日本電信電話(NTT)は、9月30日に「NTT IR DAY」を開催した。その名の通り、証券会社などの機関投資家に向けた説明会だが、ここにドコモの代表取締役社長、前田義晃氏が登壇。コンシューマー向けの現状と今後に向けた成長戦略を語った。
ネットワークを強化し、その基盤を生かしてデータ使用量の大きなロイヤルユーザーを獲得し、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)の拡大と解約率の低減を目指すというのがドコモの考えだ。他社との獲得合戦に勝ち抜くため、量販店などでの端末販売も強化しているという。
これらに加え、スマートライフ事業を進化させることで、収益の拡大を目指す方針だ。通信、非通信それぞれの施策を組み合わせることで、2027年度までにはARPUを増加に転じて、3500億円以上の増収を目指す。ここでは、その中身を解説していく。
前田氏が真っ先に語ったのが、ネットワークの強化だ。ドコモは、コロナ禍明けのトラフィック増加に十分対応できず、一部エリアで極端に通信速度が低下する“パケ詰まり”に苦戦してきた。首都圏をはじめとした大都市圏では対策を行い、改善傾向は出ているものの、Opensignalをはじめとした各種調査では他社の後塵を拝している。
こうした中、社長に就任した前田氏はネットワークの強化を優先課題に挙げ、自身も調査に加わるなどして対策を進めている。「お客様体感品質の向上を想起に実現し、通信品質ナンバーワンを実感していただけるキャリアになる」というのが、その目標だ。具体的には、上記のOpensignalの調査項目の1つである「一貫した品質」で、2024年度末までに1位を獲得することを目指す。
その「プロセスとして、ネットワーク装置の高性能化とコスト効率化を同時に進める」というのが前田氏の考えだ。具体的には、まず5GのSub6エリアを拡大する。既に取り組みは実施しており、「重要な鉄道動線の1つである山手線沿線のスループットは、20%向上している」。また、首都圏のSub6エリアは2024年3月との比較で8月には110%に拡大。これを、年度末である2025年3月までに130%まで広げ、エリアの“穴”を埋めていく。
前田氏は、「高速大容量化を進めるためにも、Sub6エリアは積極的に充実させる方針」だと語る。その過程で、ネットワーク装置も刷新していく。ドコモは富士通やNECなどの国内メーカーを中心とした基地局を採用してきたが、この方針を転換。「広く国内外のベンダーから、高性能で効率のいい最新装置を調達する。Sub6の新規拡大や5G初期の装置の置き換えのために、海外ベンダーも調達している」と明かす。
さらに、2025年度からは、仮想化技術を採用した「vRAN」の本格導入を開始する。現時点での採用数はわずかだが、ここから徐々に既存の基地局を置き換える形でvRANを導入。最終的には、大半をvRANに移行させる方針だ。
パケ詰まりが発生するエリアを特定し、改善につなげる動きも全社化しているとしながら、前田氏は次のように語る。
「これまで、ネットワークはネットワーク部隊がどうきれいにしていくのかを考え、スマートライフで加盟店開拓をする部隊は、加盟店開拓を一生懸命やってきた。結果、何が起こっているかというと、せっかく獲得した加盟店で通信品質が悪くて(d払いなどのサービスが)使えない。ここを誰がやるかがエアポケットになっていたが、こういうのは最悪の話。(今は)どこがどう悪いのかを、ネットワークと一緒になって片っ端から調査している」
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