とはいえ、現状のスコアは、KDDIとソフトバンクの2社をトップグループと解釈することもできる。この2社と、ドコモ、楽天モバイルの開きが大きいからだ。では、なぜこの2社がネットワークの品質を維持できているのか。前田氏は、「なんちゃって5Gとやゆされたが、4Gからの転用周波数がやはり重要。デュアルで5Gエリアを形成できたことが、受賞につながった」と語る。
2位に転落したとはいえ、これまでソフトバンクへの評価が一貫して高いのもこれが理由だ。KDDIとソフトバンクは、ドコモと異なり、まず4Gからの周波数転用や周波数共用で、広い5Gエリアの構築を急いだ。Sub6とは異なり、帯域幅は4Gと変わっていないため、これだけで通信速度の向上は見込みづらいものの、これがあれば「エリアカバーにこだわらず、Sub6の基地局を高密度に打つことができる」(同)。面的に5Gを広げたあと、トラフィックが多い都市部を重点的にSub6でカバーできる。
面的に5Gのエリアができていると、「無理にSub6を引っ張らず、フリンジ(エリアの端)ではすぐに周波数転用した5Gにハンドダウンして快適な通信をキープする」(同)ことが可能になる。4Gから転用した周波数帯は複数あるため、「ロードバランスを見て負荷の少ない5Gにハンドダウンできる」(同)。同じ周波数帯でも世代が違うことで、Sub6と組み合わせて使う際にチューニングがしやすいというわけだ。
逆にドコモの場合、当初は総務省に課せられた基盤展開率を順守するため、まずSub6のエリアを拡大した。現在では4Gからの周波数転用も活用しているものの、その数はKDDIやソフトバンクに比べると少ない。逆説的だが「Sub6を重視しすぎると、どうしてもそちらを引っ張りすぎてしまい、フリンジ(エリアの端)で品質が低下してしまう」(同)。「なんちゃって5G」と周波数転用をやゆしていたドコモだが、そこに足を引っ張られているというのが前田氏の見立てだ。
楽天モバイルは、そもそも4GがBand 3(1.7GHz帯)だけで、本格サービス開始後すぐに5Gを導入しているため、転用する周波数を持っていない。他3社と比べ、ユーザー数が少ないためSub6につながれば快適に通信できるため、ダウンロードやアップロードなどスループットを重視する項目ではトップを取っているが、バランスがやや悪い。やはり、転用周波数とSub6を「デュアルで整備できると、5G全体としてよい品質で広範なエリアができる」(同)。
一方で、KDDIには品質でトップを取り続けてきたソフトバンクとも、差別化する武器もある。Sub6基地局の「数」と、保有している帯域幅の「広さ」だ。もともと、Sub6の基地局展開に消極的だったソフトバンクと比べ、KDDIのSub6の基地局は5倍以上数が多い。さらに周波数も200MHz幅と大きい。ドコモと楽天モバイルに対しては転用周波数のエリアで、ソフトバンクに対してはSub6の数と帯域幅の広さで差別化ができた結果として、品質調査でトップに躍り出ることができたというわけだ。
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