ネットワークの強化で足腰を鍛えつつ、次のステップでは「顧客基盤の強化と収益拡大を実現する」。2027年度の目標は、3500億円を超える増収だ。「コンシューマー通信については、人口減少や2025年度のFOMA終了があるので一定程度下がるが、なるべく早く下げ止まらせていく」方針だ。顧客基盤の拡大とは、ユーザー獲得を意味する。今は「シェアの拡大に注力すべきとき」というのが、前田氏の考えだ。
特にドコモとして重視しているのが、データ通信の使用量が多い若年層やその上のミドル層。この層は、「通信に加えてドコモのサービスを積極的に使っていただけるロイヤルユーザー」だからだ。2023年に導入したeximo、irumoと、オンライン専用プランのahamoを加えた「3層料金戦略」が功を奏し、第1四半期では純増数が3万に改善。そのうち、「8割は若年層、ミドル層」だったという。
「販売人員の強化店舗では、4月からの比較で8月は50%ポートインが増加し、明らかな効果が出ている」とした。具体的には、「量販店で他社と同等以上に張り合うための人員増や施策店舗の拡大」といったことを行っていたという。前田氏は「全体として、人口は減少していてシェアも落ち続けているが、取られっぱなしだと先が見えない。そこはしっかり戦っていきたい」と語る。そのため、2024年度はユーザー獲得を優先しているという。
若年層獲得の強化施策として、量販店を中心に「スキルフルな販売員を重点的に配備した」。これが、上記のポートイン増加に直結しているようだ。前田氏は「競争力のある価格で端末をご提供できるような施策をベースにしたうえで、このような施策を行うことで50%超のパフォーマンスが出てきている」と語る。
一方で、ahamoを契約しているユーザーの解約率が他の料金プランのユーザーより高いのは、ドコモにとっての課題だった。前田氏も、「流出抑止には課題がある」と話す。その理由として挙げられていたのが、データ容量の不足だ。「ahamoユーザーの声を調査したところ、経年的な利用量の増加に対してデータ容量が不足していた」ことが見えてきた。
10月にahamoのデータ容量を20GBから30GBに拡大したのは、その対策だ。ユーザーのデータ利用量は年々増加しており、ドコモも例外ではない。しかもその伸び率が、加速している。前田氏によると、2023年度は前年比で20%超の増加率だったのに対し、2024年度は8月時点で既に2割弱までデータ使用量が増加しているという。これがahamoの解約につながっていたというのが、前田氏の見立てだ。
ただし、この仮説が外れていた場合は、第2、第3の手を打つ可能性もあるという。前田氏は「流出がどの程度改善していくのか次第で、仮にこれがもう少し進んでしまうのであれば、料金プランの見直しをタイムリーにしていく可能性はある」と語る。30GBへのデータ容量増加で、流出に歯止めがかかるのかは今後、注目しておきたいポイントといえる。
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