これは終わりの始まりなのか。
KDDIは2024年5月16日、Google I/O 2024に合わせるかたちで、グーグルが提供する「Googleメッセージ」アプリをAndroidスマートフォンの標準アプリとして今後、追加で採用すると発表した。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年5月19日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
これまでAndroid向けのメッセージアプリと言えば、+メッセージやSMSを提供してきたはずだ。
だが、2018年5月に「LINE対抗」として鳴り物入りでスタートした+メッセージではあったが、国内で4000万人を突破(2024年2月2日)というが、メジャーなメッセージになっているかといえば、相当、微妙だ。自分のアプリを見ても、iPhoneを使っていない広報担当者や一部のテレビ局関係者との連絡手段にしかなっていない。
そんななか、KDDIは+メッセージにプラスするかたちでGoogleメッセージを標準メッセージアプリとして提供するとしたのだ。
そもそも、3キャリアでは+メッセージが標準搭載されているが、GoogleメッセージをインストールしてRCSとして利用することは可能だ。Androidスマートフォンでは+メッセージとGoogleメッセージ、どちらをメインで使っていくかを選べるようになっている。
今回、KDDIでは「Google サービスとのスムーズな連携によるユーザーエクスペリエンス向上」「Google サービスの高度なセキュリティーとプライバシー保護などによる機能強化」「端末上の Google AI 技術を使い、お気に入りの写真をリアクションに変換(フォト文字)など便利な機能の提供」「Android プラットフォームで Google メッセージ(RCS)が有効な約10億人(月間アクティブユーザー)とのシームレスなグローバルコミュニケーション」を導入理由として挙げている。
しかし、このタイミングでの導入は当然のことながら「iPhoneのRCS対応」をにらんでのことだろう。アップルは今年度中にiMessageのRCS対応を表明している。おそらく、6月のWWDCでのiOSアップデート発表で詳細を語り、9月にスタートさせるのだろう。
KDDIではいち早くGoogleメッセージの標準対応を謳うことで「iPhoneとAndroidでメッセージ交換がしやすい」ことをアピールするのではないか。
ただ、+メッセージはもともとKDDIが音頭をとってソフトバンクとNTTドコモを道連れにして開発したと言われている。今回のKDDIによる戦略変更は、他社にとっては寝耳に水だったのではないだろうか。
実際、5年前の記事を読み返してみると、+メッセージは取材申請をすれば、3社からそれぞれ担当者がやってくるだけでなく、企業や自治体が公式アカウントを作ろうと思えば、3社別々に申請が必要になるなど、煩雑な体制であったことは間違いない。
結局、開始から6年経ってもLINEと肩を並べるほどユーザーに使われなかったわけで、そろそろ見切りをつけるには良いタイミングなのかも知れない。
ソフトバンクはLINEを取り込もうとしている段階であり、Googleメッセージに注力するわけにはいかない。
LINEに対する不安感が増している中、iMessageによるRCS対応によってGoogleメッセージが今後、勢力を拡大するのか、かなり興味深い展開となっていきそうだ。
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