ここまでスマートフォンと音質面をチェックしてきた。筆者としては、音楽プレーヤーとして見れば高く評価できる点があるものの、スマートフォンとしてはまだまだ「荒削り感」が否めない状態だった。
音楽プレーヤーとしては、比較的軽量なボディーでかつ、サクサクと動作する点が魅力だ。OPPO Reno11 Aとほぼ同等の性能があるため、ストリーミングアプリの動作などで困ることはないだろう。
音質周りで気になった点は、3.5mm端子のノイズだ。電源周りの設計が甘いのか、画面を操作した際やスリープから復帰した際にイヤフォンから「ジッ」というノイズが聞こえてくるのだ。
このノイズはある程度の音量で音楽を再生していればほぼ気付かないレベルだが、無音の状態で画面をタップするとイヤフォンからかすかに聞こえてくる。接続したイヤフォンによっては気になる方もいることだろう。
一方で4.4mm端子ではこのようなことは感じなかったため、マイク端子などが少なからず影響しているのではないかと考える。このあたりは電源部のノイズ対策までしっかりテコ入れしたGRANBEATの方が一枚上手な印象だ。
スマートフォンとしては、ソフトウェア周りの荒削り感が目立つ。特に音声ミキサー周りがクセモノで、音楽再生中にSNSなどの通知が割り込むと通知音が爆音でイヤフォンと本体スピーカーから再生される。また、音楽再生中にカメラで撮影すると爆音のシャッター音がイヤフォンから再生されたりする。
アピールポイントの4.4mm端子でのSRC回避(SRC=サンプルレートコンバーター※ダウンコーバートを回避すること)についても、現時点では一部ストリーミング配信アプリで利用できないようだ。このあたりはアップデートでの改善に期待したい。
また、端末のビルドクオリティーも決して高いとはいえず、筆者の個体では製品出荷時から一部塗装がはげているといった点も確認できた。端末の耐久性も、一般的な樹脂筐体のスマートフォンに比べると劣る。同社初のスマホということもあって、OSアップデートも含めたサポート面も不透明だ。
それでも、MIAD01は「音質特化」という他社のスマートフォンにはない圧倒的な個性を備えており、それを比較的リーズナブルな価格で抑えてきたことは評価したい。
MIAD01は399ドル(約6万2000円)で販売されており、音楽プレーヤーとしては普及価格帯に位置する。スマートフォンとしてもミッドレンジの性能であり、同等クラスの製品にスティック型DACを内蔵したモノと考えれば納得の価格だ。
正直、水月雨の規模を考えると、このスマートフォンは商業的な成功を狙うような製品ではないものと考える。特殊な設計ゆえに生産数も大手メーカーに比べたらかなり少なく、単価は高価になりやすい。画面やカメラのイメージセンサーは数世代前のパーツを使って工面してもなお、よくぞこの価格に抑えたと驚きを隠せない。
MIAD01は「音質特化」のコンセプトで専用のDACや4.4mm端子も備えるなど、製品企画者のエゴやこだわりを感じる製品だ。一般に「高音質スマホ」はスイートスポットが狭く、日本でもなかなか市場に根付かなかった。これはGRANBEATが1世代で終わったことや、ウオークマンを有するソニーも市場投入していないことから、カメラ特化スマホ以上に難しいものと考える。
そのような意味では、MIAD01は市場動向うんぬんよりも「自分たちが作りたいものを形にした」という強い思いが伝わってくる。この熱意と製品開発力、パッケージイラストを含め、MIAD01は肯定的な意味で「コミケで売っていそうな同人スマホ」が適切な表現と考える。
本機種は日本向けにも発売がアナウンスされている。価格や発売時期、日本向けに何らかのカスタマイズがされるかは不明だが、GRANBEATに近いスマホの再来ということもあって、オーディオマニアを中心に関心の高さは折り紙つきだ。
水月雨が出してきた「音質特化スマホ」というカテゴリーはかなりニッチだが、日本ではGRANBEATの存在などから、一定のニーズがあるといえる市場だ。ここにうまくアプローチできるかどうか、MIAD01をフックにした今後の製品ラインアップも含め、注目していきたい。
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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