―― 日本市場においてCMF Phone 1を低価格で提供した理由を教えてください。
黒住氏 そもそもそのわれわれのラインアップには、CMF Phone 1の1つ上に当たるPhone (2a)があります。そのロワーバージョン、つまり安いコンフィギュレーションのもので、価格が4万9800円です。今回、IIJが販売する低いバージョン(CMF Phone 1)は4万円を切る3万9800円です。IIJのモデルはイヤフォンとスマートフォンのセット販売ですから、価格帯としてはプライスバンド(※複数の商品をセットで販売し、個別で販売するよりも安くすること)と見ています。
そこからスタートでメモリが増えたら、4万4800円、5万4800円になって……というように、ステップアップしていきます。ただ、全ての面でトップ・オブ・ザ・トップのパフォーマンスを出そうとしているわけではなく、その価格帯において適切なパフォーマンスを出せるものを目指しています。
昨今は定価が10〜15万円以上のスマートフォンが当たり前になってきています。しかも乗り換えをしなければ、なかなか割引を受けづらいという現状もあります。われわれは、ユーザーさんが出せるであろう価格帯が、4万円前後とか5万円前後とか6万円前後とかになってくる、とイメージしています。その中で適切なパフォーマンスになるようにしていきたいとも考えています。
製品を作るときに為替で価格が一気に変わることもありますが、われわれとしても日本は非常に重要な市場なので、手ごろ感みたいなものを考えたときにはこういうものだよ、というものを含めてインプットをかけていき、そこで今当たっているのが3万9800円のラインと、4万9800円のラインではないでしょうか。
―― CMF Phone 1は海外よりも若干高いのでしょうか。
黒住氏 もちろん為替の影響は受けています。Phone (2a)ですとわれわれの製品としては初めておサイフケータイ(モバイルFeliCa)に対応しましたから、その部分はアディショナル(追加コスト)になっています。
あとは日本市場のネットワークとのインターオペラビリティテスト(キャリアネットワークと端末の相互接続性に関する試験)が負担になっていて、本来ならばもう少し価格を上げてもいいのかなと思いつつも、そこはわれわれがぐっと我慢しつつも、適正な価格で提供しています。
―― CMF Phone 1で日本市場向けにカスタマイズした点はあるのでしょうか。
黒住氏 CMF Phone 1における日本市場向けのカスタマイズといえるのは、ネットワークの適合性をできる限り担保しているところです。ただ、NTTドコモやKDDIのメインバンドは対応できていないので、その辺はIIJとも話しています。
―― なぜCMF Phone 1にはおサイフケータイがないのでしょうか。
IIJとの話が進む中、2台目として買う人が多いということが見えてきました。MVNOだからそうなりがちなのだと思います。2台(両方)でおサイフケータイを使う人はどれだけいるのだろうか? と考えると、CMF Phone 1がおサイフケータイに対応していないことはあまり問題ないのかなと思います。
ボディーの内部の一部が見える透明パネルを採用したPhone (2a)や、ボディーの一部を着せ替えできるCMF Phone 1と、デザイン性で個性を出しながらも、手の届きやすい価格帯で日本市場を攻めるNothing。今回のインタビューではNothingが日本市場で独自の切り口で攻めるにあたり、製品にどのようなニーズがあり、製品のコンセプトやニーズを踏まえて製品設計や価格設定を行っていることがうかがえた。
かつてソニーモバイル(現ソニー)のスマートフォン「Xperia」の開発やオーディオ製品の企画に従事し、ソフトバンクや楽天モバイルにも関わるなど、モバイル業界で長年の経験を持つ黒住氏だからこそ、過去の知見をNothingに生かしやい面もありそうだ。スマートフォンとオーディオという別カテゴリーの製品を同時発表し、IIJではセット売りする点は黒住氏ならではの手腕にも見える。こうした戦略は今後、Nothingのキャリア進出へつながるのか、製品だけでなく販路拡大も興味深い。
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