとY!mobileを、KDDIはUQ mobileを強く押し出すようになる。

 一方で、総務省の有識者会議では、ランチ時でもサブブランドは通信速度が落ちないことから、MNOが優遇しているのではといった疑念が生まれる。グループ内サービスを優遇して帯域を増強する「ミルク補給」という言葉も出てきたほどで、サブブランドを規制すべきではないかという機運が高まったこともあった。体力的に厳しくなったMVNOが破綻したり、MNOに吸収されたりといったことも起きた。また、楽天モバイルが第4のキャリアに名乗りを上げたのもこの年。西田氏は楽天モバイルがMNOとして参入することについて当時「合理的な判断とは思えなかった」との印象を持ったそうだ。

モバイルフォーラム2024 ジャーナリストの西田宗千佳氏

 佐々木氏はサブブランドについて、携帯電話事業者に対するユーザーの「固定化されたマインドを壊す効果が期待できる存在」であり、MVNOにとって「敵ではない」、MVNO側が求めているのは「サブブランドと公正に競争できること」だと語った。松田氏も「サブブランドはライバル」としながらも、「サブブランドを使っているユーザーはメインブランドから乗り換えのハードルを一度越した人。さらにMVNOに乗り換えてもらえる期待が持てる」とポジティブな面を認めている。

モバイルフォーラム2024 MVNO委員会委員長/IIJの佐々木太志氏
モバイルフォーラム2024 オプテージの松田守弘氏

 Criluの長山氏は、かつてOCN モバイル ONEに携わっており、通信サービスについて解説する動画を届ける「スマサポチャンネル」の中の人でもある。当時、OCN モバイル ONEはドコモのサブブランドになりそうでなりきれなかったという印象もあるが、内部では決してそうではなく「MVNOとして、しっかり競争していく」意識だったという。今では当たり前となっているデータの繰り越しや通信開始時の速度を上げる「バースト転送機能」は、サブブランドが強くなっていく中で「通信としての魅力を突き詰めていった中で生まれてきた機能」だったと語った。

モバイルフォーラム2024 かつてOCN モバイル ONEの「中の人」だったCriluの長山智隆氏

2018年に「4割値下げする余地がある」発言、IIJがフルMVNOサービスを開始

 2018年は、当時の菅官房長官が、あの有名な「4割値下げする余地がある」発言をした年。当時は比較的穏やかに受け止められたが、後の「ahamoショック」につながっていく。LINEモバイルがソフトバンク傘下となり、IIJが自社でSIMを発行するフルMVNOの仕組みでサービスを開始した年でもあった。

 フルMVNOについて佐々木氏は、初期に携わった担当者として誇らしいと述べつつも、「通信事業者としてあるべき正常進化」と語っている。

 「膨大な投資が伴うものである以上、回収する方法を表裏一体で考えなくてはいけない。2018年時点、フルMVNOで音声サービスは提供できなかったので、データSIMをどう売るか考え、当初からIoTにターゲットを定めた。現状、日本のフルMVNOはいずれもIoTに強いというバックグラウンドを持っている」(佐々木氏)

 欧州などではフルMVNOが普通に一般ユーザー向けのサービスを提供している。日本のフルMVNOはIoTが中心という、やや特殊な環境との認識だ。

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